功績賞は,本会が寄与する分野において,科学技術の進歩,産業の発展,もしくは,教育・啓蒙に関し,永年にわたって特別の功労があり,その功績が特に顕著な者の生涯的偉業を讃えるものである.

ふる た かつ ひさ
古 田 勝 久 君(名誉会員,フェロー)1940年生

功績
1.現代制御理論の黎明期からシステム制御理論の研究に従事し,システム同定において状態空間表現されたシステム構造を初めて取り入れた.この成果に対して1974年のSICEの論文賞を受賞した.線形システム制御理論に加えて1980年代のロボット制御に関する研究において仮想内部モデル制御法の提案,従来の数式モデルではなく実験で得られた応答から直接制御系を設計する方法(data-based control)の提案,離散系にも有効なスライディングセクターを用いた可変構造制御システムの提案等をしている.
2. 1970年代に,倒立振子の振り上げ制御を世界ではじめて実現されたのを皮切りに,倒立振子の振り上げ制御問題からエネルギーに着目した制御方法を提案するなど,制御理論の発展とその有用性の実証に大きく貢献した.特に,Furuta Pendulumと呼ばれる回転型の多重倒立振子を提案し,これは研究対象としてのみならず, 国際的制御工学の教育ツールとしての実例も多く報告され, 制御教育分野へも大きく貢献した.1970年後半には世界に先駆けて本格的かつ実用的な制御系設計CAD: DPACSを開発した.このソフトウエアは,原子力研究所の臨界プラズマ試験装置(JT-60)での制御系解析設計プログラムに活用されたほか,日本の多くの鉄鋼メーカ, 自動車, 電機産業においても使用された実績をもつ.DPACSの思想は,古賀雅伸教授(九州工業大学)のフリーウエアの制御系設計CAD: MATXとして発展をしている.
3. 東京工業大学在任中はCOEプロジェクト「スーパーメカノシステム:制御と機構の融合による新機能創出」(1997~2002年)の代表(2000年の定年まで),東京電機大学に転任してからも21世紀COEプログラム「操作能力熟達に適応するメカトロニクス」(2003-2008年)の代表を務めただけにとどまらず,文部科学省「対人地雷の探知・除去技術に関する研究会」委員長,JST対人地雷の探知・除去プロジェクト研究統括(2002~2008年)として貢献してきた.これらの研究成果は,国際自動制御連盟(IFAC)の総会(2002年)でのPlenary,IEEのTustin Lecturer,UK/ACC(2003年)のPlenary, IEEE CSSのCDC'03のPlenary等多くの講演発表をしている.University of California at BerkeleyでRussel Severance Springer Professor(招待教授:1997年)や,Helsinki工科大学,タリン工科大学,ロシア科学アカデミーより名誉博士号を授与されている.日本の学術会議においても第5部幹事会員(1997~2003年)を務めた.
4. 本会においても,理事事業委員会委員長,会長の他いろいろな役職を歴任し,フェロー,名誉会員の称号が与えられている.さらに, IFACにおいて TC Member,Council Member,Automaicaの Editorのほか,IEEE CSSでもVice President, Automatic Control のAssociate Editorほかいろいろな委員会の委員,委員長を務めた.

略 歴
1970年 東京工業大学工学部制御工学科 助教授
1982年 東京工業大学工学部制御工学科 教授
1997年 University of California at Berkeley, Department of Mechanical Engineering
            Russell Severance Springer客員講座教授
2000年 東京工業大学 名誉教授,東京電機大学理工学部 教授
2008年 東京電機大学 学長
2016年 東京電機大学 顧問
2016年 株式会社ソディック 取締役
2020年  東京電機大学 名誉学長

学会及び社会における活動
1991年~1993年IEEE Transactions of Automatic Control Associate Editor
1994年~2002年Council Member of IFAC
1996年~1999年IFAC Automatica Editor
1996年~1997年IEEE CSS Vice President
1997年~2003年日本学術会議 第5部幹事会員
1998年~2001年科学技術庁宇宙開発委員会専門委員
1999年~2000年計測自動制御学会 会長
2002年~2008年文部科学省, "対人地雷の探知・除去技術に関する研究会" 委員長
2010年~2020年日本私立大学協会 理事,常務理事(2013~20年)
2014年~2015年関東工学教育協会 会長
2017年~2019年日本学術会振興会産学協力総合連絡会議委員

栄誉職
1992年 計測自動制御学会 Fellow
1996年 IEEE Fellow
1998年  Honorary Doctor of Technology, Helsinki University of Technology
1998年 Distinguished Member of IEEE Control Systems Society
2003年 IET Fellow
2006年  IFAC Fellow
2008年 Doctor Honoris Causa, Russian Academy of Sciences
2008年 Doctor Honoris Causa, Tallinn University of Technology
2017年 瑞宝中綬章受章