"会長就任に就任して"
―超スマート社会とSICE人材像―

2019年度(平成31年度)会長: 京都大学 工学研究科 機械理工学専攻 教授
椹木 哲夫

 2019年 2 月 19 日に開催された公益社団法人計測自動制御学会(SICE)の第9回定時社員総会にて第58期の理事・監事が選任され、その後の第1回理事会で今期の会長に選出されました。長い歴史のある学会の会長という重責に身が引き締まる思いです。
 さて本来ならば会長就任に際しての巻頭言としては、会長として本学会が何を目指し、どのように運営していくかの所信表明を述べるべきことは承知していますが、ここではあえて超スマート社会とSICE人材に関する私感を述べさせて頂きたいと思います。
 私事になりますが、修士学生時代の初めての学会発表の場、そして初めての学会賞(学術奨励賞)の受賞のいずれもが、このSICEでした。いまでこそAIが声高に叫ばれていますが、1980年代当時も2回目の人工知能ブームの再来と言われ、応用人工知能としての「知識工学」が大きな注目を集めた時代でした。 SICEの中でも知識工学部会(現在のシステム情報部門の知能工学部会の前身)が早々に設立され、SICEの会員数も年々ウナギ上りで、会員数が学会創立史上のピークとなる1万人の大台を超えんとする時代でした。実は会員数の差異を除けば、このような過去の興隆期と今の時代は多分に類似しています。Society 5。0の第5期科学技術基本計画で強調されるIoTやAI、 クラウド・エッジコンピューティングなどICTの技術革新が進む状況にあり、 IMEKO2021、 IROS2022、 IFAC2023等の世界規模で権威ある国際会議が次々に我が国で開催を迎えるという時代背景も似ています。
 Society 5。0では、超スマート社会の実現が目指されているのはご承知の通りです。さらにデータサイエンスやAI、深層学習等のキーワードが毎日のように新聞紙上に踊り、国からの教育・研究の競争的資金においてもこれらのキーワードは欠かせないものとなっています。しかし、このような社会課題を解決できる人材に求められるのは、寄与の蓄積された膨大なデータの処理や解析のための能力だけではなく、データの背後にある自然現象や生産活動・生活活動の人間事象における潜在的な関係性、階層性、因果性、ダイナミクス、意味等の深い知識のモデルを明らかにでき、観察から洞察を得て仮説を構成し検証を繰り返す中でどのようなデータを収集しなければならないかについて考えられる「モデル志向のデザイン能力」です。 Society5。0構想を現実化するためには、既存の情報やデータの利活用のみならず、情報やデータを新たに作り出せる現場領域との連携が不可欠です。これまでのSICE人材像では、社会にとって何を作ることが重要かということと、それをどう作るかということの双方に対する感性に優れ、より広く、より高い考えにより課題解決に取り組める人材を標榜してきました。これより導かれる超スマート社会の課題解決に寄与できるSICE人材像とは、新たな価値の創成に繋がるデータが何であるかを考え、データを活用する側の視点に立ってデータを作り出すことができ、そのデータをもとに現象を記述してモデル化し、制御して所望の機能を実現できる人材と言えます。
 いま一つ、SICE人材が超スマート社会のデザインにおいて強みとなるのは人間中心の考え方です。人間は「全体的な存在」であり、さまざまの製品を使い、さまざまのサービスを享受しつつ、個人の多様な価値観に基づいてその全体としての充足を志向する存在です。社会は個人の全体性をさらに超える、より普遍的な全体性を体現しています。イノベーションの実現する価値は、このような人間の全体性を踏まえたものであるべきで、具体的には、すでに多くの機器とサービスに取り巻かれた人間の生活世界(Lebenswelt)を文脈に取り入れていくことが不可欠になります。AIやビッグデータ活用で可能になる生活の利便性を実現する商品やサービスは数多くありますが、このような技術が可能にする局所的な価値の実現を、常に全体性に向けて開いておくことは、これからの科学技術にとって大きな課題であり、この課題解決に取り組める人材こそがSICE人材であると言えます。
 会長任期中にはこのようないま求められるSICE人材像について検討して参りたいと考えています。もちろん、これまでの歴代の会長・理事のご尽力により達成されてきた学会の提供するサービスの拡大、グローバルな発信力による世界の中でのプレゼンスの向上と学会価値の強化、そして財政健全化に向けた学会運営の効率化の取り組みと、本部・部門・支部の連携強化等の全体戦略は、引き続き理事・監事の皆様とともに頑張って継承していく所存です。SICE会員ならびに賛助会員の皆様の引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。

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