功績賞は,本会が寄与する分野において,科学技術の進歩,産業の発展,もしくは,教育・啓蒙に関し,永年にわたって特別の功労があり,その功績が特に顕著な者の生涯的偉業を讃えるものである.
 9月12日,広島大学東千田未来創造センター(SICE 2019会場)において贈呈式を行い,受賞者に賞状および副賞が贈呈された.

きむら ひでのり
木 村 英 紀 君(名誉会員・フェロー)1941年日生

功績1.制御理論とその周辺領域において多くの顕著な業績を上げた.特に次の二つの成果はいずれも制御理論の新しい研究テーマを提示し,制御理論の分野にインパクトを与えた.
・出力フィードバックによる局配置
制御系の状態フィードバック制御による極配置可能性は1960年代に確立されていたが,状態フィードバックより制限の強い出力フィードバックでその結果がどこまで拡張できるかは大きな関心事であった.この問題に対して一つの先駆的かつ本質的な解を1975年に提示した.その後この結果を改善する多くの試みがなされ,線形制御理論のもっともポピュラーなテーマの一つになった.この問題には代数幾何学が有効であることが分かり,多くの純粋数学者が線形システム論に参入するきっかけとなった.
・ロバスト安定化
ロバスト制御理論の黎明期に,モデルの不確かさが与えられたとき,その範囲のモデル変動で安定性を保証する制御器が存在するかどうかを判定する条件を導いた.この結果は当時のロバスト制御の中心テーマを解析から設計へ転換させるきっかけとなった.のちに制御器を線形時不変から非線形時変に拡張してもそのまま成立することが後に示され,この成果のもつ深い意味が明らかにされた.また、H制御とロバスト制御の結びつきを最も深いレベルで示す最初の結果となった.
功績2. 実システムの先端制御を先導
最新の制御理論を実システムの制御に応用することの重要性をSICE制御部門の活動の中で訴え続け,1990年代において日本がこの分野で世界をリードする基盤を作った.その例としてアルミニウムの圧延への外乱オブザーバの適用(住友軽金属で実装),H制御を自動車のアクテイブサスペンション制御に適用(トヨタ・レクサスに実装)などがある.
功績3.SICE学術講演会の国際化のスタートを切る
SICE会長在職中の2002年に学術講演会の予稿集を英文化することを決定し,学術講演会を国際化する端緒を切り開いた.学術講演会の参加者が減少するとの声が大きかったが,結果は逆に参加者は増えた.その後国際化は順調に進み,SICE Annual Conference は国際会議として定着している.
功績4.横幹連合の設立
SICEの学術領域の重要性と発展性は「知の統合」にあると考え,その理念を共有する学会を糾合して「横断型科学技術研究団体連合」(横幹連合)を2003年に設立した.文理を超えた43の学会が参加し,「ものからコトへ」のスローガンを初めて掲げて,知の統合の重要性を産・官・学にアピールした.SICEの行き届いた支援のもとに現在でも他に例のない多様性を持つ学会連合としての存在感を発揮し続けている.
功績5. アジア制御連合の設立
アジア制御連合(Asian Control Association)を創立、アジアの制御研究者の広範なネットワークを構築した.現在この組織は2年に1度開催されるアジア制御会議(Asian Control Conference) の主催者であり,年に6回Asian Journal of Control を発行している.

受賞歴
計測自動制御学会学術論文賞(1972年, 1983年, 1993年, 1997年)
IFAC Paper Prize Award (1984年,1990年)
IEEE Control Systems Society, George Axelby Award (1985年)
計測自動制御学会フェロー(1988年~)
IEEE Fellow(1990年~)
日本発明協会賞(1993年)
油空圧協会論文賞(1995年)
Springer Professorship, UC Berkeley (1995年)
Distinguished Member Award of the IEEE Control Systems Society(1996年)
計測自動制御学会著述賞(1998年、2004年)
IFAC Giorgio Quazza Medal (2014年)

略 歴
1970年 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 博士課程修了(工学博士)
同  年 大阪大学基礎工学部制御工学科 助手,講師,助教授を経て
1987年 大阪大学工学部電子制御機械工学科 教授
1995年 東京大学工学系研究科計数工学専攻 教授
2001年 理化学研究所生物制御システム研究チーム チームリーダー
2008年 理研BSI-トヨタ連携センター センター長
2009年(独)科学技術研究機構研究開発戦略センター上席フェロー
2013年 早稲田大学理工学術院招聘研究教授
2019年(社)システムイノベーションセンター副センター長

主な学会活動
1990年~1992年 計測自動制御学会常務理事・論文集編集正副委員長
2000年~2003年 計測自動制御学会正副会長
2005年~2008年 日本学術会議会員(19期)
2008年~2011年 横断型基幹科学技術研究団体連合会長
1999年~2015年An Editor-in-Chief of the Asian Journal of Control
1991年~1993年 The chairman of the steering committee of MTNS
1991年~1997年A Board Member of the Control Systems Society of IEEE
1996年   The General Chair of the 35th IEEE Conference on Decision & Control
2005年~2007年President of the Asian Control Association
2002年~2008年 Council Member of IFAC