2014年度計測自動制御学会学会賞 学術奨励賞の贈呈
(2015年2月20日,第5回定時社員総会会場において贈呈)

(学術奨励賞・研究奨励賞)10名
○ヒト指型センサを用いたヒト指内部の非線形ひずみ挙動の計測
(第31回センシングフォーラムで発表)
東京大学 櫻井達馬君

○分散ニュートン法による双対分解を用いた分散最適化
(第1回制御部門マルチシンポジウムで発表)
東京大学 稲垣 昂君

○モデル予測制御を用いた自律無人搬送車のタスク割当てと経路計画の動的最適化
(第1回制御部門マルチシンポジウムで発表)
電気通信大学 中村亮介君

○クモヒトデの腕間協調メカニズムの数理モデル
(第26回自律分散システム・シンポジウムで発表)
東北大学 佐藤英毅君

○狭窄空間におけるヘビのロコモーションに内在する自律分散制御則
(第26回自律分散システム・シンポジウムで発表)
東北大学 佐竹冬彦君

○過去画像履歴を用いた移動マニピュレータの遠隔操作システム
(第14回システムインテグレーション部門講演会で発表)
京都大学 村田諒介君

○マイクロハイドローリクスに基づくソフトアクチュエータの開発
(第14回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東大生研 大寺貴裕君

○等身大筋骨格ヒューマノイド腱志郎における筋長重心ヤコビアンに基づくバランス動作
(第14回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 中島慎介君

○RGB-Dセンサを用いた単調な環境における消失点マッチングによるボクセル地図生成
(第14回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 池 勇勳君

○構造情報に基づく乳房X線画像上の腫瘤陰影検出法
(東北支部第285回研究集会で発表)
東北大学 小形奈緒子君

(学術奨励賞・技術奨励賞)4名
○An Analysis of Ear Plethysmogram for Evaluation of Driver's Mental Workload Level
(SICE Annual Conference 2014で発表)
Univ. of Tsukuba Ahmad Khushairy MAKHTAR君

○植物工場における細霧発生による水蒸気飽差制御システムの構築
(第14回システムインテグレーション部門講演会で発表)
木更津工業高等専門学校 浅野洋介君

○RTミドルウエアの産業応用を目的としたエンジニアリングサンプルの開発
(第14回システムインテグレーション部門講演会で発表)
埼玉大学 高橋直希君

○モデル予測制御法によるICT機器温度管理と省エネルギーを考慮した外気導入型データセンタの冷却制御
(第1回制御部門マルチシンポジウムで発表)
(株)富士通研究所 小川雅俊君

受賞者略歴および受賞論文概要

さくらい たつま
櫻 井 達 馬 君(学生会員)
2010年東北大学工学部機械知能航空工学科卒業.12年同大学院情報理工学研究科博士前期課程修了.15年東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻博士後期課程修了見込み.同年東芝研究所に入社予定.学術振興会特別研究員DC1.

受賞論文「ヒト指型センサを用いたヒト指内部の非線形ひずみ挙動の計測」
タッチパネル等の接触を介したインターフェースの普及により,その操作性向上等の要求から触覚フィードバック技術が注目されている.筆者らは低振幅でパワレスに大感覚強度の振動刺激を提示する,境界刺激法を提案してきた.本稿では,境界刺激条件下で感覚強度が向上する鍵となる,正弦波振動に対してヒト皮膚内部に非線形なひずみが発生する現象のメカニズムを調査するため,ヒト指型センサを開発し,種々のパラメータに対する内部ひずみの計測を行った.計測結果から振動面と皮膚との接触の非線形性により,入力正弦波振動に対して,ひずみの倍波が発生することを確認した.また,倍波成分は低周波の入力に対して有意に発生し,高周波になるにつれ減少するという周波数応答特性があることがわかった.本結果から効率的な境界刺激法の一条件が明らかになり,より低振幅・小型アクチュエータを用いた触刺激の開発が可能になった.

いながき こう
稲 垣 昂 君(学生会員)
2014年東京大学計数工学科卒業. 同年東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻に進学. 同年9月よりETH Zurichに交換留学中.

受賞論文「分散ニュートン法による双対分解を用いた分散最適化」
近年, 分散制御の観点から分散最適化についての関心が高まっている. 特に対象の問題が大規模となる場合の, 分散最適化アルゴリズムの収束速度の改善が重要な課題と考えられている. 本稿では分散最適化の古典的な方法である双対分解を実現するUzawaのアルゴリズムを拡張し, 分散的構造を保ったまま最適解への高い収束速度が期待される分散型 Newton法を提案した. さらにLegendre変換に対応する非線形座標変換を導入し, それを用いて提案したアルゴリズムの大域的安定性を証明した. これに加え, 受動性の性質を取り入れて提案手法のさらなる拡張を行った. 本研究によって, 電力ネットワーク,鉄鋼プラントやロボットの協調動作などのマルチエージェントシステムの, 従来の制御則よりも高速に収束することが期待される新たなシステム設計法が得られた.

なかむら りょうすけ
中 村 亮 介 君(学生会員)
2013年電気通信大学電気通信学部システム工学科卒業,同年電気通信大学情報理工学研究科知能機械工学専攻博士前期課程に進学し,現在に至る.

受賞論文「モデル予測制御を用いた自律無人搬送車のタスク割当てと経路計画の動的最適化」
半導体製造工程では渋滞の発生による搬送遅延が問題となっている.この問題に対して,著者らは搬送車の途中状態や時間推移に着目し,制御工学の観点から状態空間表現によるモデル化及び0-1整数計画問題での定式化を行ってきた.しかしながら,本手法は開始から終了までの時間を考慮する最適化問題であるため,膨大な計算時間を要する.また,搬送中のタスク追加を考慮していない.そこで,本稿ではモデル予測制御を用いた逐次最適化を考える.モデル予測制御を適用することにより,最適化の計算時間の削減と搬送中のタスク追加への対応が可能になる.本稿では,著者らの先行研究をモデル予測制御が適用できるシステム表現に拡張し,逐次最適化に対応した切替型目的関数を提案した.数値実験により,全搬送時間が長くなるほど先行研究と比較して高速化計算が可能になったことを示した.また,搬送中にタスクが追加される場合での問題を解いた.

さとう えいき
佐 藤 英 毅 君(学生会員)
1990年宮城県生.2013年東北大学情報知能システム総合学科卒業.15年同大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年本田技研工業(株)入社.現在に至る.

受賞論文「クモヒトデの腕間協調メカニズムの数理モデル」
現在のほとんどのロボットは,故障などのモルフォロジーの変化に対して脆弱である.この問題解決のため,本研究ではクモヒトデをモデル生物として採り上げた.クモヒトデは,中央にある盤とそこから伸びる5本 の腕からなる棘皮動物である.クモヒトデは,単純な分散神経系しか有さないにもかかわらず,腕を任意に切断しても,残存腕の動きを適切に協調させて推進することが可能である.本稿では,クモヒトデのロコモーションにおける腕どうしの協調関係のみに焦点を当てて考察するために,腕を短く切断し腕内の自由度を極力取り除いたクモヒトデを用いて行動観察実験を行った.そして,行動観察結果から得られた知見をもとに自律分散制御則を構築し,提案制御則の妥当性をシミュレーションにより検証した.その結果,提案制御則によって実際のクモヒトデの振る舞いをおおむね再現可能であることを明らかにした.

さたけ ふゆひこ
佐 竹 冬 彦 君(学生会員)
1990年栃木県生.2013年東北大学工学部情報知能システム総合学科卒業.同年東北大学大学院工学研究科博士課程前期2年の課程に進学,現在に至る.

受賞論文「狭窄空間におけるヘビのロコモーションに内在する自律分散制御則」
ヘビは,一次元ひも状という単純な身体構造にもかかわらず,周囲の環境変化に呼応して多様なロコモーションパターンを発現し,環境適応的に振る舞うことが可能である.このような振る舞いの背後に存在する制御メカニズムを解明することにより,広範な稼働環境をもつロボットなどへの応用が期待される.本研究では,狭窄空間におけるヘビのロコモーションに焦点を当て,その発現メカニズム解明を目指した.まず,実際のヘビを用いて行動観察実験を行い,狭窄路の幅に応じてロコモーションパターンが変化することを確認した.そして,この知見をもとに自律分散制御則を設計し,シミュレーションを行った結果,行動観察結果を再現することができた.

むらた りょうすけ
村 田 諒 介 君(学生会員)
1991年大阪府生.2013年京都大学物理工学科機械システム学コース卒業.同年,京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻修士課程に進学し,現在に至る.

受賞論文「過去画像履歴を用いた移動マニピュレータの遠隔操作システム」
近年,人に危険のおよぶ恐れのある環境において,移動マニピュレータを導入し,遠隔操作することでさまざまな作業をさせる試みがなされている.ロボットの遠隔操作では,操作者は機体を直接見ることができないため,ユーザインタフェースを通じて機体とその周囲環境の状態を把握する必要がある.本研究では,操作者へ移動マニピュレータのロボットアーム手先を俯瞰的に提示することで,作業を行うアーム手先とその周囲環境を直感的に理解できる遠隔操作システムを提案した.これは,過去に取得した機体搭載カメラの画像を背景にアーム手先のCGを重畳することで,過去の機体の位置から現在のアーム手先を見るような俯瞰画像を生成する.また,操作者が手にもつツールの位置姿勢にアーム手先の位置姿勢が追従する制御を導入することで,操作者はロボットのほかの部位を考えることなく,遠隔地での作業を実行させる操作ができる.実機を用いた被験者実験を行い,その結果より,従来手法と比較して本手法は遠隔地の環境を認識しやすいことが確認された.

おおでら たかひろ
大 寺 貴 裕 君(正会員)
1989年東京都生.2012年東京大学工学部精密工学科卒業.同年東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻修士課程に進学.マイクロ流体デバイスのアクチュエータへの応用に関する研究に従事.14年同学精密工学専攻修士課程を修了し,日本精工(株)に入社.現在に至る.

受賞論文「マイクロハイドローリクスに基づくソフトアクチュエータの開発」
近年,ロボットの分野において,柔軟性や壊れにくいといった特徴をもつソフトアクチエータの研究が盛んであり,中でも広く研究されている方式として柔軟素材を空気圧で駆動させるアクチュエータがある.これらは動作のためにガスボンベやポンプなど外部に圧力発生装置を必要とするため,系全体のサイズが大きくなってしまい,スタンドアローンな利用には不向きであると言える.そのため,小型圧力源をアクチュエータ内部に埋め込むことによる,系の小型集積化およびスタンドアローン化の実現が求められている.本研究では,微細な流路構造を持つ柔軟なシート状のデバイスからフレキシブルで3次元的な動きを造り出す「マイクロハイドローリクス」という動作概念に基づき,小型ソフトアクチュエータの開発と評価を行った.作製方法の検討,動作の実証を実施し,駆動圧力源として小型電気浸透流ポンプを埋め込むことによる小型化と集積化を実現した.

なかしま しんすけ
中 島 慎 介 君(学生会員)
1991年鹿児島県生.2013年横浜国立大学電子情報工学科卒業.同年東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻に入学し現在に至る. 生体模倣ロボットや柔軟アクチュエーションの研究に従事.

受賞論文「等身大筋骨格ヒューマノイド腱志郎における筋長重心ヤコビアンに基づくバランス動作」
生体は, 成長などよる恒常的な身体モデルの変化に晒され, 運動制御機構にはそれらを許容する仕組みが必要となる. それをロボットで再現するためには, 筋単位の運動と身体動作を結びつける情報としてのヤコビアンは, モデルとして外部から与えられるのでなく, ロボット自身によって獲得されなければならない.本研究では, この考えの下, 人体模倣ヒューマノイド腱志郎の全身に配置された100本以上の筋から所望の動作に応じて筋を分類・選択的に駆動するアルゴリズムを構築し, これによるバランス動作を実現した. 具体的には,
・床反力計を用いて一定長の各筋動作に基づく筋長と重心の変位を記録し, その勾配の平均値としてのヤコビアンを獲得
・筋長重心ヤコビアンの正負および大きさに基づき筋を分類し, 所望の重心変位方向に応じて, 拮抗を考慮した適切な動作モードを割り当てることによりバランス動作を実現した.

ち よんふん
池 勇 勳 君(学生会員)
1983年韓国ソウル特別市生.2010年韓国慶熙大学機械産業システム工学部機械工学科卒業.同年同大学電子情報学部コンピュータ工学科卒業.12年韓国高麗大学大学院メカトロニクス協同課程メカトロニクス専攻修士課程修了.同年同大学付設次世代機械設計技術研究所研究員.13年4月より東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻博士後期課程(日本政府文部科学省国費留学生),現在に至る.移動ロボット,空間知能化などの研究に従事.

受賞論文「RGB-Dセンサを用いた単調な環境における消失点マッチングによるボクセル地図生成」
移動ロボットの研究において,環境のモデルは,位置認識,経路計画などのさまざまな走行アルゴリズムのベースとなり,ロボットと人間との相互作用においても重要な役割を果たす.本研究では,単調な環境においてRGB-Dセンサを用いた3次元地図生成手法を提案する.RGB-Dセンサから取得した画像から消失点を抽出し,EKFと呼ばれる拡張カルマンフィルタに基づくマッチングを行うことで空間的に位置ずれのない,正確な三次元環境モデルを生成することが可能である.大域的な特徴である消失点は廊下のような単調な環境において1つの点に収束するユニークな特徴であるため,これらの特徴をランドマークとして使用することによりロボットの安定的な自己位置推定が可能となる.地図生成においては,RGB-Dセンサから取得した点群データをフィルタリングし,ボクセルベースの地図を生成する.幾何特徴の少ない建物の中の廊下環境での実験結果により,提案手法の有効性が確認された.

おがた なおこ
小 形 奈緒子 君(正会員)
1989年栃木県生.2012年東北大学工学部情報知能システム総合学科卒業.14年東北大学大学院医工学研究科医工学専攻修士課程修了.現在,(株)キヤノン勤務.医療機器の臨床アプリの研究に従事.受賞論文は大学院在学時の研究である.

受賞論文「構造情報に基づく乳房X線画像上の腫瘤陰影検出法」
乳がんの画像所見の一つである腫瘤陰影は,嚢胞や線維腺腫からなるある程度の面積をもった占拠性病変で,一般に周囲よりも高輝度な塊として視認されることから,この画像的な特徴を定量化した基準により検出を行うCADシステムが多い.しかし,1)周囲とのコントラストが十分でない陰影や,2)コントラストが十分であっても背景組織との重なり具合で構造的な特徴が失われる陰影などは,検出が困難であった.これらは,X線画像の原理上不可避の背景組織との透過的重なりが原因であり,医師でも視認が困難な場合がある.本研究では,乳房X線画像における主な背景組織である乳腺の空間的分布特性を解析し,その重なりの影響を減じることでこの問題の解決を試みた.すなわち,1)の対策として輝度値のヒストグラム解析から乳房内の乳腺分布構造を推定し,その構造に基づいて適応的に病変のコントラスト強調を行うとともに,2)の対策として形態学的フィルタを用いることにより背景組織の重なりを均一化し,病変構造を相対的に強調することで性能の向上を図る新たな手法を提案した.臨床データを用いた病変検出実験を行い,提案法の有効性を実証した.

Mr. Ahmad KHUSHAIRY Makhtar(学生会員)
He received the B.E. degree in Mechanical Engineering from the Tokyo University of Science, Japan, in 2007, the M.E. degree in Risk Engineering from University of Tsukuba, Japan, in 2009. After finishing his master degree, he worked as a research officer at Malaysian Institute of Road Safety Research (MIROS). He has been a lecturer in Faculty of Mechanical Engineering at Universiti Teknologi MARA (UiTM), Shah Alam, Malaysia from December 2009 till now. Currently he is working toward the Ph.D. degree in Risk Engineering at University of Tsukuba. His current research interest includes measuring mental workload for application in reducing road accidents.

受賞論文「An Analysis of Ear Plethysmogram for Evaluation of Driver's Mental Workload Level」
Unnecessary increase of driver’s mental workload may be a cause of road traffic crashes. Detection of increase of drivers’ mental workload is a vital issue in today’s society. Studies on the estimation of driver’s mental workload have been performed using a various devices. However, an applicable and a sensitive method is still vague. The purpose of this study is to develop a method to estimate driver’s mental workload level using plethysmogram. In order to find an index and its threshold value that indicates “high” mental workload, two ways of analyzing blood pulse wave data were studied (1) Using raw maximum Lyapunov exponent and (2) Using normalized maximum Lyapunov exponent. The result of former approach showed a significant different between the days with a secondary task and the days without the task. With this approach, however, it was not able to distinguish different conditions. We thus tried the latter approach, which normalizes the measured maximum Lyapunov Exponent with a reference obtained at the early stage of a trial. In this approach, it is necessary to determine the time length of the base interval for setting the reference value. The result showed that there was no significant difference between longer and shorter periods for the base interval. It was also found that the driver is said to be in high mental workload level when the value of normalized maximum Lyapunov exponent is 120% or above.

あさの ようすけ
浅 野 洋 介 君(正会員)
1979年生.2002年横浜国立大学工学部電子情報工学科卒業,04年横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻修士課程修了,08年博士課程修了.04年4月木更津工業高等専門学校電気電子工学科助手,08年9月助教,12年4月講師,14年4月准教授,現在に至る.ビジュアルサーボシステム,無線通信制御,植物工場環境制御の研究に従事.IEEE,電気学会,ロボット学会などの会員.

受賞論文「植物工場における細霧発生による水蒸気飽差制御システムの構築」
日本の施設園芸において,夏季の高温と通年の水蒸気飽差過大による生長抑制および収量低下が課題となっている.従来の細霧冷房法では制御手法が未確立のため,普及率は施設園芸設備の2%程度であった.NPO植物工場研究会(古在理事長)を中心とした農林水産省プロジェクト『植物工場の高収量化・高効率生産をIT技術で支援する統合型環境制御システムの開発実証事業』(平成24~26年度)の一環として細霧発生による水蒸気飽差制御システム開発に取組んできた.本研究では,栽培種をトマトとした太陽光型植物工場において,湿り空気の水蒸気圧と飽和水蒸気圧の差である水蒸気飽差を制御量として噴霧量の調整方法を提案し,光合成効率最大化を目指すインテリジェントコントローラを開発した.フィールドにおける実験結果から,水蒸気飽差制御と気化冷房効果により高収量・高品質化し,提案手法の有効性が確認された.また, IEEE1888通信プロトコルを用いることで,システム構築の自由度が増加し,クラウド上のコアシステムで計測データのリアルタイム遠隔閲覧・データマイニングが可能となった.

たかはし なおき
高 橋 直 希 君(正会員)
1989年千葉県生.2012年埼玉大学工学部機械工学科卒業.14年埼玉大学大学院理工学研究科博士前期課程修了.同年IHI運搬機械(株)入社.現在に至る.

受賞論文「RTミドルウエアの産業応用を目的としたエンジニアリングサンプルの開発」
近年,産業用ロボットは,産業構造の変化に対応するためにフレキシビリティの向上が求められている.Robot Technology Middleware(RTM)は,迅速なロボットシステムの開発が可能であることから,変種変量生産が求められる次世代の製造システムでの利用に適している.しかしながら,現在までに公開された産業用途のRTMシステムは,構築に高度な技術や高額な費用がかかるものばかりであった.そこで,本研究では,産業用ロボットによる簡単なピック&プレイス作業を行うRTMシステムのエンジニアリングサンプルを提案し,実際にカメラとティーチング機能を利用した産業用ロボットシステムを開発した.また,再利用性向上のため,RTMシステム内のソフトウエア構造をアプリケーション層,ミドルウエア層,ハードウエア層と階層化する手法を新たに提案した.RTMの産業界への普及を促すため,エンジニアリングサンプルの設計情報とともに,ソースコード,マニュアルを無償公開した.

おがわ まさとし
小 川 雅 俊 君(正会員)
2005年早稲田大学大学院情報生産システム研究科修士課程修了.08年同博士後期課程修了.博士(工学).07年早稲田大学助手,11年(株)富士通研究所入社,現在に至る.13年,計測自動制御学会 論文賞受賞,ICCAS2013 Outstanding Paper Award 受賞.データセンターおよび自動車エンジンのモデリング,シミュレーション,最適化,制御などの研究に従事.電気学会の会員.

受賞論文「モデル予測制御法によるICT機器温度管理と省エネルギーを考慮した外気導入型データセンターの冷却制御」
本論文では,外気を利用したモジュラー型データセンターに対してのモデル予測制御に基づく冷却制御方法を提案する.提案制御法では,ICT機器温度管理と省エネルギーの両者を両立させて,データセンターにおけるICT機器と冷却装置の総消費電力を削減する.このモデル予測制御に基づく制御方法は,従来のファシリティ側の冷却制御では直接利用されていなかったICT機器側のサーバのCPU温度情報を用い,ファシリティファンによってCPU温度を制御する.その開発にあたっては,CPU温度の将来状態に影響を及ぼす要因であるCPU使用率や吸気温度を考慮できる多入出力モデルを構築した.さらに,提案制御法を実際のモジュラー型データセンターに適用し,従来のサーバラックの吸気側と排気側の温度差を用いたPI制御法との比較実験を行った.その結果,20%以上のファシリティの消費電力の削減を実現した.