論文集抄録
〈Vol.53 No.9(2017年9月)〉

タイトル一覧
[論 文]

[ショート・ペーパー]


[論 文]

■ ネットワーク化単調システムの安定性解析

京都大学・井上 大輔、東 俊一、杉江 俊治

単調システムとは,初期状態と入力に関してある大小関係が成り立つとき,状態と出力の軌道についても大小関係が成り立つシステムのことである.単調システムを相互に接続したときの振る舞いを調べることは興味深く,これまで安定性や振動性などに関する様々な研究がなされてきた.
一方,2つ以上の単調システムが複雑なネットワーク構造のもと接続されたシステムの安定性は,筆者の知る限りこれまで解析されていない.そこで本研究では,単調システムが花型グラフと呼ばれるネットワーク構造で接続されたときの安定性を解析する.本研究で得られた結果は,サブシステムのダイナミクスに関する詳細な情報を必要としない.それゆえ,サブシステムのダイナミクスの同定が難しい,遺伝子制御システムの安定性解析に役立つと期待できる.


 

■ 一般化最小分散評価に基づく閉ループ同定と周期外乱の推定

日立製作所・植松 凌太,首都大学東京・増田 士朗

本論文では,定値制御のもとで運転されているプロセスから取得された入出力データを用いて閉ループ同定と周期外乱の推定を同時に行なう手法を提案する.著者らの一般化最小分散評価に基づく閉ループ同定法では,理想的な確率外乱のみから生成された入出力データを用いることを想定している.そのため,確定外乱の影響が入出力データに含まれる場合にはパラメータの推定値にバイアスが生じてしまう.このような問題に対し,提案法では周期外乱を対象としてその時系列信号自体も未知パラメータとした評価関数の最適化を行なうことで周期外乱の影響を除去し,システムのパラメータの正確な推定を実現する.また本論文では,外乱の周期性を利用することによって最適解を一意に決定するとともに,評価関数の理論解析によりシステムのパラメータと周期外乱が同時に推定可能であることを示す.最後に,提案法の有効性は数値例をとおして確認される.


 

■ 複数のステアリングを有するヘビ型ロボットの全身経路追従フィードバック制御法

青山学院大学・野木 滉一郎,山口 博明,米澤 直晃

本論文では,複数のステアリングを有するヘビ型ロボットの全身経路追従フィードバック制御法を提案した.本ヘビ型ロボットは,受動車輪を有するステアリングが中点に取り付けられたリンクを複数個,回転関節を介して連結することで構成され,回転関節の周期的な駆動を,ステアリングの周期的な操舵により,移動に変換している.本ヘビ型ロボットは,各受動車輪に与えたステアリング機能を積極的に利用することで,すべてのリンクの中点を単一経路に追従させることができる.これにより,すべてのリンクの運動を定量的に指定することができ,複数の障害物が近接するように配置された狭隘空間内において,障害物と干渉することなく,移動を実現することができる.特に,本フィードバック制御系の漸近安定性は,リアプノフの第2法により保証されている.本制御方法の有効性は,通路に複数の円柱状の障害物を配置した狭隘空間内において,パラメトリック曲線の1つであるBスプライン曲線により計画された経路への全身経路追従シミュレーションを通して確認されている.


[ショート・ペーパー]

■ 有界振幅の入力外乱に対してロバストな制御器のパラメータ化

山口大学・新銀 秀徳

本論文では,有界振幅の入力外乱の下で一入力の離散時間線形システムを安定化する静的な状態フィードバック制御器をパラメータ化する.安定化として制御器に求められる仕様は,外乱の最大振幅の情報をもちいて状態の二次形式の上限を制約することである.安定化制御器は,cheap controlにおける状態の重みを表わす正定行列をもちいてパラメータ化される.