論文集抄録
〈Vol.59 No.11(2023年11月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 地域住民による自給自足型シェアサイクル運用システムの提案 分散型ステーション強化学習を用いたシェアリングエコノミー

筑波大学・矢嶋 耕平,倉橋 節也

本研究では,地域住民による新たな自給自足型シェアサイクル運用システムを提案する.本システムは,各ステーションにDeep Q-Networks(DQN)を組み込んだ,マルチエージェント強化学習 (MARL) モデルを使用し,複数の強化学習エージェントが連携して,地域住民にインセンティブを提供することで配車依頼を行い,ステーションの残台数が偏在することを回避する.また,ステーションの自転車残台数を用いたシンプルな手法,MARLモデル,シングルエージェント強化学習(SARL)モデルを比較し,環境変化に対する学習速度や柔軟性についても検証する.シミュレーションによる実験の結果,シンプルな手法やSARLモデルと比較して,MARLモデルは複数のエージェントの協調行動により学習時間が短縮され,より効率的なサービス運用が可能なことが示された.


 

■ 葉の動きの定量化によるショウガ根茎腐敗病早期検出法

高知工科大学・窪田 伊織,高知県農業技術センター・岡 美佐子,高知工科大学・栗原 徹

ショウガ根茎腐敗病は水媒伝染などにより感染が拡がりやすく,栽培現場では非常に警戒されている病害である.
本研究では,葉の動きを用いて根茎腐敗病感染株を感染初期の段階で検出する方法を提案する.我々は,意図的にショウガ根茎腐敗病に感染させた株が感染させない健全株に比べて葉の動きが少ないことを発見した.
   そこで,ExG(Excess Green)とSVM(Support Vector Machine)を利用して画像中の葉領域を求め,これから葉の運動を定量化し,提案法が健全株と感染株の識別に有効であるかROC曲線とAUCを用いて評価した.結果として,AUCは0.989でありYouden indexによる最適閾値での正解率は96.08%を得た.この時の真陽性率は92.59%, 偽陽性率は0%であった.見逃しのないよう真陽性率を100%とするよう閾値を設定するとき,偽陽性率は16.67%であった.


 

モデル予測制御による歩行者への配慮を意識した自動運転の設計

名古屋大学・アルン ムラリーダラン,奥田 裕之,鈴木 達也

一般道路での自動運転では,歩行者等他交通参加者との相互作用は無視できず,歩行者に配慮するなど,受容性を高める工夫が必要である.本論文では,道路を横断しようとする歩行者を複数のモードを持つ歩行者モデルとして表現し,モデル予測制御(MPC)の枠組みに組み込むことで,確率的な安全制約を考慮しつつ,歩行者に配慮する加減速制御を提案する.歩行者モデルとして,自車との相互作用を考慮しながら,その確率的な意思決定と運動を表現する確率重み付きPrARXモデルを用いる.また,MPCにおいて衝突確率に基づく許容リスクレベルを設定することで,保守的すぎる制御を回避しつつ,バランスの取れた運転行動を生成する.また,歩行者への配慮として,歩行者の意思決定の難しさの指標である判断のエントロピーをMPCのコストに加えることで,歩行者の意思決定プロセスを容易にする.車両と群衆の相互作用を観測したオープンデータセットであるVCI-CITRデータセットを用い,シミュレーションにより提案モデルの検証を行う.