(学術奨励賞・研究奨励賞)10名
○ソフトグリッパのための多孔体を用いたトモグラフィ式触覚センサの設計と特性評価
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 船戸舜生 君

○AR-HueCode: 多数のARマーカの色相別重畳により高精度姿勢推定を可能とする複合マーカ
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東北大学 横田将輝 君

○適応範囲の拡大に向けたMAMLとMLSHの組み合わせによるメタ強化学習
(第49回知能システムシンポジウムで発表)
電気通信大学 加藤 駿 君

○離散時間エントロピー正則化最適制御と雑音応答の関係について
(第64回自動制御連合講演会で発表)
東京工業大学 伊藤海斗 君

○シンプルモデルに基づく位相リセットのストライド時間の長期相関への寄与の解析
(第34回自律分散システム・シンポジウムで発表)
京都大学 岡本耕太 君

○双腕ロボットによる面ファスナー開け行動における操作音と力覚情報に基づく模倣学習
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 河村洋一郎 君

○ディアボロジャグリングに基づくIn-Handマニピュレーション
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
大阪大学 市倉ひなの 君

○浮遊ドローンの把持がヒトの身体動揺に及ぼす影響の解析
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
横浜国立大学 豊田創一朗 君

○旋回中の土砂のこぼれに着目した油圧ショベルの掘削動作の提案
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 桂 知弘 君

○Auditory EMG Biofeedback Slightly Reduce Center of Mass Acceleration During Walking
(ライフエンジニアリング部門シンポジウム2022で発表)
Kobe University Benio KUBUSHI 君

(学術奨励賞・技術奨励賞)5名
○BMIにおける転移学習を用いたCNNの性能向上
(第19回コンピューテーショナル・インテリジェンス研究会で発表)
法政大学 高橋亮太 君

○認知バイアスを利用したNaive Bayesによる少量の異常データからの産業機械音異常分類
(第64回システム工学部会研究会で発表)
防衛大学校 上田真央 君

○東京2020パラリンピック競技大会における遠隔操縦ロボットサービス 第3報
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
トヨタ自動車株式会社 岩永優香 君

○環境設置LiDARを用いた建設機械の3次元位置推定手法
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
弘前大学 稲川正浩 君

○球状作物のための吸着式収穫ハンドTrun-cone padの開発
(第22回システムインテグレーション部門講演会で発表)
ヤンマーホールディングス株式会社 才木みゆき 君

受賞者略歴および受賞論文概要

ふなと みつき
船 戸 舜 生 君(学生会員)
1998年東京都生.2021年東京理科大学理学部第一部応用物理学科卒業.同年東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻修士課程に進学し,現在に至る.触覚センサに関する研究に従事.

受賞論文「ソフトグリッパのための多孔体を用いたトモグラフィ式触覚センサの設計と特性評価」
繊細で安全な把持を可能にするソフトグリッパのための触覚センサは,屈曲を阻害しない柔軟性と,センサ出力に影響を受けない適応性が必要である.本論文では,接触圧力分布計測を目的とし,導電多孔体を用いて柔軟性を有したトモグラフィ式触覚センサを提案した.有効な圧力計測範囲と,屈曲がセンサにもたらす影響を調べるため,導電多孔体を用いた厚さの異なるセンサを作製し,その検出特性と再現性に関する評価を行った.結果として提案手法は,構成素材の変形が生じない曲率範囲まで,屈曲による検出性能の低下は確認されず,ソフトグリッパに対する適用性が高いことが示唆された.また,多孔体の厚さに関して検出性能と柔軟性のトレードオフがあることを明らかにした.このトレードオフに関する検討を進めることで,ソフトグリッパに適した触覚センサの実現が期待される.

よこた よしき
横 田 将 輝 君(学生会員)
1998年青森県生.2021年東北大学工学部機械知能・航空工学科卒業.同年東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻博士前期課程に進学し,現在に至る.ロボットやドローンの位置推定,自律化に関する研究に従事.

受賞論文「AR-HueCode: 多数のARマーカの色相別重畳により高精度姿勢推定を可能とする複合マーカ」
GNSSの電波の届かない屋内などでは,ドローンやロボットの位置姿勢推定手法として, 安価かつ環境構築が容易という理由からARマーカなどの可視マーカがよく用いられる.
しかし,可視マーカには認識範囲に制限があるため,ドローンやロボットの移動範囲をカバーするために,何枚ものマーカを環境中に配置する必要があった.そこで本論文では,多数の可視マーカを異なる色相を用いて1枚に重畳した複合マーカAR-HueCodeを用いた,広範囲かつ高精度な位置姿勢推定手法を提案する.異なるサイズのマーカの重畳により,遠距離では大サイズのマーカ,至近距離では小サイズのマーカの認識により,垂直方向へ認識範囲を拡大できる.また,AR-HueCodeが画角から見切れていても,小サイズのマーカの認識により,水平方向へも範囲を拡大できる.認識精度に関しては,重畳された各マーカから得られる推定結果をポーズグラフを用いた最適化により統合し,精度の向上を実現する.

かとう しゅん
加 藤 駿 君(学生会員)
1997年山形県生.2021年室蘭工業大学工学部機械航空創造系学科航空宇宙システム工学コース卒業.同年電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻博士前期課程に進学し,現在に至る.未知タスク適応に向けたメタ強化学習アルゴリズムに関する研究に従事.

受賞論文「適応範囲の拡大に向けたMAMLとMLSHの組み合わせによるメタ強化学習」
メタ強化学習は,事前に複数のタスクから学習した方策を用いることで類似タスクに効率的に適応できるが,学習時とテスト時のタスク類似性が低い場合,学習した方策がテスト時のタスクに対して有効に作用せず,適応範囲は事前に学習したタスクに依存して限定される.そこで,本研究では複数のタスクをできるだけ少ない学習回数で対応可能な単一モデルを学習するMAMLと,複数モデルを学習しながら適切なものを選択・切替するMLSHを組み合わせた手法を提案した.具体的には,学習時のタスクと類似性が高い場合はMAMLで効率的に対応し,対応困難な場合はMLSHによる複数方策を用いることで適応範囲を拡張させる.提案手法の有効性を検証するために,学習時とテスト時のタスクの類似度合が少ない迷路問題に適用したところ,MAMLやMLSHはゴール到達困難であるのに対し,提案手法は少ない試行回数でゴール到達可能であることが分かり,メタ強化学習の更なる適応範囲拡大に寄与した.

いとう かいと
伊 藤 海 斗 君(正会員)
2017年京都大学工学部卒業,2019年同大学院情報学研究科修士課程修了,2022年同研究科博士後期課程修了.同年東京工業大学情報理工学院の助教となり,現在に至る.2021年日本学術振興会特別研究員(DC2).確率システムの解析・制御・最適化およびその応用に関する研究に従事.2022年度計測自動制御学会論文賞武田賞を受賞.博士(情報学).

受賞論文「離散時間エントロピー正則化最適制御と雑音応答の関係について」
最適制御問題は,強化学習やニューラルネットワークの学習をはじめとして,様々な場面で現れ,その重要性はますます増している.離散時間非線形システムに対して最適フィードバック制御則を求める問題は,ベルマン方程式を解いて価値関数を求める問題に帰着する.しかし,状態空間の次元が高いとベルマン方程式を数値的に解くことは非常に難しく,この困難性をいかに回避するかが中心的課題となる.これに対し本研究では,エントロピー正則化が施された最適制御問題を考えた.確率雑音のみで駆動されるシステムの状態量標本を用いて,正則化最適制御の価値関数をモンテカルロ近似できることを本研究で示した.これにより,シミュレーションによる標本生成で価値関数が容易に計算可能となった.特筆すべき点として,本結果は一般の非線形システム・コスト関数で成り立ち,幅広い問題に適用可能である.

おかもと こうた
岡 本 耕 太 君(学生会員)
1996年京都府生.2021年京都大学工学研究科航空宇宙工学専攻博士前期課程修了.同年,同専攻の博士後期過程進学及び日本学術振興会特別研究員DC1採用.現在に至る.ヒトの歩行の力学系理論に基づく研究に従事.

受賞論文「シンプルモデルに基づく位相リセットのストライド時間の長期相関への寄与の解析」
ヒトの歩行は必ずしも定常ではなく,微小にゆらいでいる.特に,ストライド時間(ストライドごとの歩行周期)には長期相関と呼ばれるフラクタルなゆらぎがみられる.この長期相関はヒトの運動機能の健常性を特徴づけており,加齢や神経疾患によって,ストライド時間は無相関に変化してしまう.しかしながら,ストライド時間におけるゆらぎの長期相関の出現と変化の原因は未解明であった.先行研究では,多リンク剛体系で構築された複雑な身体系と,位相リセットと呼ばれるリズム制御をモデル化した中枢パターン生成器(CPG)に基づく神経系のモデルを用いることで,歩行における長期相関が再現された.さらに,位相リセットの有無によりストライド時間のゆらぎ特性が大きく変化することが示された.しかしながら,複雑な神経系と身体のモデルを用いているため,この本質的なメカニズムを理解することが難しかった.そこで本研究では,コンパス型のシンプルな身体のモデルと,位相リセットを導入したシンプルなCPGモデルからなる神経系のモデルを統合し,歩行におけるストライド時間のゆらぎの長期相関を再現した.さらに,位相リセットの有無に応じた長期相関の変化を調べ,その変化のメカニズムを位相応答の概念に基づいて明らかにした.

かわむら よういちろう
河 村 洋一郎 君(正会員)
1996年生.2022年東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻修士課程修了.現在は国内のロボティクススタートアップ企業でシステム開発に従事.

受賞論文「双腕ロボットによる面ファスナー開け行動における操作音と力覚情報に基づく模倣学習」
近年,柔軟物操作に代表されるシミュレーション困難なマニピュレーション問題に対して,明示的な環境モデル化 を行わない学習型の手法が盛んに研究されている.特に模倣学習は,教師軌道が入手可能な場合,サンプリング効率に優れ実ロボットでの学習に適している.特に近年発展を見せる深層学習を利用し,高い汎化性能や end-to-end 学習を期待する深層模倣学習は盛んに研究されているが,その多くは視覚や力覚用いているものが多い.本研究では,模倣学習に視覚や力覚以外の様々な情報を有効活用することも重要であることに注目し,視覚力覚に加えて音情報のフィードバックを用いながら双腕ロボットをリアルタイムで操作可能なマルチ感覚操縦システムを構築した.さらにこのシステムを利用して画像力覚そして音情報を統合的に利用することが必要なタスクの一例であるメンファスナー開けタスクに取り組んだ.操縦システムを持ちいて教師軌道を収集し,そのデータを用いて模倣学習を行い,その性能比較を行なうことで複合感覚を用いた模倣学習の有効性を明らかにした.

いちくら ひなの
市 倉 ひなの 君(学生会員)
1999年佐賀県生.2022年大阪大学応用理工学科卒業.同年大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻博士前期課程に進学し,現在に至る.柔軟体を用いたロボットマニピュレーションに関する研究に従事.

受賞論文「ディアボロジャグリングに基づくIn-Handマニピュレーション」
近年,ロボットによる複雑なタスクの実現のために,ロボットハンド内で物体を操作する,In-Handマニピュレーションの研究が行われている.本研究では,ディアボロジャグリングから着想を得た,斬新なIn-Handマニピュレーション手法を提案した.この手法は,柔軟ベルトをハンドの指先に取り付け,指先を振動させることで,対象物の連続的な回転運動を生成する.柔軟ベルトが有する高適応性により,複雑なセンシングや制御,複雑な機構を必要とせず,多様な形状・サイズの対象物を回転させることが可能である.はじめに,二次元解析モデルを導入し,柔軟ベルトの端点に振動入力を与えることによって非把持形態で対象物を高速回転させるメカニズムについて明らかにした.続いて,プロトタイプを開発し,提案手法の有効性を実験により確認した.さらに,多様な形状・サイズの対象物に対する回転操作を行い,提案手法が優れた簡便性・汎用性を有することを示した.

とよた そういちろう
豊 田 創一朗 君(学生会員)
1998年岐阜県生.2022年横浜国立大学理工学部数物・電子情報系学科卒業,同年横浜国立大学先進実践学環に進学し,現在に至る.ヒトの姿勢制御解析の研究に関する研究に従事.

受賞論文「浮遊ドローンの把持がヒトの身体動揺に及ぼす影響の解析」
われわれは初期歩行間もない乳幼児に対しヘリウムガス入りの風船を把持させることで歩行時の身体動揺が減少することを発見し,歩行距離が延長することを示唆した.この現象は健常成人者においても確認されており, 多くの人に対して歩行を支援できる可能性がある.ただし,把持した手に加わる浮力の大きさや方向と姿勢動揺の低減効果の関係性は明らかにされていない.そこで本研究では,ドローンに取り付けた紐の把持によって指先に任意の圧力を与えて浮遊風船を再現し,指先への力覚を変化させることで立位姿勢における姿勢動揺の変化を調査した.5名の若年健常者に対する立位姿勢での効果検証実験の結果, 指先に加わる力が大きいほど高い身体動揺の低減効果を得ることができ,重りを把持しただけでは姿勢動揺の低減がみられないことを確認した.今回の力覚提示法が力の発生点(力点)が把持する指先(作用点)から距離が離れていることが共通点としてあげられることから,力点と作用点が離れた力覚提示が姿勢動揺の低減に寄与した可能性が示唆された.

かつら ともひろ
桂 知 弘 君(学生会員)
1999年兵庫県生.2022年東京大学工学部精密工学科卒業.同年,東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻修士課程に進学し,現在に至る.機械学習や動作計画に関する研究に従事.

受賞論文「旋回中の土砂のこぼれに着目した油圧ショベルの掘削動作の提案」
油圧ショベルによる掘削作業では,掘削を行なった後に旋回し,放土を行う.この旋回中に土砂のこぼれが生じることがある.都市土工で,土砂のこぼれが生じた場合,人力による清掃が必要となり,生産性の低下をもたらす.旋回中に土砂のこぼれが生じないように放土量を減少させた場合,必要となる掘削回数が増加し,生産性の低下をもたらす.そこで本稿では,放土量は維持しつつ,旋回中の土砂のこぼれを減少させることを目標とした.一部の熟練技能者の動作を参考にし,掘削中にバケットの口が水平になったタイミングで,前後にバケットを素早く振る動作を提案した.この動作によりバケット内の土砂が移動し,放土量は維持しつつ土砂のこぼれが生じにくい積み方になることを狙った.シミュレーション実験により,土砂の硬さや掘削軌道によらず,提案動作により放土量は維持しつつ,旋回中の土砂のこぼれを大幅に低減できることを明らかにした.

きぶし べにお
木 伏 紅 緒 君(正会員)
1990年東京都生.2016年京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士前期課程修了.同年,日本学術振興会特別研究員DC1採用.2019年同大学大学院博士後期課程修了.博士(人間・環境学).同年,早稲田大学スポーツ科学学術院助教を経て,現在に至る.人間の身体運動制御に関する研究に従事.

受賞論文「Auditory EMG Biofeedback Slightly Reduce Center of Mass Acceleration During Walking」
筋電図バイオフィードバック(EMG-BF)を用いることで、運動機能障害を有した患者の歩行能力を改善できることが知られている.しかし,健常者の歩行改善に有用であるかは明らかにされていない.そこで本研究では,EMG-BFが歩行の運動学的な安定化に貢献するのかを健常者を対象として検証した.実験では,歩行中に単一の筋活動を音としてフィードバックし(被験筋:足関節底屈筋,足関節背屈筋,膝関節屈曲筋),歩行の滑らかさの指標である身体重心加速度の二乗平均平方根を条件間で比較した.その結果,足関節底屈筋のバイオフィードバックは前後・鉛直方向の身体重心加速度をわずかに低減することを明らかにした.本研究の新規性は,歩行中のEMG-BFが健常者においても有用であることが初めて示された点にある.また,本研究の結果は足関節底屈筋の活動が歩行安定化においてより重要であることを示唆しており,この知見は歩行動作を安定化する方策を考案する上で有用である.

たかはし りょうた
高 橋 亮 太 君(学生会員)
1998年生.2021年度法政大学理工学部卒業.2023年法政大学理工学研究科修了予定.

受賞論文「BMIにおける転移学習を用いたCNNの性能向上」
近年,脳波を用いた制御手法(Brain-machine interface = BMI)が注目を集めており,介護支援やリハビリテーション支援での活用が期待される.BMI手法では,コンピューターが脳波を自動的に識別して制御に繋げるシステムを構築することが求められる.自動認識技術としては主に機械学習手法が用いられることが多く,近年ではCNN(Convolutional Neural Network)等のディープラーニング手法が学習精度面で良好な結果を示している.一方で,CNNには学習時間が長いという課題がある.その課題の解決策の一つになり得るのが転移学習手法である.転移学習は既に学習を終えた学習器を活用することで,学習精度や学習効率を向上させる手法である.本研究では学習凍結の条件を変更した転移学習を複数種類行い,脳波データに対する転移学習の効果を比較検証した.

うえだ まお
上 田 真 央 君(学生会員)
1988年熊本県生.2014年北見工業大学工学部電気電子工学科卒業.同年3月海上自衛隊入隊.2020年北海道情報大学通信教育部経営情報学部システム情報学科卒業.2022年防衛大学校理工学研究科前期課程情報数理専攻卒業.同年5月独立行政法人大学改革支援・学位授与機構にて修士(工学)の学位取得.同年12月海上自衛隊を退職し,2023年4月公立工業高等学校教諭となり現在に至る.日本大学通信教育部文理学部史学専攻在学中.

受賞論文「認知バイアスを利用したNaive Bayesによる少量の異常データからの産業機械音異常分類」
定期的な保守点検が行われる工場などでは,設備の劣化や不具合の検知を熟練エンジニアの経験に頼っているが,後継者の育成が困難であるため世代交代が進んでいない.このような人手不足を解決する手段として,各種センサーを使用した自動化・効率化への関心が高まっている.本研究では,機械音の周波数スペクトルを画像化し,それを区画に分割したものを Loosely Symmetric Naive Bayes(LSNB) の特徴量として採用し,環境雑音下における異常音の類別を試みた.工業製品は壊れにくいように設計されていることから故障音のデータが集まりにくいという状況を再現するために,トレーニングデータにおいてわずかな異常音データのみを用いて同様の実験を行った結果,他の代表的な機械学習アルゴリズムと比べて安定した精度で分類できることを明らかにした.

いわなが ゆうか
岩 永 優 香 君(正会員)
1990年生.2015年九州大学大学院システム情報科学府情報知能工学専攻修士課程修了.同年,トヨタ自動車株式会社入社.生活支援ロボットHSR(Human Support Robot)のソフトウェア開発,2019年東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会向けHSRの遠隔操縦インタフェース開発を経て,現在は人とロボットのインタラクションに関する研究に従事.

受賞論文「東京2020パラリンピック競技大会における遠隔操縦ロボットサービス 第3報」
東京2020パラリンピックにおいてオリンピックスタジアムで10日間HSRを23台数運用し,遠隔オペレータによるロボットサービスを提供した.本論文では,ロボットの自律動作とオペレータによる操縦を組み合わせるshared controlの考え方に基づいた遠隔操作インタフェースを開発し,オペレータの意図を遠隔地のお客様へのサービスに反映させることとオペレータの負担低減の両立を目指しつつ,長期間の運用を可能とする遠隔操作システムを提案・実証した.具体的には,オペレータは遠隔地のお客様と音声・映像によるコミュニケーションを図りながら,PCモニタに表示された3Dビューワで遠隔地の状況を把握し,マウスまたはゲームコントローラを使ってロボットを操作した.運用後にはオペレータ31名へのアンケート及びインタビューを実施してインタフェースのユーザビリティを評価し,深堀が必要な要素技術やシステムの改善点を示した.

いながわ まさひろ
稲 川 正 浩 君(学生会員)
1997年北海道生.2021年弘前大学大学院理工学研究科理工学専攻修了.同年、同大学の博士後期課程安全システム工学専攻に進学し,現在に至る.建設車両の位置推定及びその制御の研究に従事.

受賞論文「環境設置LiDARを用いた建設機械の3次元位置推定手法」
建設車両は,住宅地や災害現場など幅広い現場で運用されており,さまざまな環境下で利用できる位置推定手法の開発が求められている.そこで本稿では,作業環境に設置した3D-LiDARから得た3次元点群と,推定対象となる建設車両の表面形状モデルから,位置と姿勢の同時推定が可能な手法を提案した.また,推定精度を向上させるために,点群欠損に合わせてモデルを自動で修正するアルゴリズムを提案した.本位置推定手法では、複数の表面形状モデルを用いることで,複数車種・複数台に対応できる.実験では,実際の土木作業現場を想定して,実機ホイールローダと2台のクローラダンプを不整地な圃場に設置し,掘削して荷台に積み込まれた土砂を別の土砂山に運搬する,一連の土砂運搬作業の自動化に成功した.これらの結果は,提案した位置推定手法の精度が自動制御に十分であることを示した.

さいき みゆき
才 木 みゆき 君(正会員)
2017年北海道大学大学院農学院共生基盤学専攻修士課程修了.同年ヤンマーホールディングス(株)に入社.現在,農業機械,建設機械のロボティクス化のための新機構の研究開発に従事.

受賞論文「球状作物のための吸着式収穫ハンドTrun-cone padの開発」
近年,様々な収穫ロボットの開発が進んでおり,実の把持方法の1つとして吸着を用いたハンドが開発されている。従来の吸着パッドは吸着のために押し付けが必要であり樹になっていて反力が得にくい球状作物には対応できないことが課題であった。本研究では柔軟素材を使用し,先端の穴径が基部の内径よりも小さな吸着パッド“Trun-cone Pad”を開発した.先端の小さな穴径部分が作物に密着した時点で吸着が始まるため小さな吸着力から吸着可能で反力が得にくい作物に対しても吸着が可能となった.先端を巻き込みながらつぶれることで先端穴径よりも大きな有効面積で吸着し大きな吸着力も確保できた.先端面を広く柔軟にすることで全体がリップとして機能し凹凸のある作物になじみやすい形状となった.また,先端面を凸テーパー形状とすることで先端がさらに柔軟になり作物の凹凸や位置ずれに応じて変形しより密着しやすくなった.