2018年度計測自動制御学会学会賞贈呈のため,小林尚登氏を委員長とする学会賞選考委員会において慎重に選考の結果,下記論文賞8件,技術賞3件,著述賞2件,新製品開発賞1件,教育貢献賞1件,国際標準化賞2件が推薦され,理事会の決定を経て9月13日,奈良春日野国際フォーラム 本館 能楽ホール(SICE 2018会場)において贈呈式を行い,受賞者に賞状および副賞が贈呈された.

[論文賞] 8件
(論文賞・蓮沼賞)
○分光スペクトルと多変量解析を用いた放射率変動影響を受けない新放射測温技術の提案
(SICE論文集Vol.53, No.7で発表)
JFEスチール(株)・大重貴彦君,津田和呂君
(論文賞・武田賞)
○周波数領域における事前情報を考慮した部分空間同定法
(SICE 論文集Vol.52, No.1で発表)
慶應義塾大学・阿部侑真君,井上正樹君,足立修一君
(論文賞)
○フィードバックシステムにおける消散性能の強化
(SICE論文集Vol.52, No.7で発表)
慶應義塾大学/JST, CREST・浦田賢吾君,井上正樹君
(論文賞)
○遅延結合非線形システムネットワークの同期パターン
(SICE論文集 Vol.52, No.7で発表)
首都大学東京・大岡芳成君,小口俊樹君
(論文賞・友田賞)
○TSPのためのGA-EAXにおける探索ステージ切換条件とマルチスタート戦略の提案
(SICE論文集 Vol.52, No.4で発表)
東京工業大学・山越幸太君,徳島大学・永田裕一君
東京工業大学・小野 功君
(論文賞)
○能動膝アシスト装具を適用した自動伸展不全リハビリテーションシステム
(SICE 論文集 Vol.53, No.4で発表)
山梨大学・青木今日子君,牧野浩二君
市立甲府病院・中村祐敬君
山梨大学・石田和義君,寺田英嗣君
(論文賞)
○機械学習の枠組みにもとづく能動型探索アルゴリズムのサーボパラメータ調整問題への適用性の検討
(SICE論文集Vol.53, No.3で発表)
三菱電機(株)/奈良先端科学技術大学院大学・野田哲男君
三菱電機(株)・長野 陽君,永谷達也君,堂前幸康君
長野鉄明君,田中健一君
奈良先端科学技術大学院大学・小笠原 司君
(論文賞)
○An FE Simulation Study on Population Response of RA-I Mechanoreceptor to Different Widths of Square Indenter
(SICE JCMSI Vol.10, No.5で発表)
Nagoya Inst. of Tech.・Trung Quang PHAM君
The Univ. of Tokyo・Takayuki HOSHI君
Nagoya Inst. of Tech.・Yoshihiro TANAKA 君,Akihito SANO君

[技術賞] 3件
(技術賞)
○クランク軸の回転計測に基づく燃焼状態の推定技術の開発
(SICE論文集 Vol.51 No.9で発表)
(株)日立製作所・青野俊宏君
(株)日立オートモティブシステムズ・猿渡匡行君
(株)日立製作所・米谷直樹君
(株)日立オートモティブシステムズ・大畠英一郎君,長澤義秋君
(技術賞)
○サポートベクトル回帰を用いたインテリジェントセンサの特性式同定技術
(SICE Annual Conference 2016で発表)
アズビル(株)・西口純也君,綛田長生君,千村暢孝君
(技術賞)
○アセット管理のIIOT基盤に対応した流量設定ツールの開発
(SICE Annual Conference 2017,ほかで発表)
横河電機(株)・伊藤章雄君
Yokogawa Engineering Asia, Singapore・Jason Chan Sin WAI君
横河電機(株)・中川 勝君,吉岡 貴君
Yokogawa Engineering Asia, Singapore・櫻井敏彦君

[著述賞] 2件
(著述賞)
○カルマンフィルタとシステムの同定―動的逆問題へのアプローチ―(2016年・森北出版)
大住 晃君,亀山建太郎君,松田吉隆君 著
(著述賞)
○渦流量計の創造 流れを数値化する渦の秩序(2015年・日本工業出版)
山﨑弘郎君,栗田良夫君,阿賀敏夫君,大木眞一君 著

[新製品開発賞] 1件
(新製品開発賞)
○グラフィカル調節計 形C7G
アズビル株式会社 殿

[教育貢献賞] 1件
(教育貢献賞)
○建物を加振する大規模体験教育から始まる振動と制御の工学に関する教育の試み
名古屋大学・原 進君

[国際標準化賞] 2件
(国際標準化賞 功績賞) 富士電機(株)・池田卓史君
対象国際標準規格名:
・IEC 61804シリーズ:Function blocks (FB) for process control and electronic device description language (EDDL)
・IEC 61769シリーズ:Field device integration (FDI)
・IEC 61158シリーズ:Industrial communication networks – Fieldbus specifications
(国際標準化賞 奨励賞) (株)日立製作所・山田 勉君
対象国際標準規格名:
・IEC 62443シリーズ: Industrial communication networks – Network and system security
・IEC/TR 63069: Industrial – process measurement, control and automation – framework to bridge the requirements for safety and security(策定中)

受賞者略歴および受賞論文概要

(論文賞・蓮沼賞)

おおしげ たかひこ
大 重 貴 彦 君(正会員)
1991年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了.同年4月 日本鋼管(現JFEスチール(株))入社.2005年4月JFE技研(株),2009年4月JFEスチール(株),2018年4月JFEテクノリサーチ(株),現在に至る.主に光学センサの開発に従事.2003年 全国発明表彰発明賞,2014年度計測自動制御学会計測部門論文賞受賞.日本鉄鋼協会の会員.

つだ かずろ
津 田 和 呂 君(正会員)
1990年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了.同年4月 日本鋼管(現JFEスチール(株))入社.2003年4月JFE技研(株),2009年4月JFEスチール(株),現在に至る.主にプロセス制御やデータサイエンス分野のシステム開発に従事.この間,1998~2000年Swiss Federal Institute of Technology(ETH)客員研究員.日本鉄鋼協会の会員.

受賞論文「分光スペクトルと多変量解析を用いた放射率変動影響を受けない新放射測温技術の提案」
放射温度計測において,放射率の変動による測定誤差は長年の課題であった.これに対し,本論文は,温度変化に伴う黒体放射スペクトルの波形の変化の挙動と,放射率変動によるスペクトル波形の変化の挙動とが異なる点に注目した.
具体的には,あらかじめ放射率変動の統計的な挙動を多変量解析(たとえば主成分分析)により求め,その主成分と直交するという制約の下で,温度変化に伴う黒体放射スペクトルの変化の主成分を求めておく.温度測定をする際には,測定スペクトル中に含まれるこの主成分の大きさ(スコア)から,あらかじめ作成しておいた検量線を用いて温度を計測する新たな手法を提案した.
放射率変動の主成分に直交する黒体放射スペクトルの変化の主成分を用いて温度計測する手法は,放射率変動の影響を最も受けにくく,温度に対して最も感度が高いと考えられ,このことを数学的な定式化により示した.また,放射率を変化させたサンプルを用いた実験による実証を行い,提案した手法の妥当性を示した.

(論文賞・武田賞)

あべ ゆうま
阿 部 侑 真 君(正会員)
2017年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科前期博士課程修了.同年4月より国立研究開発法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室研究技術員,同年9月より慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程在学.現在に至る.衛星通信とシステム同定・制御理論の融合領域の研究に従事.電子情報通信学会の会員.

いのうえ まさき
井 上 正 樹 君(正会員)
2012年3月大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了.同年4月より科学技術振興機FIRST合原最先端数理モデルプロジェクト研究員,東京工業大学大学院情報理工学研究科特別研究員.2014年4月より慶應義塾大学理工学部助教,2018年4月より同専任講師となり現在に至る.2010年より2年間日本学術振興会特別研究員(DC2).博士(工学).動的システムの安定論に関する研究に従事.計測自動制御学会論文賞(2013,2015年度),システム制御情報学会論文賞(2014年度),電気学会産業応用部門論文賞(2017年度)を受賞.IEEE,システム制御情報学会,電気学会の会員.

あだち しゅういち
足 立 修 一 君(正会員,フェロー)
1986年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程電気工学専攻修了.工学博士. 同年(株) 東芝入社,総合研究所に勤務.1990年宇都宮大学工学部電気電子工学科助教授,2002年同教授.その間,1993~96年航空宇宙技術研究所客員研究官.2003~04年ケンブリッジ大学客員研究員.2006年慶應義塾大学理工学部物理情報工学科教授となり,現在に至る.システム同定,フィルタリング,制御理論とそれらの産業応用に関する研究に従事.計測自動制御学会創立30周年記念著述賞1等(1993年),計測自動制御学会著述賞(2007,14年),計測自動制御学会教育貢献賞(2008年),日本機械学会賞(論文)(1998年),電気学会産業応用部門論文賞(2016年),システム制御情報学会産業技術賞(2016年)などを受賞.IEEE,電気学会,日本機械学会,システム制御情報学会,日本鉄鋼協会,日本音響学会などの会員.

受賞論文「周波数領域における事前情報を考慮した部分空間同定法」
本論文では,周波数領域で特徴付けられたシステムの事前情報を,同定モデルに組み込む部分空間同定法を提案する.まず,システムの全周波数帯域での特性を,KYP補題を用いてシステム行列に関して線形な行列不等式に変換する.この行列不等式を部分空間同定法の制約として用いることで,指定した周波数特性を含むモデルを構築することができる.また,提案法を応用することで,事前情報がある周波数帯域のみの特性である場合にも適用できる部分空間同定法を提案する.最後に,これらの提案法の有効性を数値例で検証する.

(論文賞)

うらた けんご
浦 田 賢 吾 君(学生会員)
2017年3月慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了.同年4月東京工業大学工学院システム制御系後期博士課程に進学し,現在に至る.2017年4月より日本学術振興会特別研究員(DC1).動的システムの安定論に関する研究及び大規模システムの制御理論に関する研究に興味.

いのうえ まさき
井 上 正 樹 君(正会員)
前述参照.

受賞論文「フィードバックシステムにおける消散性能の強化」
本論文では,定性的な消散性を表現するだけでなく消散性能を定量的に評価することが可能な動的システムのクラスを提案する.二つのサブシステムが提案するクラスに属するとき,それらのサブシステムをフィードバック接続することでシステム全体の消散性能が厳密に向上することを示す.さらに,消散的なシステムを再帰的にフィードバック接続することによって大規模システムを構築する.このとき,システム全体の消散性能がサブシステムの個数の増加に伴って徐々に向上していくことを示す.そして,サブシステムの個数が無限に増大した究極的な状態では,システム全体の出力は外乱入力の影響を全く受けないことを示す.


(論文賞)

おおおか かなる
大 岡 芳 成 君(正会員)
2014年首都大学東京都市教養学部都市教養学科理工学系機械工学コース卒業.2016年同大学院理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了.同年 新日鉄住金ソリューションズ株式会社入社,現在に至る.大学院在学中は,カオスネットワークシステムの同期に関する研究に従事.受賞論文は,首都大学東京大学院在学中の研究成果である.

おぐち としき
小 口 俊 樹 君(正会員)
1995年東京都立大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程修了.同年防衛大学校情報工学科助手,97年東京都立大学大学院助手,同講師を経て2005年首都大学東京大学院理工学研究科准教授,2017年同教授.2018年改組によりシステムデザイン研究科教授,現在に至る.2003年,2008~2009年Eindhoven University of Technology客員研究員.特に非線形性とむだ時間を併せもつシステムの制御理論,複雑系の同期などの研究に従事.システム制御情報学会,日本機械学会,IEEEなどの会員.博士(工学).

受賞論文「遅延結合非線形システムネットワークの同期パターン」
近年,多数のシステムの相互結合により構成されるネットワークシステムは,さまざまな分野で関心を集めている.ネットワークシステムにおける同期問題は,自律ロボットの協調制御など工学的応用との関係も深く,同期条件の導出や発生する部分同期パターンの解析は重要な課題である.本論文では,双方向遅延結合により形成された非線形システムのネットワークの同期問題を検討した.まず,ネットワークのグラフラプラシアンの固有値とその対応する固有ベクトルに着目し,発生する部分同期パターンが固有ベクトルの要素から推定可能であることを示した.さらに,複数のグラフの直積,テンソル積,強積それぞれのグラフ積で構成されるネットワークシステムの同期問題を検討し,スケーリング法とグラフ積の特徴を結びつけることで,グラフ積で構成される大規模なネットワークの同期解析が,グラフ積の元となるネットワークのグラフラプラシアンを用いて推定可能であることを示した.


(論文賞・友田賞)

やまこし こうた
山 越 幸 太 君(正会員)
2013年3月東京理科大学理工学部情報科学科卒業,2015月3月東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了.同年4月富士通(株)入社,現在に至る.組み合わせ最適化,進化計算などの研究に従事.

ながた ゆういち
永 田 裕 一 君(正会員)
1997年東京工業大学総合理工学研究科知能科学専攻修士課程修了,2000年同大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了.2000年同大学院総合理工学研究科リサーチアソシエイト,2001年北陸先端科学技術大学院大学情報科学専攻助手,2009年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助教,2012年東京工業大学情報生命博士教育院特任准教授,2014年徳島大学工学部知能情報工学科准教授,現在に至る.進化計算,機械学習などの研究に従事.進化計算学会,電気学会などの会員.

おの いさお
小 野 功 君(正会員)
1994年3月東京工業大学工学部制御工学科卒業,1997年9月同大学院総合理工学研究科知能科学専攻博士課程修了.博士(工学).1997年10月同研究科リサーチアソシエイト,1998年4月徳島大学工学部助手,同年12月同講師,
2001年3月同助教授,2005年4月東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻助教授,現在(准教授)に至る.進化計算,強化学習などの研究に従事.

受賞論文「TSPのためのGA-EAXにおける探索ステージ切換条件とマルチスタート戦略の提案」
本論文では,巡回セールスマン問題 (Traveling Salesman Problem, TSP) のための枝組立交叉 (Edge Assembly Crossover, EAX) を用いた遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithm, GA) であるGA-EAXの問題点を克服した新たなGAを提案する.GA-EAXは,Stage1とState2の2つの探索ステージから構成される.GA-EAXは,最も強力な近似解法の1つであり,10 万都市規模の大規模なインスタンスにおいて既知最良解の更新に成功している.しかし,数千都市規模のインスタンスでも最適解発見率が低いインスタンスが存在するという問題をもつ.本論文では,本問題を克服するため,ツアーの改善失敗率に着目した探索ステージの切替条件,および,Stage2におけるマルチスタート戦略を導入することを提案する.数値実験により,提案手法が既存手法よりも最大5倍の最適解発見率となり,世代数の観点からも最大24.7%削減できることを確認した.


(論文賞)

あおき きょうこ
青 木 今日子 君(正会員)
2016年山梨大学医学工学総合教育部機械システム工学専攻修了.歩行リハビリテーション用アシストロボットの開発に従事.SICE SI2015 優秀講演賞受賞 (2015).

まきの こうじ
牧 野 浩 二 君(正会員)
2008 年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻博士後期課程修了.博士(工学).2008 年高度情報科学技術研究機構研究員,2009年東京工科大学コンピュータサイエンス学部助教を経て,2013 年山梨大学大学院医学工学総合研究部助教.現在に至る.人間とロボットの運動制御などの研究に従事.ロボット学会,機械学会などの会員.

なかむら まさひろ
中 村 祐 敬 君(正会員)
2005 年山梨医科大学大学院医学研究科博士課程形態系博士課程修了.博士(医学).1997 年山梨医科大学医学部附属病院勤務.2000 年同整形外科助教を経て,2010 年市立甲府病院整形外科勤務.現在に至る.人工関節についてのコンピューターシミュレーション,3D プリンターを用いたPSIに関する研究に従事.日本人工関節学会,日本股関節学会,日本臨床バイオメカニクス学会会員.

いしだ かずよし
石 田 和 義 君(正会員)
2006 年山梨大学大学院医学工学総合教育部人間環境医工学専攻修了.博士(医工学).2000 年山梨大学助手,2007 年同助教を経て,2012 年から同准教授.現在に至る.主に自動化,摩擦・摩耗等に関する研究に従事.日本機械学会,精密工学会,日本トライボロジー学会等の会員.

てらだ ひでつぐ
寺 田 英 嗣 君(正会員)
1993 年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了.博士(工学).1988 年NTN(株)生産技術研究所研究員,1994 年山梨大学助手,1999 年同助教授,2010 年同教授.現在に至る.主にロボット機構要素の研究に従事.日本機械学会,精密工学会,ロボット学会などの会員.

受賞論文「能動膝アシスト装具を適用した自動伸展不全リハビリテーションシステム」
   膝の自動伸展不全とは補助があれば痛みなくまっすぐ伸展(完全伸展)できるが,自力では重力に負けて完全伸展できない状態をいう.これはリハビリテーションにより改善することも知られている.この原因ははっきりしないが,一つの説として変形性膝関節症患者の多くに見られるように屈曲拘縮した状態での長時間の歩行により,屈曲状態が完全伸展として誤って記憶されていると考えられている.筆者らは変形性膝関節症の解決策の一つである全人工膝置換術後の歩容を改善するための装着型リハビリテーションロボットを開発している.本研究はそのロボットを用いて理学療法士がリハビリテーションの一環として行う補助動作を模擬した動作を行わせるものである.これにより,理学療法士の負担を減らすとともに,装着型ロボットを用いたリハビリテーションの前後に本研究で対象とする膝の自動伸展不全に対応したリハビリテーションを行うことでより効果的なリハビリテーションが期待される.そこで,実際の患者を対象とした臨床試験を行い,その効果を定量的に計測した.その結果,患者への筋負担を減らしたリハビリテーションが実現できるとともに理学療法士の負担軽減にもつながることを示した.

(論文賞)

のだ あきお
野 田 哲 男 君(正会員)
1987年大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了,同年三菱電機(株)入社.2016年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.2017年より大阪工業大学.ロボット,加工機,自動走行など,機械システム知能化の研究開発に従事.JRM Best Paper Award 2012,2014 R&D 100 Award,FA財団平成26年度および29年度論文賞,CIE45 Second Award 2015(論文賞),2016年度システム制御情報学会賞論文賞,第30回(2016年)日本ロボット学会学会誌論文賞,2017年度システム制御情報学会賞産業技術賞など.2018年より本会システムインテグレーション部門副部門長.日本ロボット学会,システム制御情報学会,日本機械学会の会員.博士(工学).

ながの ひかる
長 野 陽 君(正会員)
2003年九州大学大学院工学府エネルギー量子工学専攻修士課程修了,同年(株)アプロ(現(株)テクノプロ)入社.電気会社研究開発部門派遣勤務を経て,2018年より個人事業主として開業,現在に至る.産業用ロボット,FA加工機など,機械システムの知能化技術の研究開発に従事.2014 R&D 100 Award,2016年度システム制御情報学会賞論文賞,2017年度システム制御情報学会賞産業技術賞,FA財団平成29年度論文賞など.

ながたに たつや
永 谷 達 也 君(正会員)
2006年東京工業大学大学院総合理工学研究科物理情報システム創造専攻博士前期課程修了.同年三菱電機(株)入社.先端技術総合研究所主席研究員,現在に至る.産業用ロボット,FA加工機,FAコントローラなどの研究開発に従事.R&D 100 Award 2014,2014年度喜安記念業績賞,CIE45 Second Award 2015(論文賞),2016年度システム制御情報学会賞論文賞,第30回(2016年)日本ロボット学会学会誌論文賞,2017年度システム制御情報学会賞産業技術賞,FA財団平成29年度論文賞など.システム制御情報学会の会員.

どうまえ ゆきやす
堂 前 幸 康 君(正会員)
2006年北海道大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.2008年三菱電機(株)入社.先端技術総合研究所主席研究員,2018年より国立研究開発法人産業技術総合研究所.現在に至る.ビジョンシステム,産業用ロボットなどの研究開発に従事.SSII2006優秀論文賞,JRM Best Paper Award 2012,2014 R&D 100 Award,2014年度喜安記念業績賞,第30回(2016年)日本ロボット学会学会誌論文賞,2017年度システム制御情報学会賞産業技術賞,FA財団平成29年度論文賞など.日本ロボット学会,電子情報通信学会,精密工学会,情報処理学会,IEEEの会員.博士(情報科学).

ながの てつあき
長 野 鉄 明 君(正会員)
1983年東京工業大学制御工学科卒業.同年三菱電機(株)入社,名古屋製作所に配属.インバータ・サーボの制御設計開発,サーボによる機械振動制御,モータ駆動系のリアルタイムシミュレータ技術の開発などに従事.2016年より同社知的財産センタおよび2018年より(株)エムテックにて特許調査業務に従事.現在に至る.FA財団平成29年度論文賞.電気学会の会員.

たなか けんいち
田 中 健 一 君(正会員)
1981年京都大学大学院航空工学専攻博士前期課程修了,同年三菱電機(株)入社,中央研究所研究員.2010年先端技術総合研究所所長,2014年開発本部役員技監.2018年より開発本部技術統轄,センサ情報処理,ロボット知能化などの研究開発に従事.2014 R&D 100 Award,第47回市村産業賞貢献賞,第30回(2016年)日本ロボット学会学会誌論文賞,2017年度システム制御情報学会賞産業技術賞,FA財団平成29年度論文賞など.システム制御情報学会,日本神経回路学会などの会員.

おがさわら つかさ
小笠原 司 君(正会員)
1983年東京大学大学院工学研究科情報工学専門課程博士課程修了.同年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所入所.93~94年ドイツ,カールスルーエ大学客員研究員.98年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授.2017年より同大学副学長、2018年より先端科学技術研究科研究科長・教授.知能ロボットの研究に従事.1989年度元岡記念会元岡賞,1992年計測自動制御学会論文賞,第12回(1998年)日本ロボット学会学会誌論文賞,FA財団平成29年度論文賞など.工学博士.日本ロボット学会,情報処理学会などの会員.

受賞論文「機械学習の枠組みにもとづく能動型探索アルゴリズムのサーボパラメータ調整問題への適用性の検討」
産業現場のプロセスにはその動作原理を基礎方程式によるモデル化が困難な対象が存在する.その場合いわゆる熟練作業者が対象の応答を見ながらパラメータを試行錯誤で選択しているのが現状である.これは未知の目的関数の最適化と呼ばれる古典的な難題の一つである.
著者らはこの“試行錯誤”をアルゴリズム化した.逐次的に試行錯誤を繰り返しながら対象の応答特性モデルの正確化とパラメータの最適化が同時進行する新しい機械学習アルゴリズムといえる.「次の試行」の選択を最適化するため,ある候補で試行したことにより得られるであろう情報量と情報が得られないリスク量を同時に考慮する方法は他に類例がない.
本論文ではこれをサーボ調整作業の自動化に適用した効果を報告している.サーボ市場はグローバル化が急進中で,このような熟練作業者が手薄になる局面を補う成果はインパクトがある.さらに現場でしばしば要求される多目的最適化やロバスト化を考慮する応用方法も報告しており有用性がある.

(論文賞)

Dr. Trung Quang PHAM(Member)
He received the BE, ME and PhD degrees in mechanical engineering from the Nagoya Institute of Technology, Japan, in 2012, 2014 and 2018, respectively. Currently, he is a specially appointed researcher at National Institute for Physiological Sciences. His research interests include haptics, biomechanics, neuroscience, and tissue engineering.

Dr. Takayuki HOSHI(Member)
He received the BE, ME, and PhD degrees in information science and technology from the University of Tokyo, Japan, in 2003, 2005, and 2008, respectively. Currently, he is a CTO (Chief-Research Officer) at Pixie Dust Technologies, Inc., Japan. He was selected as one of the best scientists who made notable contribution by MEXT NISTEP in 2014. His research interests include haptics and ultrasonics. He is a member of RSJ, VRSJ, JSME, and IPSJ.

Dr. Yoshihiro TANAKA(Member)
He skipped from undergraduate to graduate school, and received the MS and the PhD (Eng.) degrees from Tohoku University, Japan, in 2003 and 2006, respectively. In 2006, he was a research associate at the Nagoya Institute of Technology, Japan. Currently, he is working as an associate professor in the Graduate School of Engineering at the same university. He was a visiting researcher at Utrecht University, The Netherlands, in 2011. He was a researcher of PRESTO, Japan Science and Technology Agency in 2014-2018. His research topics are measurement of tactile feelings, tactile devices, and tactile product design. He is a member of the IEEE.

Prof. Akihito SANO(Member)
He received the MS degree in precision engineering from Gifu University in 1987 and the PhD degree from Nagoya University, Japan. He is a professor at the Nagoya Institute of Technology. His research interests include dynamics-based robotics, haptics, and passive walking. He received the JSME Award for young engineers in 1992, the SICE Transaction Best Paper Award in 2005, and the Good Design Award 2004 (TouchLens: touch enhancing device). He is a fellow of the Japan Society of Mechanical Engineers and the Robotics Society of Japan. He was on the board of the directors of the Robotics Society of Japan in 2010 and 2011 and the Society of Instrument and Control Engineers in 2015 and 2016.

受賞論文「An FE Simulation Study on Population Response of RA-I Mechanoreceptor to Different Widths of Square Indenter」
Rapid adapting type-I (RA-I) receptor is one type of mechanoreceptors in the human skin. They are believed to be responsible for the detection of stimuli that produce minute skin motion (flutter, slip, microgeometric surface features). The neurophysiological experiments raise a question about why the RA-I afferent (innervated into RA-I receptor) fails to represents the stimulus with the width less than 3 mm and why their response is anisotropy. It is unclear whether the skin's mechanics or the specific afferent branching of mechanoreceptors themselves are accounted for these phenomena. The present work seeks an interpretation of the neurophysiological phenomena, using a biomechanical finite-element (FE) model with a transduction sub-layer and synthetic sub-model for afferent current. The predicted afferent current matched well with the neural recordings in previous reports. This result suggests a major role of afferent branching in regard to the neurophysiological phenomena.


(技術賞)

あおの としひろ
青 野 俊 宏 君(正会員)
1992年東京大学大学院工学系研究科修士課程終了.同年(株)日立製作所入社,機械研究所,日立研究所を経て研究開発グループに勤務,現在に至る.自動車エンジンのモデリング・制御・信号処理に従事.

さるわたり まさゆき
猿 渡 匡 行
1970年生.1994年長崎大学工学部機械システム工学科卒業.日立オートモティブシステムズ(株)にて現在に至る.ガソリンエンジンの燃焼に関わるサブシステムの先行開発に従事(可変動弁,燃料噴射,センサー,点火ガス流動生成,可視化).自動車技術会会員.

よねや  なおき
米 谷 直 樹
2013年東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻修士課程修了.現在,日立製作所研究開発グループ勤務.燃焼検知,制御技術の開発に従事.

おおはた えいいちろう
大 畠 英一郎
日立オートモティブシステムズ勤務.エンジン制御システムの開発に従事.

ながさわ よしあき
長 澤 義 秋
1990年 日立オートモーティブシステムズエンジニアリング(株)入社.電子制御燃料噴射システムの量産開発,アイドルストップシステムの先行開発等を経て,現在,燃焼検知システムの開発に携わる.

受賞論文「クランク軸の回転計測に基づく燃焼状態の推定技術の開発」
自動車の低燃費化の手段として,ハイブリッド化が最近注目を集める一方で,内燃機関自体の高効率化への要求は依然強い.しかし,高効率化の代償として燃焼が不安定になる.効率と安定性を両立するため,燃焼状態のフィードバック制御が重要となる.燃焼状態の計測方法としては燃焼圧センサがあるが,コスト・耐久性の観点で量産車への採用は拡大していない.
そこで,従来,点火・噴射タイミング制御に用いられてきたクランク角センサを用い,燃焼圧センサなしで燃焼状態を推定する技術を開発した.
クランク角センサ信号から燃焼状態を推定する際には,信号のノイズ,クランク角センサの角度分解能の粗さ,作動油粘性や走行負荷による外乱等が問題となるが,内燃機関の回転の周期性に着目し,機関の回転速度を三角関数の和で近似し運動方程式を解き,クランク軸系の幾何学的特性に基づき補正することで,量産車のクランク角センサからでも燃焼圧センサを用いた場合と同等に燃焼状態が推定できることを示した.
これによって,低コストで耐久性の高い燃焼安定制御の可能性を開いた.

(技術賞)

にしぐち じゅんや
西 口 純 也 君(正会員)
2001年慶応義塾大学理工学研究科修士課程修了.同年,(株)山武(現 アズビル(株))入社.現在,アズビル(株)ITソリューション本部にて,製造工程や業務用建物におけるセンサデータ活用に関わる研究に従事.専門領域は機械学習,最適化技術など.空気調和・衛生工学会,IEEEの会員.

かせだ ちょうせい
綛 田 長 生 君(正会員)
1994年東京工業大学理工学研究科修士課程修了.同年 山武ハネウエル(現 アズビル(株))入社.現在,アズビル(株)ITソリューション本部にて,オフィスビルなど業務用建物におけるエネルギー制御・空調制御,工場・プラント自動化に関わる研究に従事.専門領域は,データマイニング,データモデリング,機械学習,最適化技術など.システム制御情報学会,日本建築学会,空気調和・衛生工学会,ASHRAEの会員.

ちむら のぶたか
千 村 暢 孝 君(正会員)
1995年早稲田大学理工学研究科修士課程修了.同年,山武ハネウエル(現 アズビル(株))入社,現在,アズビル(株)アドバンスオートメーションカンパニーにて,差圧・圧力発信器,流量計,ガスクロマトグラフ,カロリーメータなどのプロセスオートメーション向け計測器の研究・開発に従事.

受賞論文「サポートベクトル回帰を用いたインテリジェントセンサの特性式同定技術」
製造工程で取得されたセンサデータから個々のセンサ特性を同定できる特性式同定技術を開発した.本技術はサポートベクトル回帰を応用し,インテリジェントセンサの特性式同定での実用的課題に対応したものであり,①基準精度と周囲環境特性の製品スペックに応じた許容誤差制約の設計,②複数センサ信号間の感度・非線形性の違いを反映した異方性多項式カーネルの導入,を特徴としている.
本技術は,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサとMPU(Micro Processor Unit)を搭載したインテリジェントセンサの構成に対して幅広く適用可能で,大規模なセンサチップ開発の投資をせずに既存センサの性能を最大限生かすことが可能となるため,差圧・圧力発信器,カロリーメータ等の新製品での導入を実施し効果を確認している.

(技術賞)

いとう あきお
伊 藤 章 雄 君(正会員)
1983年東京大学工学部計数工学科卒業,同年横河北辰電機(株)(現横河電機(株))に入社.産業用ロボット研究開発,LSIテスタ開発,フィールド機器開発・商品企画に従事し,現在に至る.FDT Group本部Asia Pacific Marketing Chair, SICE産業応用部門計測制御ネットワーク部会主査,SICE代議員.SICE産業応用部門長,1983年SICE学術奨励賞,2014年SICE産業応用部門技術賞受賞.

Jason Chan Sin WAI
He graduated in Nanyang Technological University of Singpore in 2008 and received a Bachelor Degree in Computer Engineering before joining Yokogawa Engineering Asia. He also attained a Master's Degree in Knowledge Engineering from National University of Singapore in 2013. Currently he is an active member of the FDT Architecture & Specifications Working Group.  

なかがわ まさる
中 川 勝
1990年甲府工業高等学校卒業,同年HOYA(株)入社.2002年横河電機(株)入社. フィールド機器開発・商品企画に従事し,現在に至る.ISO/TC 28/SC 5 [LNG船上で消費されたガスの計量に関する国際規格]国内委員.

よしおか たかし
吉 岡 貴
1995年九州大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年横河電機(株)入社.渦流量計を始めとするフィールド機器開発に従事.

さくらい としひこ
櫻 井 敏 彦
1994年 豊橋技術科学大学知識情報工学課程卒業.96年同大学知識情報工学専攻修士課程修了.同年横河電機(株)に入社.オシロスコープ,工業用計測機器向けのソフトウェア開発に従事し,現在に至る.FDT Architecture & Specifications  Working Group FF Project Group メンバとして活動.

受賞論文「アセット管理のIIOT基盤に対応した流量設定ツールの開発」
筆者らが所属する横河電機は業界トップクラスの高精度の流量計測を低コストかつ高い相互接続性で提供している.この背景には「流量設定ツール」に産業オートメーションのアセット管理のための国際標準FDT技術を活用することで,流量計のアセット管理機能(設定・状態監視)をホストシステムに独立な形で上位系に統合したことにある.本業績では前記利点のさらなる向上として,流量設定ツールに業界に先駆けてFDT2というアセット管理の新しいIIOT基盤を活用している.これにより流量計の管理機能の適応範囲にスケールアウトをもたらし,多大な効果が生じると期待できる.この実現にはユーザインタフェース(UI)とビジネスロジック(BL)を分離する構造が有用であり,BLの情報変換によるデジタル化効果は利用シーンに対応したアセット情報の最適変換を産み出す.本業績では,流量設定ツールのIIOT基盤の対応のために,FDT2で規定される基本機器管理に加えて,流量計測の高度な管理機能をUIとBLに分離する構造を採用している.本構造により,UIの現場モバイル対応や,BLを活用した管理情報の上位系への広範囲な統合等,流量計測の高度な管理機能のIIOT対応が可能になっている.

(著述賞)

おおすみ あきら
大 住 晃 君(正会員,フェロー)
1969年京都工芸繊維大学大学院修士課程修了.同年同大学生産機械工学科助手.同助教授を経て,89年同機械システム工学科教授.2007年同大学定年退職.同大学名誉教授.同年宮崎大学工学部情報システム工学科教授.09年同大学退職し,現在に至る.この間83年文部省在外研究員 (長期) として,米国ハーバード大学応用科学科客員研究員.確率システムの信号検出・同定・推定および制御の研究に従事.本会論文賞 (1982,2007) および著述賞 (2005), システム制御情報学会論文賞および砂原賞 (2001,2009) 各受賞.システム制御情報学会名誉会員.

かめやま けんたろう
亀 山 建太郎 君(正会員)
1998年3月京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科機械システム工学専攻修了.同年日立建機(株)入社.2006年京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科情報・生産科学専攻博士後期課程修了.博士(工学). 同年9月福井工業高等専門学校機械工学科講師,09年4月より准教授となり現在に至る.同定・推定理論と農業のロボット化に関する研究・教育に従事.01年システム制御情報学会論文賞および砂原賞受賞.システム制御情報学会,日本機械学会などの会員.

まつだ よしたか
松 田 吉 隆 君(正会員)
2007年京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科情報・生産科学専攻博士後期課程修了.博士(工学). 同年独立行政法人造幣局入局.10年佐賀大学大学院工学系研究科助教となり現在に至る.プラント・メカニカル制御系設計に応用するための制御理論に関する研究に従事.システム制御情報学会,IEEEなどの会員.

受賞図書「カルマンフィルタとシステムの同定―動的逆問題へのアプローチ―(2016年・森北出版)」
現在では欠くことのできない基幹技術であるカルマンフィルタの理論を豊富な例題をも含めて初学者にもわかりやすく解説・記述されている.本書では連続時間および離散時間カルマンフィルタ,さらに連続・離散時間カルマンフィルタについても導出されている.システムに未知パラメータを含む場合には,カルマンフィルタは動的逆問題解決のための手段であるとの認識のもとで,著者らがこれまで開発してきた未知パラメータをも効果的に同定する「擬似観測量」を導入する方法を述べ, さらにシステム状態量が拘束条件をうける場合のカルマンフィルタについても述べられている.実務に携わる技術者・研究者に有用であると同時に,「カルマンフィルタを勉強したい」「カルマンフィルタを実際問題に適用して問題を解決したい」という読者を対象としているので,初学者でも連続時間システム,離散時間システムのいずれに対しても導出が十分にフォローできるように記述されており,さらに,演習問題(略解付き)によってより深く理解できるよう配慮されている.各章の冒頭に著名人のフレーズやエピソードを入れ,また脚注を充実し,さらに R. E. Kalman とカルマンフィルタ誕生の背景について詳しく述べて読者の興味を惹くよう心がけられている.参考文献もテーマ別に挙げ,利用しやすいように工夫されている.

(著述賞)

やまさき ひろお
山 﨑 弘 郎 君(名誉会員,フェロー)
1956年東京大学工学部応用物理学科卒業,(株)横河電機入社.工業計測用センサ信号変換器の研究開発.1971~74年東大工学部非常勤講師兼任.渦流量計の研究で1972年工学博士.1975年東京大学教授就任.センサ工学,センサ知能化の研究と教育.1985~87年東京大学附属図書館長併任.大学図書館の電子化を主導.1989年SICE会長.1993年東京大学定年退官,東京大学名誉教授.1993~95年横河電機(株)入社,常務取締役.1995~2000年横河総合研究所代表取締役会長.電気学会,IEEEなどの会員.

くりた よしお
栗 田 良 夫
1963年東京工業大学理工学部物理学科卒業,同年(株)横河電機製作所(現・横河電機(株))入社,工計研究部,研究開発部で渦流量計の研究開発に従事,1985年電子デバイス技術部長,1993年関連会社の半導体製造会社の代表取締役,1999年定年退職.2001年科学技術大学・交流センター,2005年首都大学東京・産学公連携センター勤務.主に第2章,コラム1,2,5担当.

あが としお
阿 賀 敏 夫
1972年東京大学大学院航空工学修士課程修了,同年(株)横河電機製作所入社研究開発部,工計技術部で渦流量計,フィールド機器,半導体デバイスの研究開発,製品化に従事,1995年からフィールド機器のマーケティングを担当,2000年フィールド機器事業部長,2008年定年退職.2013年まで海外の横河電機支社でフィールド機器の教育などに従事.主に,第3章,第4章,コラム6,8を担当.

おおき しんいち
大 木 眞 一 君(正会員)
1976年早稲田大学大学院 理工学研究科 制御工学 修士課程修了.同年,(株)横河電機製作所入社,工計技術部で渦流量計の開発,製品化に従事.関連流量校正設備の設計・設置等にも参画.その後,流量計マーケティング部署に移動し,渦流量計およびコリオリ式流量計の製品企画業務に従事して,その後サポート業務に勤めた.現在,日本工業大学 特別研究員,日本工業出版(株)「計測技術」企画委員,(一社)次世代センサ協議会 技術委員,および(株)イーエス技研 技術顧問等の業務で活動中.主に,第3章,第4章を担当.

受賞図書「渦流量計の創造 流れを数値化する渦の秩序(2015年・日本工業出版)」
渦は台風や竜巻など,破壊をもたらす事象が連想されるが,流れの中で発生する渦には美しい秩序が存在する.その秩序の規則性を測定原理として流速を測定する機器の半世紀にわたる開発経過を記した.創造の過程では失敗を数多く経験したが,たとえようもない大きな喜びもあった.開発に従事した著者達が各々の経験を書いた記録である.1章は渦流量計の着想から原理的な問題を解決して実用化の道筋が見えるまでの過程を述べた.2章では実用化の第1歩として,未開拓の分野であった大流量大口径気体流量計測に挑戦して,新しい計測原理の有効性を実証する段階を記した.3章はプロセス工業計測で普及しているオリフィス差圧流量計を置き替えるため厳しいプロセスの環境条件に耐える汎用渦流量計の開発過程を述べた.開発は成功し,米国でいち早く受け入れられ日本より先に発売された.4章ではディジタル情報処理技術を活用し国際的に展開した現状と将来の展望を示した.最後に本文に書けなかった話を座談会形式で加えた.


(新製品開発賞)

受賞製品「グラフィカル調節計 形C7G」
アズビル株式会社 殿
FA領域におけるローカルコンピューティングに対応するために調節計 形C7を開発した.FA領域ではIoT化がすすんでおり,収集したデータを解析し装置の故障予知/検知を実現するための検討がなされている.形C7は,フィードバック制御における制御特性の変化を代表値化(正規化応答性)する.その数値を監視することにより,制御系(センサー特性の変化,ヒータ劣化など)の状態変化を捉える事が可能となる.より詳細な解析は上位システムにゆだねるが,上位システムでの解析に一次処理を施した正規化応答性の数値を用いることで,上位システムと調節計の間の通信負荷を低減することが可能である.また,形C7ではタッチパネル液晶を採用し,制御状態や制御特性のグラフ表示,複数ループの一括表示,日本語によるメニュー表示,警報の詳細情報の表示,ヘルプ画面の表示などに対応した.画面の表現力と操作性を向上させることで,お客様にさまざまな場面で“簡単に”使っていただける製品とした.(会誌「計測と制御」Vol.56  No.3(2017年3月号)掲載)

(教育貢献賞)

はら すすむ
原 進 君(正会員)
1996年9月慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了.95年4月より2000年3月まで日本学術振興会特別研究員.98年5月より99年2月までカリフォルニア大学バークレー校機械工学科訪問研究員.2000年4月より08年9月まで豊田工業大学,08年10月より名古屋大学に勤務.現在,同大学院工学研究科航空宇宙工学専攻教授ならびに同大学院工学研究科附属フライト総合工学教育研究センター人材育成・社会連携部門長,兼任教授.主に機械力学・制御工学に関する教育や機械構造物の運動と振動の制御の研究に従事.2000年度計測自動制御学会学術奨励賞・研究奨励賞,2004年度日本機械学会奨励賞(研究),計測自動制御学会中部支部第38期中部支部賞・研究賞などを受賞.博士(工学).日本機械学会,日本ロボット学会,電気学会,精密工学会,日本航空宇宙学会,IEEE,AIAA,UNISECの会員.

受賞教育活動「建物を加振する大規模体験教育から始まる振動と制御の工学に関する教育の試み」
振動工学や制御工学の分野の教育では,これまで座学と学生実験の履修が基本であり,基礎から積み上げて進めるものの,高いモチベーションをもって分野の全体像や学術的意義を早期に把握することは容易ではない.また,両分野の関連もこれまで十分に意識された例は少なかった.受賞者は,まず振動工学に関し,鉄筋コンクリート5階建て免震建築の名古屋大学減災館を対象として,免震層にジャッキを挿入することで免震機構上の5,600トンの建物を移動させてからリリースして自由振動させる状態を受講生に免震層内で見せるとともに,自由振動にともなう震度3程度に相当する揺れを館内で体験させてから,自由振動や振動絶縁(免震)の理論をその館内で講義する授業を始めた.その後,別の制御工学に関する授業において,減災館を模擬した模型を導入して振動実験を復習してもらうとともに,実際の減災館では不可能な最適レギュレータ理論によるアクティブ免震の効果も説明している.これらの内容は振動工学から制御工学まで横断的かつ有機的に展開される新しい教育プログラムであり,その教育効果は計測自動制御学会論文集をはじめ内外の論文集や会議で報告されている.

(国際標準化賞 功績賞)

いけだ たかし
池 田 卓 史 君(正会員)
1984年東京理科大学理工学部電気工学科卒業,同年,富士電機製造(株)入社,現在,富士電機(株)パワエレシステム事業本部プロセスオートメーション事業部企画部主席,IEC/TC65国内委員会諮問委員会委員,IEC/SC65E/WG7国内委員会幹事,日本フィールドコムグループ運営委員.

対象国際標準規格名:
・IEC 61804シリーズ:Function blocks (FB) for process control and electronic device description language (EDDL)
・IEC 61769シリーズ:Field device integration (FDI)
・IEC 61158シリーズ:Industrial communication networks – Fieldbus specifications
これらの国際標準は,工業用プロセス計測制御におけるフィールド機器の管理およびシステムとの統合に関する標準で,IEC 61558で規定されているさまざまなフィールドネットワークに接続されるフィールド機器のプロファイルを統一的に管理する規格として注目されている.IEC/SC65E/WG7国内委員会の幹事として,デバイス記述言語(EDDL)およびフィールドデバイスインテグレーション(FDI)の標準化活動に取り組むとともに,NPO法人 日本フィールドコムグループの運営委員会委員として,国際標準としてのフィールドバス技術の普及・啓蒙活動に携わってきた.フィールド機器のプロファイルを統一的に管理する技術は,IIoT化を実現する技術として今後ますます重要となる.

(国際標準化賞 奨励賞)

やまだ つとむ
山 田 勉 君(正会員)
1994年京都大学大学院工学研究科修了.同年(株)日立製作所に入社.以来制御システムのアーキテクチャ,セキュリティの研究開発に従事.現在,同社制御プラットフォーム統括本部セキュリティセンタ グループリーダ主任技師.技術士(総合技術監理部門,情報工学部門).IEEE,ISA,電子情報通信学会の各会員.IEC/TC 65/WG 10,IEC/CAB/WG 17,IECEE/CMC/WG 31のエキスパート.IEC/TC 65/WG 20国内委員会委員.

対象国際標準規格名:
・IEC 62443シリーズ: Industrial communication networks – Network and system security
・IEC/TR 63069: Industrial-process measurement, control and automation – Framework for functional safety and security (策定中)
制御システムの安全,安心を図るために,制御セキュリティ規格(IEC 62443),機能安全規格(IEC 61508),およびセキュリティと安全を両立するフレームワーク規格(IEC/TR 63069)の策定が進められている.さらに,これらの規格は汎用制御システムのみならず,他の産業分野まで広く応用が可能と期待されている.これらの規格の策定や改訂をするIECの委員会に加え,IEC 62443規格を基にした認証規格の策定をする委員会にも国際エキスパートとして参画している.規格策定の推進と,各種委員会やセミナーにおいて規格の解説をすることで普及啓発に貢献している.