論文集抄録
〈Vol.60  No.4(2024年4月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 高速ビジョンシステムを用いた高速振動オブジェクトの鮮明画像取得

パーソルクロステクノロジー株式会社/東京大学・米津 真之介,東京大学・山川 雄司

本論文では,高速ビジョンシステムを使用し,XY平面の振動オブジェクトから鮮明画像を取得する手法を提案する.これらの手法は,ガルバノミラーを使用したハードウェア的手法及び,オブジェクト移動量を検出するソフトウェア的手法で構成される.提案された手法を検証するために,ミラーによる視界振動で実験し,これらの手法を定式化した.一般機器で発生するよりも高い周波数,大きい振幅の振動に対して,鮮明画像を取得することができた.これらの手法の統合システムにより,さらなるスペックアップを実現した.


 

■ 自動操舵の実現を目指した受動回転制御可能なプロペラ推進移動機構の提案

秋田県立大学・山内 悠,下井 信浩

日本のインフラは高度成長期に建設されたものが多いことから,現状インフラの老朽化が進み,深刻な社会問題となっている.現状の定期点検は,基本的に作業員による直接目視点検であるが,ロボットを用いた定期点検の導入が進められている.しかし,これらのロボットを用いた定期点検には現状いくつか問題がある.本研究では,移動点検ロボットの目標方向に自動的に操舵を行うことが可能なマルチロータによる推進機構の開発およびその制御方法を提案する.
開発する推進機構のモデルを設計し,機構の姿勢の平衡点が目標合力の方向と一致することを示した.また,各ロータの推力に差が生じた場合に,平衡点が目標合力の方向からずれることがわかった.そして,2つのロータの中心に回転軸をもち,各ロータの方向を制御することが可能な推進機構を開発した.開発した推進機構を用いて,2つの実験からモデルの検証を行った.1つ目の実験では,機構の姿勢の平衡点が目標合力の方向と一致することを実験から示した.2つ目の実験では,合力の大きさを変化させたときに応答性が変化することを,実機を用いたステップ応答から確認した.モデルとの誤差は生じたが,合力の大きさを変化させたときの各要素の傾向が一致することを示した.


 

■ 深層強化学習アルゴリズムによる宇宙機の最適軌道設計

防衛大学校・遠藤 亮,山口 功,山崎 武志,高野 博行

近年,急速な発展をみせたAI研究は第3次的盛行を迎え,機械学習における誘導・制御分野での活躍が大いに期待されている.本稿では,深層強化学習アルゴリズムを用いた宇宙機の最適軌道設計についての検討を行った.本稿における問題設定として,電気推進に代表される低推力での軌道遷移を採用した.この問題設定においては,軌道遷移に長時間を要するため,長時間に及ぶ加速方向の変化や推進機のオンオフ等を考慮すると低推進による軌道設計はまだ多くの最適問題が未解決である.また,設定したプラントが非線形であり,最適化をより一層困難にしている.一方,深層強化学習は線形・非線形に関係なく適用することができ,高度な学習精度を有することから,最適解をより効率的に求解することが期待できる.本稿では,数値シミュレーションを用い,深層強化学習アルゴリズムの適用可能性を調べるとともに,最適制御則で得られた解と比較・検討を行った.


 

■ノンパラメトリック区分的アフィンモデルを用いた航空レーザ測量データからの地表面推定とその応用

北九州市立大学・藤本 悠介

本論文では,航空レーザ測量で取得した点群データから地表面を推定する方法を議論する.航空レーザ測量はドローンなどから地表面へレーザを照射して反射した点を収集する測量方法であり,効率の良い測量方法の一つであるが,樹冠で反射した測量に不要な点も大量に取得されてしまうという問題点がある.この不要点を除去する方法として,本論文は先に地表面を推定し,推定地表面から離れた点を除去する方法を提案する.特に,本論文はノンパラメトリック区分的アフィンモデルを利用し,二つの制約として1) 点群は地表面より高い場所に存在する,2) 地表面は滑らかに変化する,を考慮した地表面推定手法を提案する.また,提案法の有効性を実際のデータを用いて検証する.