インピーダンス制御

提供: 計測自動制御学会

図 1 インピーダンス制御系

 組立て、研磨、ドアの開閉、クランクの回転など、ロボットに接触作業を行わせる場合、ロボットの位置だけでなく、対象物との相互作用を考慮した制御が必要になる。例えば、ロボットハンドに研磨工具を取り付け、ガラス面の付着物を削り取ることを考えてみよう。産業用ロボットの多くは、位置が目標入力として与えられている。したがって、ガラス面の位置を精密に測定し、ハンドの位置を高精度で制御しない限り、ハンドがガラス面から離れてしまうか、押しすぎてガラスを割ってしまう。このような作業では、ロボットをある程度柔らかくして、ガラス面にかかる力を制御することが肝要である。

 このように、ロボットが外部環境から反力を受けるとき、目的とする作業に適した“かたさ”、“やわらかさ”が生じるように制御する方式を、インピーダンス制御 1)とよぶ。インピーダンスとは、この“かたさ”、“やわらかさ”を力学的に表現したもので、機械工学でよく知られている

  • (1)スチフネス(変位→力):F=KX
  • (2)粘性(速度→力)   :F=B \dot X
  • (3)慣性(加速度→力)  :F=M \ddot X

 を総称した呼び方である。

 いま、環境側からみたロボットの特性が、作業空間において次式を満たすように制御したいとしよう(図1参照)。

F _{int} M _{d} \ddot X +B _{d} d \dot X + K _{d} dX     (1)

 ここで、dX=X _{d} -Xは目標平衡点X _{d}と現在位置Xの偏差ベクトル、F _{int}は手先と環境との相互作用力ベクトル、M _{d}B _{d}K _{d}は、慣性行列、粘性行列、スチフネス行列で、それぞれ作業空間に対応する次元をもち、作業目的に応じて設定される。例えば、M _{d}B _{d}K _{d}をすべて対角行列にとり、作業目的に応じて特定の方向のインピーダンスを、大きくあるいは小さく設定することが考えられる。

 ロボットが環境と接触している場合、ロボットアームの運動方程式は、

M \left(q\right) \ddot q + h \left(q,\ \dot q\right) +g \left(q\right) = \tau + \tau _{int}     (2)

 と表される。ここで、M(q):慣性行列、h(q,\dot q):コリオリ力・遠心力、g(q):重力、q:関節変数、\tau:関節駆動トルクである。また、\tau _{int}は、相互作用力F _{int}に等価な関節力で、次のような関係がある。

\tau _{int} =J ^{T} \left(q\right) F _{int}

 ここで、J(q)はヤコビ行列で、作業空間変数Xと関節変数qの関係が

X = f \left(q\right)

 であるとき、J(q)= \partial f/ \partial qで与えられる。J(q)が正則であると仮定すれば、式(2)は次のように作業空間で表現される。

Mx \left(q\right) \ddot X + h _{x} \left(q,\ \dot q\right) +g _{x} \left(q\right) =F+F _{int}     (3)

 ただし、

M _{x} \left(q\right) =J ^{-T} \left(q\right) M \left(q\right) J ^{-1} \left(q\right)

h _{x} \left(q,\ \dot q\right) =J ^{-T} \left(q\right) \left(h \left(q,\ \dot q\right) \right) - M \left(q\right) J ^{-1} \left(q\right) \dot J \left(q\right) \dot q

g _{x} \left(q\right) = J ^{-T} \left(q\right) g \left(q\right)

F=J ^{-T} \left(q\right) \tau

 である。ここで、

F=h _{x} \left(q,\ \dot q\right) +g _{x} \left(q\right) -M _{x} \left(q\right) M ^{-1} _{d} \left(B _{d} d \dot X + K _{d} dX + F _{int} \right) -F _{int}

 という非線形フィードバック 1)をロボットに加えると、相互作用力F _{int}と変位Xの間の動特性が式(1)の望ましいインピーダンスに等しくなる。

 なお、望ましいインピーダンスは、式(1)以外にも考えられる。羅ら 2)は、接触の断続性、環境への適応性、さらに環境ダイナミックスの不確かさに対するロバスト性をも考慮した設計法を提案している。問題は、作業目的・環境に応じて、どのようにロボットのインピーダンスを設定するかであり、これは今後の課題として残されている。

関連項目

参考文献

1)1.0 1.1 N.Hogan:Impedance control- an approach to manipulation, Pt.I-III, ASME, J. of Dynamic System, Measurement and Control,107,1 (1985).
2) 羅志偉他: コンプライアントマニピュレーションのためのロボットの制御設計, 計測自動制御学会論文集,26-4,427(1990).
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