主 催

計測自動制御学会中部支部 制御理論研究委員会

セミナー内容

ヒトの脳を一つのシステムと見なし,制御・システム論により感覚入力から筋を制御する神経制御機構の解明にアプローチする研究が1980年代から今日まで盛んに進められている.近年では脳活動の計測技術の発達により,計算モデルの挙動と脳の実際の活動を比較・検証する研究が行われている.さらに,計算モデルを脳活動信号のデコードに利用するなど,ブレイン・マシン・インタフェース技術に応用することも期待される.本セミナーでは,計算論的神経科学の分野の第一線で活躍されている若手研究者に講演していただく予定です.関心をお持ちの方の多数のご参加をお待ちしております.

期 日

2014年9月12日(金)

会 場

名古屋大学東山キャンパス ES総合館024講義室
〔愛知県名古屋市千種区不老町〕
名古屋市営地下鉄名城線名古屋大学駅下車徒歩3分

参 加 費

無 料

申込方法

事前登録等は必要ありません.直接ご来場ください.

問合せ先

名古屋大学 大学院 工学研究科 機械理工学専攻
香川高弘
(052)789-2740
E-mail : kagawa@nuem.nagoya-u.ac.jp

プログラム

13:30~14:45 「第一次運動野は空間ベクトルを用いて到達運動ダイナミクスを計算する」
講師:田中 宏和 君(北陸先端科学技術大学院大学)

身体との体部位対応を持つ第一次運動野(M1)は,錐体路線維を通して脊髄中の運動ニューロンに投射するが,どのようにして身体運動を制御するかについては完全には理解されていない.ダイナミクスの立場ではM1は身体座標系における筋張力や関節トルクを制御すると主張するが,キネマティクスの立場では外部座標系における運動軌道を表現しているとする.本講演では,外部座標系を用いると到達運動を記述する運動方程式が単純になることを示し,開n-リンク系の一般式を導出する (ニュートン-オイラー方程式).運動方程式中のベクトル外積各項を神経細胞の発火頻度と同一視すれば,M1神経活動の多様な性質を説明できる.また,ベクトル外積仮説により相反する表現仮説が統一的に理解できることを議論する.

15:00~16:15 「腕の到達運動に関する運動学習モデル」
講師:神原 裕行 君(東京工業大学)

本講演では,我々が近年提案してきた,腕の到達運動に関する計算論的な制御モデルを紹介する.我々のモデルの特徴としては,他の多くのモデルと違い,運動の開始点と終了点を結ぶ目標軌道を必要としないことが挙げられる.また,脳の学習アルゴリズムとして注目されている強化学習やフィードバック誤差学習を組み込むことにより,腕のダイナミクスがわからない状態から,手先を目標位置に正確に到達させる運動指令が試行錯誤的に獲得できるといった特徴も有する.本講演では,腕の到達運動を我々のモデルを用いて計算機上でシミュレーションした結果,人間の運動軌道や筋活動に見られる特徴を良く再現できることや,目標軌道の存在を仮定しなくては説明できないとされてきたサルの運動データが説明できることを紹介する.