「会長就任にあたって」― 新たな一歩を共に ―

2023年度(令和5年度)会長
早稲田大学
高橋 桂子

この度、計測自動制御学会第62期会長に就任いたしました。60余年の歴史を誇る本学会の運営に携わる機会を与えていただき、心より感謝申し上げますとともに、気持ちも新たに歩みを進めたいという思いでおります。学生時代より大変親しんできました本学会ですが、近年は本学会が主対象とする従来領域からは少し異なる地球環境の予測や超大規模数値シミュレーションを中心とした分野に専心してまいりました。外側からすこし距離をおいて、本学会を眺めることができる経験と期間もございました。
本学会は、「計測」「自動」「制御」という学術と産業における基盤を貫く視点を礎に、それら概念の黎明期から今日まで多くの先達の皆様のご慧眼とご尽力により発展を持続してまいりました。(ここでは敢えて「自動」を“自然に動くこと。自分の力で動くこと。”(広辞苑)という広義の意味で独立して使用しております。)しかしながら近年は、これまでの延長線上での進展が難しいであろう局面が顕在化しつつあります。これはなにも本学会に限ったことではなく、日本社会全体の課題であるといえるかもしれません。
世界における様々な価値の多様化、格差や不均衡の拡大とともに、さらなる激動の時代に入りつつあることは、皆様ご承知のとおりです。加えて、地球環境の変化は顕著になっており、この一因が人間活動であることは科学的に明白になり、その行く先は未だ見通せていません。私たちには、もはや人間中心の社会観だけでは持続的世界を保てないことが示唆されており、このような意味から、限りある自然や資源からなる循環の一部として人間社会のあり方を見直す時期が到来しているといえます。
このような世界的潮流を考えるとき、本学会の「計測」「自動」「制御」という揺るぎないビジョンを礎にした科学と産業における温故知新と創意が、諸問題の解決にむけた一歩を切り拓く可能性になるという思いを強くします。問題設定の本質的な見直しや、解決アプローチの根本的な変革が必要となるかもしれません。しかしながら、本学会のビジョンを共有する私たちは、学術界と産業界あるいは分野間の垣根を越えて、世界の諸問題解決への期待に応え得る十分なポテンシャルを有しているものと考えます。
第62期の運営は、これまでの本学会運営の継続性を重視しつつ、まず、運営の基盤である財政をさらに頑健化するための歩みを進めてまいります。事業内容の強化と見直しをふまえた年間収支のモニタリング、それらの分析に基づく予算立案プロセスの改善、さらに中長期財政頑健化のための施策検討と立案など将来に向けた準備を強化してまいります。
第二の重点的取り組みとして、本学会の特徴であり強みである分野間および組織間の縦横断的なつながりの支援を強化してまいります。特に、本学会の全体行事であるAnnual Conference、論文誌や会誌などの基盤活動に対するさらなる支援、部門間連携の強化や異分野・異業種間連携の取り組みへの支援、各支部と地域産業界との連携支援などの強化に尽力いたします。
第三の重点的取り組みは、ダイバーシティ・インクルージョンのさらなる推進です。特に、若手や中堅および女性の会員の方々が意欲を持って本学会に参画いただける活躍の場を広げるための検討と実践を試みたいと考えております。
上記運営は、11の委員会、6部門と部門協議会および8支部と支部協議会の第62期事業計画に基づき、組織間の相互協力と連携をいただきつつ、今期役員と共に推進してまいります。その上で、会員、賛助会員の皆様におかれましても、本学会運営に時にはご関心を寄せていただき、よいアイディアなどがあれば是非お聞かせいただけますようお願いいたします。
本学会の運営と活動は、何よりも会員の皆様の学術的進展や産業界における発展に寄与できるものでなければなりません。学会のあり方や活動の意義についての今日的変化は叫ばれて久しく、それは本学会にも当てはまることでありましょう。会員ならびに賛助会員の皆様の要望を捉えて、本学会のすがたも柔軟に変わっていかねばならないと考えます。そのためにも、外部への発信はもとより、学会内での相互発信をより円滑にし、相互理解と相互協力がしやすい環境整備への取り組みも進めてまいります。
本学会の場と活動が、新たな学術の芽吹きと進展および産業界における発展の一歩につながることを祈念しております。そして、そのような場や活動環境をよりよくご提供できるように、微力ではありますが力を尽くす所存です。会員ならびに賛助会員の皆様のご理解、ご支援とご協力を賜り、是非ご一緒に新たな一歩を進めたくお願い申し上げ、ご挨拶といたします。

学会概要

会員募集

計測自動制御学会では会員を募集しております。皆様のお近くのかたで入会ご希望のかたがおられましたら、ぜひ入会をすすめてくださいますようお願いいたします。

正会員、学生会員、賛助会員のご入会方法は、入会申し込み会員特典・年会費をご覧ください。または、SICE事務局会員係(電話:03-3292-0314)までお問合せください。