"会長就任に際して"
―新たなスタート―

                                                                                             






2021年度(令和3年度)会長: 東京大学大学院情報理工学研究科 教授
藤田 政之

 1961年9月に設立され翌年1月から事業を開始して以来,計測自動制御学会(SICE)は今年で創立60周年を迎えました.新たなスタートの年です.ところがいま私たちは大きな時代の岐路に立っているようです.2019年末頃から始まったとされる新型コロナウイルス感染症の拡大によるパンデミックが,いまも世界中を覆っています.このため普段の生活はもとより社会のあり方についても,大きな変革やリセットが迫られています.
 我が国の科学技術は欧米追従型,選択と集中による重点化の時期を経て,社会的課題の解決へ向けてその取り組みを始めました.これは今からちょうど10年前になる2011年3月の東日本大震災が一つの契機となったといっても過言ではないでしょう. 地球温暖化が引き起こす気候変動問題や脱炭素社会の実現を目指したエネルギー問題に関して,2012年より科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」領域が実施され,そこで多くのSICE会員が中心的な役割を果たしてきました.国内外で研究推進にリーダーシップを発揮し,異分野融合研究を促進し,海外機関との国際連携を強化し,さらにシステム構築を通してイノベーション創出へとつなげる仕組みを主導しました.
 2016年からは社会的課題の解決と経済発展の両立が掲げられ,サイバー空間とフィジカル(実世界)空間を高度に融合させた超スマート社会(Society 5.0)と呼ばれる未来社会像が内閣府より示されています.この超スマート社会を掲げた事業としては,JST未来社会創造事業「超スマート社会の実現」領域や文部科学省による卓越大学院プログラム「超スマート社会卓越教育院」(東京工業大学)などありますが,ここでもSICE会員が活躍しています.これに先立つ2004年にはすでに新社会・生活空間の創造を目指したテクノロジービジョン「SICE City」が本会より提案されていました.これはまさしくこの超スマート社会を先取りしたものだったといえましょう.サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical Systems)の構築に向け,SICEへの期待が高まってきています.
 2020年には,科学技術基本法が科学技術・イノベーション基本法へと本格的に改正が行われました.そこでは人文・社会科学も含めた総合知を創出・活用し,人間中心の社会という価値観を目指したイノベーションの創出が謳われています.人間を中心としたサイバーフィジカルシステムであるCyber -Physical & Human Systems(CPHS)に関する委員会が,国際自動制御連盟(IFAC)においてもすでに組織され国際会議で議論がなされています.この先駆的なCPHS研究への取り組みが,SICE内でも行われはじめていることは頼もしい限りです.国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)と軌道を一つにして,Society 5.0を具体化していくために,社会全体の再設計(リデザイン)が進められていくことでしょう.東京大学出版会より最近刊行された書籍「オンライン・ファースト」も指摘しているように,必ずしも未だ成熟しているとはいえない我が国における情報社会(Society 4.0)の壁を乗り越え,未来社会像Society 5.0の前提となるデジタル化とその実世界への展開に邁進することが必須です.
 産業革命は制御から始まったとも言われています.しかしながら人類が地球環境に及ぼした影響があまりに大きいために,私たちの住む地球に新たに人新世(アントロポセン)と呼ばれる年代が現出したとする説が提唱されています.このような時代の分岐点に直面している中,創立60周年を迎えるSICEは計測・制御・システムを中心とした科学技術・イノベーション分野においてその重要な責任を果たすことが望まれています.これから必ずやってくるポストコロナ時代・ポスト人新世を切り開くための挑戦がもう始まっています.これまで通りの元に戻そうとするのではなく,新しい扉を開いて前へ向かって新たなスタートを切りたいと思います.

正会員、学生会員、賛助会員のご入会方法は、入会申し込み会員特典・年会費をご覧ください。または、SICE事務局会員係(電話:03-3292-0314)までお問合せください。

学会概要

会員募集

計測自動制御学会では会員を募集しております。皆様のお近くのかたで入会ご希望のかたがおられましたら、ぜひ入会をすすめてくださいますようお願いいたします。

入会するには……入会申込書により入会申込みと同時に会費をお納めいただき、理事会の承認によって入会できます(入会金、紹介者不要)。