論文集抄録
〈Vol.56 No.7(2020年7月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 分散型電源を含む連系電力系統に対する反復勾配法を用いた負荷周波数制御

慶應義塾大学・関根 徹也,水野 敬介,滑川 徹

本論文では発電機に加えて風力発電機の大量導入や系統内への蓄電池導入した電力系統の分散制御による負荷周波数制御手法の提案を行う.電力系統の対象として,分散型電源を含む複数のエリアが連系された電力系統を考える.風力発電機という出力に不確実性を持つ発電機が導入されても,発電機と蓄電池への制御入力が制約条件を満たすように,制約を考慮した評価関数を設計し,反復勾配法を用いた分散制御による負荷周波数制御手法を提案する.具体的には,Kuhn-Tucker の最適性条件を用い,反復勾配法を用いた最適制御入力更新アルゴリズムを提案し,その収束性解析を行う.
また,複数のエリアが連系された電力系統の状態推定には,蓄積した過去の複数の制御入力と出力を用いて高精度な状態推定が可能となるMoving Horizon Estimationを用いる.
最後に,連系電力系統に対して, Moving Horizon Estimation と反復勾配法を用いた負荷周波数制御のシミュレーションを行い,従来手法と比較することで,提案法の有効性を示す.


 

■ 無人航空機による構造物外観自動計測のための補助用無人航空機群を用いた無人航空機位置推定システム

名古屋大学・木村 圭佑,前田 圭吾,麻 晃太朗,
舟洞 佑記,道木 慎二,・愛知工業大学・道木 加絵

筆者らは,構造物外観自動計測実現の為の位置推定補助用無人航空機(補機)群による位置推定システムを提案する.橋の下などの大規模施設の周辺では,GNSS信号が正常に機能せずUAVの自律飛行が困難となる.提案システムでは,構造物付近で作業を行う作業用UAV(主機)の位置を補機群により推定する.補機は,構造物から離れた位置を飛行し,GNSSによる自己位置推定,及びカメラによる主機-補機間の相対位置計測を行う.補機群により得られた位置情報を統合することで,主機位置推定を行う.本論文では,提案システム実現の為に補機による計測のモデル化を行う.その後,基礎実験によりモデルパラメータの確認し,シミュレーションによってシステムの有効性を確認する.


 

■実時間フィードバックおよび信号最適化機能を有する交通流シミュレーション環境の構築と検証

東京工業大学・檀  隼人,岡本 僚太,早稲田大学・和佐 泰明,
東京工業大学・畑中 健志,工学院大学・向井 正和,早稲田大学・飯野  穣

効率的な交通システムの構築に向けて,交通流シミュレータが多数開発されている.一方で,実時間での計測情報に基づいて信号機を最適に制御するアルゴリズムも盛んに開発が進められている.実際の交通システムへの実装の難しさから,これらアルゴリズムの有効性はシミュレータを用いて検証する必要がある. しかしながら,既存の交通シミュレータには実時間の情報をもとに信号機を制御・最適化を実行する機能が整備されているとは言い難い. そこで,本論文では実時間フィードバックおよび信号機最適化機能を備えたシミュレーション環境の提案を行う. 提案する環境では,交通流シミュレータUCwin/Road,シミュレーションソフトウェアSimulink,最適化ソルバGurobiが実時間で連携する.さらに,最適化計算の負荷がシミュレーションの実時間性を失わせることを防ぐため,並列計算に基づく負荷軽減を実現する. 最後に,この環境を用いて著者らが過去に提案した最適信号機制御アルゴリズムを実行し,その効果を検証する.


 

■ ネットワーク化視覚運動オブザーバに基づく3次元空間内での協調追尾制御

東京大学・山内 淳矢,東京工業大学・原田 裕平,
畑中 健志,東京大学・藤田 政之

本論文では,視覚センサを搭載した複数剛体を推定情報に基づき対象剛体運動に追尾させる制御則を提案する.まず,剛体運動と視覚センサが得られる視覚情報について述べ,対象剛体を観測している剛体の集合として可視集合を導入する.また,本論文の目的である協調視覚追尾について定義する.つづいて,3次元空間内の剛体運動を視覚情報により推定する視覚運動オブザーバを協調させたネットワーク化視覚運動オブザーバに基づき,新たなオブザーバと制御則を提案する.提案則により,対象剛体が静止しておりすべての剛体の視覚センサが対象剛体を観測しているとき,剛体と対象剛体間の相対剛体運動が所望の運動に同期することを証明する.さらに,一部の剛体の視覚センサが対象剛体を観測できない場合でも所望の運動に同期することを示す.対象剛体が運動している際の性能についても,L2安定性の概念を用いて評価する.最後に,シミュレーションと実験により,提案則の有効性を検証する.