SQUID

提供: 計測自動制御学会

図1
図2
図3

 SQUIDは他に類を見ない高感度磁束センサであり、SQUIDリングの内部を貫く磁束の大きさを容易に高感度測定が可能な電圧に変換する磁束電圧変換器である。構造は、超伝導リングの一部に1ないし2個のジョゼフソン素子を含むものである。SQUIDは超伝導体におけるフラクソイドの量子化

\oint \mathbf{A} \cdot d \mathit{l} + \oint \frac{m}{2e \rho} \cdot \mathit{j} \cdot d \mathit{l} = n \Phi _{0}          (1)

と、ジョゼフソン効果を利用した超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device)の略である。ここで、\mathbf{A}はベクトルポテンシャル、\Phi _{0} \left( = h / 2e \right)は磁束量子、mは電子の質量、eは電子の電荷、\rhoは超伝導電子対の数、\mathit{j}は電流、nは整数である。積分は、超伝導リングに沿って行う(積分路に沿って電流が流れていない場合、上式左辺の第2項は消え、磁束の量子化の式となる)。

 SQUIDには、駆動方式の違いにより、dcSQUIDとrfSQUIDの2種類があり、図1上段に示すように、前者は2個の、後者は1個のジョゼフソン素子を含む。ジョゼフソン素子としては、電流-電圧特性にヒステリシスを示さないものが主に使用される(「ジョゼフソン効果」の項を参照)。

 (1) dcSQUID

 dcSQUIDに直流電流を印加すると、SQUIDリングを貫く磁束の大きさに依存した図1(a)中段のような電流-電圧特性が得られる。いま、素子に印加する電流を一定にして(図中の点線)、外部磁束を変化させると、図1(b)下段のような電圧外部磁束特性が得られ、その周期は磁束量子\Phi _{0}である。したがって、印加電流を臨界電流より少し大きめに設定し、SQUID両端の電圧の変化を記録すれば、外部磁束の変化を測定することになる。この方式は微小信号検出方式とよばれ、NMR信号検出など高速の微小磁束変化を測定するために使用される。しかし、この方式では磁束電圧関係が周期関数のため、大きな磁束変化の場合、外部磁束電圧関係は線形にならない。この点を改善するため、図2に示すような、ロックイン検出と帰還回路を組み合わせたFLL(flux locked loop)方式が採用されている。SQUIDには、外部信号磁束と共にロックイン検出のための変調磁束が帰還コイルを通じて印加される。SQUIDの出力は、前置増幅器、ロックイン検出器、積分増幅器を通じて、再びSQUID内部の信号磁束を打ち消すように、帰還コイルから磁束としてSQUIDへ帰還される。すなわち、帰還磁束が信号磁束を打ち消し、SQUID内部の磁束が一定になるように帰還回路が作用する。帰還磁束の大きさと帰還回路に流れる電流の大きさは線形関係にあるので、図2に示すように、帰還回路の一部に抵抗を挿入しその両端の電圧を測定すれば、その電圧はSQUIDを貫く外部磁束の大きさに比例することとなる。SQUIDは、超伝導リング内の面積が小さいために、高感度の磁束センサではあるが磁界に対して必ずしも感度は高くない。このため、実際の場合には、信号磁束を増幅するために、図に示すような信号を有効にSQUIDへ導入するための入力コイルを使用する。図2の場合、磁界の検出を行うためのコイルが入力コイルに接続されている。実際の素子は図3(a)に示すように、図2中で点線で囲った部分が集積化された薄膜素子となっている。中心に50×50μm2の超伝導リングの内側が見える。超伝導リングは幅広の薄膜であり、その上に入力コイルと帰還コイルが集積化されている。ジョゼフソン素子は下部にある。トンネル接合素子が利用されているが、電流電圧特性のヒステリシスをなくすために抵抗で短絡されている。このSQUIDの場合、SQUIDインダクタンスが80pH、ジョゼフソン臨界電流26μA、素子抵抗2Ω、入カコイルインダクタンス50nH、SQUID-入力コイル相互インダクタンス1.7nHである。

 dcSQUIDの磁束分解能は次式で与えられる。

\Phi _{n} \sim 3 \sqrt{ \frac{k _{B} T}{R} } L          (2)

ここで、Rは素子抵抗、k _{B}はボルツマン定数、Tは温度、LはSQUIDのインダクタンスである。図3(a)の素子の場合、4.2Kにおける磁束分解能は10 ^{-6} \Phi _{0} / Hz^{1/2}となる。実際には、他の効果のため、磁束分解能は、数Hz以上では4 \times 10 ^{-6} \Phi _{0} / Hz^{1/2}の白色雑音であり、それ以下では1/f雑音が見られる。この素子の場合、8×8mm2の磁界検出コイルと組み合わされており、磁界分解能7fT/Hz1/2が得られている。

 ここで述べたdcSQUIDはアナログ型とよばれるものであり、ジョゼフソン素子としてはヒステリシスをもたない特性が利用された。ヒステリシスをもつ特性の素子を利用したdcSQUIDはディジタル型とよばれ、主に計算機素子として利用されているが、最近、アナログ応用すなわちセンサとしての研究も進められている。

 (2) rfSQUID

 rfSQUIDは、1個のジョゼフソン素子を含む超伝導リングと高周波タンク回路とを組み合わせ、超伝導リングに磁束の出入りが生じるたびにエネルギー損失が生じることを利用したものである[図1(b)上段]。図1(b)中段にタンク回路の交流電流-電圧振幅特性を示した。この特性は、超伝導リング内を貫く磁束の大きさに依存する。いま、タンク回路へ注入する交流電流の振幅を一定にして、高周波電圧振幅と外部磁束の関係を図1(b)下段に示す。実際の測定の場合には、dcSQUIDと同様、ロックイン検出と帰還回路を利用する。図3(b)に、点接触型素子を利用したトロイダル型と呼ばれるrfSQUID素子の例を示す。

 磁束計としての磁束分解能は次式で与えられる。

\Phi _{n} \sim \frac{2LI _{0}}{\sqrt{f}} \left( \frac{k _{B} T}{\Phi _{0} I _{0}} \right) ^{2/3}          (3)

 典型的なrfSQUIDの変数(f = 20MHz、L = 1nH、I _{0} = 1μA、T = 4.2K)を使用すると、磁束分解能として4 \times 10 ^{-5} \Phi _{0} / Hz^{1/2}となる。実際の場合、回路の雑音まで含めておよそ10 ^{-4} \Phi _{0} / Hz^{1/2}が限界である。

 SQUIDは、電流比較器やゼロ電流検出器などの電気精密計測、脳磁波や心磁波などの生体磁気計測、地上磁気探査などの地球物理計測、モノポール検出など基礎物理理論の検証、金属の非破壊検査、物性実験などに広く利用されている。

関連項目

  • 磁束量子

参考文献

1)バローネ他著, 菅野卓雄監訳: ジョセフソン効果の物理と応用, 近代科学社 (1988).
個人用ツール