2025年度計測自動制御学会 学会賞贈呈のため,三平満司氏を委員長とする学会賞選考委員会において慎重に選考の結果,下記論文賞10件,技術賞4件,著述賞3件,新製品開発賞3件,国際標準化賞1件,教育貢献賞1 件,若手学会貢献賞2件が理事会にて決定された.8月29日,高知県立県民文化ホール(SICE FES 開催時)にて贈呈式を行い,受賞者に賞状および副賞が贈呈された.

受賞者略歴および受賞論文概要

[論文賞] 10件
(論文賞・蓮沼賞)
○ツイン投光差分方式を用いた厚鋼板表面検査装置
(SICE 論文集Vol.59, No.8で発表)
JFEスチール株式会社・
大野紘明 君,楯真沙美 君,飯島慶次 君
JFEテクノリサーチ株式会社・大重貴彦 君

おおの ひろあき
大野 紘明 君(正会員)
2012年東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻修士課程修了.同年JFE スチール(株)入社,現在に至る.主に鉄鋼プロセスの光画像技術の研究開発に従事.2020年機械振興賞受賞.2024年度FA財団論文賞などを受賞.

たて まさみ
楯 真沙美 君(正会員)
2010年東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了.同年JFEスチール(株)入社,現在に至る.主に厚鋼板の製造プロセス開発・導入および製造管理に従事.2020年機械振興賞,2024年度FA財団論文賞などを受賞.

いいじま よしつぐ
飯島 慶次 君(正会員)
1993 年東京工業大学大学院理工学研究科制御工学専攻修士課程修了.同年日本鋼管(現JFEスチール(株))入社,現在に至る.鉄鋼プロセスにおける自動制御技術の研究開発および現場への適用・システム構築に従事.2020年機械振興賞,2024年度FA財団論文賞などを受賞.

おおしげ たかひこ
大重 貴彦 君(正会員)
1991年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了.同年日本鋼管(現 JFE スチール(株))入社,2018年JFEテクノリサーチ(株),現在に至る.主に光学センサの開発に従事.博士(情報理学).2003 年全国発明表彰発明賞,2018年度SICE 論文賞・蓮沼賞,2019年度SICE著述賞,2024年度FA財団論文賞などを受賞.

受賞論文「ツイン投光差分方式を用いた厚鋼板表面検査装置」
鉄鋼プロセスにおいて,表面検査装置は製品の表面に発生する欠陥を製造ライン内で自動検出する設備であり,外観上や強度保証の観点から非常に重要な役割を持つ.しかしながら,表面の状態が比較的均一である自動車用薄鋼板と異なり,鋼管・厚鋼板などの表面検査は黒皮と呼ばれる酸化被膜の模様と欠陥の判別が難しく,自動化には至っていなかった.著者らはこの難題に対し,2方向から照射し別々に撮像した2画像の差分を取ることにより,模様をキャンセルして凹み疵計測と制御のみ強調することを可能とする新方式「ツイン投光差分方式」により解決した.本論文はこの独創的な新方式の光学現象を実験と理論の両面から明らかにし,物理的な見地から光学系の設計指針を確立したものであり,得られた指針に従い検出性能を実運用可能な要求レベルまで高めることができた.その結果,黒皮鋼材の一つである厚鋼板(建材や船舶,パイプライン用配管などの材料)を対象に実用的な表面検査装置の導入を実現し,検査自動化の達成に大きく貢献している.

(論文賞・武田賞)
○ 高次モーメントを用いた機会制約の近似による非線形確率モデル予測制御
(SICE 論文集Vol.60, No.3 で発表)
京都大学・深尾真輝 君,大塚敏之 君

ふかお まさき
深尾 真輝 君(学生会員)
2021年京都大学工学部物理工学科卒業.2023年同大学大学院情報学研究科修士課程修了.同年(株)小松製作所入社.2024年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程に入学し現在に至る.確率モデル予測制御における機会制約の計算アルゴリズムに関する研究に従事.2022年度システム制御情報学会奨励賞を受賞.

大塚 敏之 君(正会員)
(本号 p. 795 参照)

受賞論文「高次モーメントを用いた機会制約の近似による非線形確率モデル予測制御」
本論文は,初期状態やシステムパラメータに時不変の不確実性を含む非線形システムに対し,非保守的な確率モデル予測制御(SMPC)を提案する.SMPCでは,システムが満たすべき制約の成立確率についての制約(機会制約)を課すことで,制約の遵守とコスト最小化の間のトレードオフを明示的に扱うことができる.しかし,その確率を厳密に計算するには多重積分が必要となり,数値的に困難かつ非現実的である.そのため従来は,平均と分散に基づく確率不等式を用いて,機会制約を決定論的制約に置き換える手法が広く用いられてきたが,得られる制御入力は過剰に保守的となる傾向があった.本研究では,より非保守的な制御入力を得るために,高次モーメントを利用した確率不等式を導出し,それを用いて機会制約を再定式化する方法を提案する.また,高次モーメントの推定には一般化多項式カオス展開を採用し,モンテカルロ法と比較して少ないサンプル数で効率的にモーメントを推定できることを示す.さらに,半回分反応器を対象とした数値実験により,本手法が従来の平均と分散のみに基づく不等式を用いたMPCと比べ,制御性能と実行可能性の両面で優れていることを示した.

(論文賞・友田賞)
○形式概念分析と機械学習による交通事故予測手法の開発
(SICE 論文集Vol.59, No.10 で発表)
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート・小谷祥悟 君
富山県立大学・中村正樹 君,榊原一紀 君,本吉達郎 君,星川圭介 君

こたに しょうご
小谷 祥悟 君(正会員)
2022年富山県立大学大学院工学研究科博士前期課程修了.形式概念分析と機械学習による交通事故データ分析の研究に従事.電子情報通信学会会員.

なかむら まさき
中村 正樹 君(正会員)
2002年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.同研究科助手,2008 年金沢大学理工学域電子情報学類助教,2011年富山県立大学工学部情報システム工学科講師,2016年同准教授,2023年同教授を経て,2024年より富山県立大学情報工学部データサイエンス学科教授.理論計算機科学に関する研究に従事.博士(情報科学)

さかきばら かずとし
榊原 一紀 君(正会員)
2004年神戸大学院博士課程後期課程修了,同年立命館大学情報理工学部助手,2013年富山県立大学工学部情報システム工学科准教授,2023年同教授を経て,2024年より富山県立大学情報工学部データサイエンス学科教授.また2020年から2025年まで北陸電力新価値創造研究所にてクロスアポイントメント研究員を兼務.システム工学に関する研究に従事.博士(工学).

もとよし たつろう
本吉 達郎 君(正会員)
1999年京都大学工学部航空工学科卒業,三菱プレシジョン(株)入社.2002年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻修士課程入学.2008年同博士後期課程修了,京都大学大学院情報学研究科,グローバルCOE 研究員.2008–2016年富山県立大学工学部知能デザイン工学科(現 知能ロボット工学科)助教.2016–2019年同講師.2019–2023年同准教授.2024年より富山県立大学情報工学部データサイエンス学科准教授.2025年同教授.現在に至る.博士(情報学).ヒューマンインタフェース学会, 教育システム情報学会,日本教育工学会などの会員.

ほしかわ けいすけ
星川 圭介 君(正会員)
2004年京都大学大学院博士課程後期課程修了,総合地球環境学研究所,京都大学地域研究統合情報センターを経て,2014年に富山県立大学着任.2021年より教授, 現在に至る.博士(農学).専門は地理空間情報解析やリモートセンシング,都市計画,農村計画など.

受賞論文「形式概念分析と機械学習による交通事故予測手法の開発」
少子高齢化にともなう将来の交通弱者の増加に備え,死亡事故やそれにつながる重傷事故の要因を分析し,将来の交通事故を防ぐ施策が喫緊の課題である.本研究では,交通事故要因の分析およびそれに基づく事故予測を目的として,富山県警察本部から提供された交通事故データに,束論に基づくデータ分析手法である形式概念分析を適用し,富山県内で発生した交通事故の特徴的な条件や傾向を明らかにした.この分析結果を活用し,深層学習により過去の交通事故から将来の事故内容を予測する手法を構築した.予測精度の向上に向けて,形式概念分析を特徴量エンジニアリングに取り入れ,交通事故データから機械学習モデルに有効な特徴量を抽出する仕組みを設計した.さらに,構築した予測モデルに対しても形式概念分析を適用し,モデルがどのような条件でどのような事故を予測する傾向にあるかを可視化する手法を提案し,交通事故防止に向けた警察活動への応用可能性を示した.

(論文賞)
○ A Continuous-Time Primal-Dual Algorithm with Convergence Speed Guarantee Utilizing Constraint-Based Control
(SICE JCMSI Vol.17, No.1 で発表)
東京科学大学・田中大地 君,中山俊太 君
早稲田大学・和佐泰明 君,富山大学・平田研二 君
東京科学大学・畑中健志 君

たなか たいち
田中 大地 君(学生会員)
2022年早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科卒業.2024年東京工業大学工学院システム制御系修士課程修了.同年,同大学同学院博士課程入学,現在に至る.分散最適化およびそのエネルギーマネジメントへの応用に関する研究に従事.

なかやま しゅんた
中山 俊太 君(学生会員)
2023年東京工業大学工学院システム制御系卒業.2025年東京科学大学工学院システム制御系修士課程修了.同年,KPMGコンサルティング株式会社入社,現在に至る.在学時,住宅におけるエネルギーマネジメント,分散最適化に関する研究に従事.

わさ やすあき
和佐 泰明 君(正会員)
2011年東京工業大学工学部制御システム工学科卒業.2016年同大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻博士後期課程修了.2014年日本学術振興会特別研究員 DC1. 博士取得後,早稲田大学にて次席研究員,講師を経て,2024年より同大学理工学術院電気・情報生命工学科准教授,現在に至る.Cyber-Physical & Human Systems に関する理論と応用,電力市場・インセンティブ設計などの研究に従事.計測自動制御学会論文賞(2015, 2023 年),同学会制御部門パイオニア賞(2025 年)受賞.博士(工学)

ひらた けんじ
平田 研二 君(正会員)
1994年九州工業大学工学部卒業.1999年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程 修了(情報システム学専攻).同年 大阪大学大学院 工学研究科 助手.2006年長岡技術科学大学 技学研究院 准教授.2008–2009年カリフォルニア大学サンタバーバラ校 Visiting Research Scholar. 2012–2013年同Academic Research Visitor.2018年富山大学 学術研究部 工学系 教授.拘束条件を有するシステムやハイブリッドシステムの解析と制御,情報通信を利用した制御系の設計や応用などの研究に従事.

はたなか たけし
畑中 健志 君(正会員)
2007年京都大学大学院博士後期課程修了.東京工業大学助教,准教授,大阪大学准教授を経て,2024 年より東京科学大学教授となり現在に至る.Cyber-Physical-Human Systems の研究に従事.2017年SICE 制御部門木村賞,2014年同パイオニア賞,2024 年同パイオニア技術賞,2016年SICE 著述賞,2020年同武田賞,2009, 2015,2020, 2021, 2023, 2025年同論文賞,2025年ISCIE論文賞,IFAC 2023 Application Paper Prize Finalist, IFAC CPHS 2020 Best Research Paper Award などを受賞.博士(情報学).Annual Reviews in Control の副EiC,IEEE TCST のSE などを歴任.IEEE Senior Member. 著書に「Passivity-Based Control and Estimation in Networked Robotics(Springer)」など.

受賞論文「A Continuous-Time Primal-Dual Algorithm with Convergence Speed Guarantee Utilizing Constraint-Based Control」
本論文では, 最適化問題に対して収束速度を明示的に制御可能な連続時間アルゴリズムを提案する.従来の分散最適化手法では誤差の収束次数によって収束速度が評価され,個別の問題に対して収束速度を直接指定することは困難であった.また,代表的な分散最適化手法である主双対勾配法では,最適解への漸近的な収束は保証されるものの,特別な場合を除いて収束速度は未知であった.特に,設計者が収束速度を具体的に指定することは困難である.この問題を克服するため,本論文では主双対勾配法に制約駆動制御の概念を導入し,双対関数の増加速度に関する制約条件を満足するように双対変数を更新することで,所望の収束速度を保証する手法を提案する.さらに,本手法が分散最適化の性質を保持していることを示す.これにより,大規模問題においても個別の状況に依存せず統合的に収束速度を指定することが可能となる.最後に,提案手法の有効性を数値例で検証し,所望の収束速度を達成できることを確認する.

(論文賞)
○ 振動の乱雑さに対応する極値探索制御による振動発電システムの効率化」
(SICE 論文集Vol.59, No.1 で発表)
金沢大学・山本 茂 君

やまもと しげる
山本 茂 君(正会員,フェロー)
1989年大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了,同年,大阪大学工学部助手,同大学基礎工学部助手,同大学院基礎工学研究科助手,講師,助教授を経て,2007年より金沢大学大学院自然科学研究科教授,2008年同大学理工研究域教授,2022年8月より同大学融合研究域融合科学系教授,現在に至る.博士(工学).制御理論とその応用の研究に従事.IEEEなどの会員.

受賞論文「振動の乱雑さに対応する極値探索制御による振動発電システムの効率化」
環境振動を利用した振動発電は,無線センサなどの持続可能な自立電源として注目されている.本研究では,高効率な磁歪式振動発電デバイスに可変キャパシタを組み込み,その容量を矩形波極値探索制御により自動調整する手法を提案した.これにより,デバイスの共振周波数を環境振動に追従させて発電効率を最大化できる.まず,理想的な減衰振動による間欠的加振に対して,本手法により発電効率が向上することを実機実験で確認した.さらに,振動に乱雑性が存在しても,加振振動の最大振幅と周波数の確率分布が変動しない条件のもとで,矩形波極値探索制御のサンプル周期を十分に長く設定することで乱雑性の影響を抑制し,発電効率を向上できることを実証した.

(論文賞)
○経路選択時の経験情報による影響を考慮した群集挙動モデル
(SICE 論文集Vol.59, No.12 で発表)
株式会社ソニーセミコンダクタソリューションズ・村沢直哉 君
東京都立大学・児島 晃 君

むらさわ なおや
村沢 直哉 君(正会員)
2023年東京都立大学大学院システムデザイン研究科博士前期課程修了.同年,ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社入社,現在に至る.在学時には,ハイブリッドシステム表現を用いた群集挙動のモデリングに関する研究に従事.

こじま あきら
児島 晃 君(正会員)
1991年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.同年,東京都立科学技術大学講師,1997年同助教授,2005年より首都大学東京(現,東京都立大学)教授.2000–2001年,スイス連邦工科大学(ETH)自動制御研究所客員研究員.予測制御,ロバスト制御,むだ時間系・分布系の制御法とその応用に関する研究に従事.工学博士.Automatica,IET J. Control Theory and Applications 等のAssociateEditor を担当.IEEE, システム制御情報学会,電気学会の会員.

受賞論文「経路選択時の経験情報による影響を考慮した群集挙動モデル」
人間の行動特徴を把握し群集挙動を予測することは,歩行空間の安全性や快適性を評価する上で重要な指針を与える.しかしながら,その行動は多様であり,特に平常時の解析には主観的な判断を考慮したモデルの検討が重要になる.本論文では,不確かな経験情報から経路選択を行う群集挙動モデルを構築し,ハイブリッドシステム表現とモデル予測制御により,歩行行動を模擬する数理モデルを導いた.そして,歩行者の挙動を経路
選択のシミュレーションにより検証し,1)バイアスの影響により流量変化が持続する傾向があること,2)経路の容量と経験情報を反映させた均衡状態が把握できる可能性があること,を明らかにした.またこれらの結果から,歩行者のもつ参照点の移動が効果的な誘導に援用できることなどその展望を示した.

(論文賞)
○「 最大電力点まわりでシリコン太陽電池と近い過渡特性をもつペロブスカイト太陽電池モジュールの提案」
(SICE 論文集Vol.60, No.7 で発表)
電気通信大学・定本知徳 君,日本ハネウェル合同株式会社・下島大和 君

さだもと とものり
定本 知徳 君(正会員)
2011年東京工業大学理工学研究科機械制御システム専攻修士課程卒業,同年住友重機械工業(株)入社,2013 年東京工業大学情報環境学専攻博士課程に進学,2015年同研究科博士課程修了.その後1年間のスウェーデン王立工科大学客員研究員やCREST研究員,東京工業大学システム制御系の特任助教などを経て2018年11月より電気通信大学大学院機械知能システム学専攻の助教,2023年11月より同准教授となり, 現在に至る.2014年European Control Conference Best Student Paper Award Finalist, 2020年IEEE Control Systems Magazin e Outstanding Paper Award などを受賞.

しもじま やまと
島 大和 君(正会員)
2022年3月に電気通信大学情報理工学域II 類計測・制御システムプログラム卒業,同年より同大学大学院機械知能システム学専攻に所属.2025年3月に同専攻修了し,同年,日本ハネウェル(株)に入社し現在に至る.

受賞論文「最大電力点まわりでシリコン太陽電池と近い過渡特性をもつペロブスカイト太陽電池モジュールの提案」
ペロブスカイト太陽電池(PSC)は薄型・軽量で曲面への設置にも適しているという大きな利点があることに加え,広く用いられているシリコン太陽電池(SSC)に匹敵する高い変換効率も有することから近年急速に注目を集めている.一方で,PSCは過渡的な電流- 電圧特性に“ヒステリシス” があることが知られており,このために変換効率が変動しやすいという問題のあることがしられている.本研究では,PSCの物理的利点を維持しつつも最大電力点(MPP)周辺の過渡特性がSSC に類似するような新しい電池モジュールを提案する.このモジュールはPSC とモデルマッチング制御器から構成されており,定常状態の電流- 電圧特性を変えずにMPP 周辺の過渡特性のみを制御するものである.“ ヒステリシス” 特性はPSCの製造プロセスに依存して変動する可能性があるため,グレーボックスモデルを介して運転データのみから制御器を設計する手法をとる.提案する電池モジュールの有用性は,PSCの等価回路モデルを用いた数値シミュレーションにより検証している.

(論文賞)
○ Reactive-Probabilistic Hybrid Search Method for Odour Source Localization in an Obstructed Environment
(SICE JCMSI Vol.17, No.1 で発表)
東京科学大学・ルオン ドゥック ニャット 君,チャン ヒュウ クオック ドン 君,倉林大輔 君

Duc-Nhat LUONG (Student Member)
He received his B.Eng. in Mechatronics Engineering from Hanoi University of Science and Technology, Vietnam, in 2019,and his M.Eng. and Ph.D. in Systems and Control Engineering from the Institute of Science Tokyo, Japan, in 2022 and 2025, focusing on bio-inspired robotics and motion planning. He is currently with the Open Source & InnerSource Program Office at Mitsubishi Electric.

Huu Quoc Dong TRAN (Student Member)
He received a B.Eng. in Robotics Engineering from VNU University of Engineering and Technology Hanoi,Vietnam in 2022, and M.Eng. in Systems and Control Engineering from Institute of Science Tokyo, Japan, in 2025. He is focusing on motion planning algorithms.

Daisuke KURABAYASHI (Member)
He received the B.Eng., M.Eng., and Ph.D. degrees in precision mechanical engineering from the University of Tokyo,Tokyo, Japan, in 1993, 1995, and 1998,respectively. He worked with the Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Saitama, Japan, as a Post-Doctoral Researcher from 1998 to 2001.Since 2001, he has been with the Tokyo Institute of Technology, Tokyo. He is currently a Professor with the Department of Systems and Control Engineering and the Associate Dean of the School of Engineering, Institute of Science Tokyo. His research interests include bio-inspired robotics, distributed autonomous systems, and motion planning algorithms.

受賞論文「Reactive-Probabilistic Hybrid Search Method for Odour Source Localization in an Obstructed Environment」
In odour source localization, the probabilistic inference method effectively manages to find odour plumes, both at the start and during the middle of the search. However, the reactive method is more adept at tracking the odour plumes.Combining two search methods could yield a comprehensive algorithm for odour source detection, particularly effective in obstructed environments where the concurrent tasks of finding and tracking the source are performed interchangeably. In this study, we aim to achieve a balance between the exploration of the probabilistic method and the exploitation of the reactive method by alternating between the two. A switching coefficient is calculated based on burstiness, which measures the periodic characteristics of gas detection. This coefficient determines whether the search agent is within the primary plume flow or outside of it. Based on the determination, the agent decides its next course of action using the probabilistic inference method or the reactive method. We verify and evaluate the proposed method with an autonomous mobile robot in an obstructed indoor environment. Having achieved nearly 10% in distance travelled reduction and more than a 30% decrease in average search time compared to a previously studied Infotaxis–Dijkstra switching algorithm, we can confidently assert the efficiency of the proposed method.

(論文賞)
○「 Secure Motion-Copying via Homomorphic Encryption」
(SICE JCMSI Vol.17, No.1 で発表)
三菱電機(株)・髙梨晴己 君,パデュー大学・寺西 郁 君
電気通信大学・小木曽公尚 君

たかなし はるき
髙梨 晴己 君(正会員)
2022年電気通信大学情報理工学域II類卒業.2024年電気通信大学大学院情報理工学研究科修了.同年,三菱電機株式会社に入社,現在に至る.在学中,遠隔操作システムの暗号化制御に関する研究に従事.

てらにし かおる
寺西 郁 君(準会員)
2024年電気通信大学大学院情報理工学研究科博士後期課程修了.同年より日本学術振興会海外特別研究員,現在に至る.この間,2024年6月から12月までの間,The University of Texas at Austin 客員研究員.2025年1 月から現在まで,Purdue University 客員研究員.博士(工学).主として準同型暗号やマルチパーティ計算を用いた暗号化制御に関する研究に従事.2022年度SICE 論文賞,SICE International Young Authors Award 2023, IEEE CSS Japan Young Researcher Award 2023などを受賞.システム制御情報学会,IEEEの会員.

こぎそ きみなお
小木曽 公尚 君(正会員)
2004年大阪大学大学院工学研究科電子制御機械工学専攻博士後期課程修了.同年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科21世紀COE 研究員,2005年同研究科助手,助教を経て,2010~2011年米国ジョージア工科大学客員研究員,2014年電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授,2023年より同研究科教授,現在に至る.博士(工学).暗号化制御,拘束系や意思決定の制御に関する研究に従事.2005年度システム制御情報学会奨励賞,SICE Annual Conference International Award 2025 Finalist , Best Paper Award Nomination of IEEE MFI ’06, 2022年度計測自動制御学会論文賞を受賞.

受賞論文「Secure Motion-Copying via Homomorphic Encryption」
本論文は,準同型暗号を用いて操作者の動作を安全に保存・編集・再現する暗号化モーションコピーシステムを提案している.提案システムは,従来の暗号化4 チャンネルバイラテラル制御を基盤に,リーダ側ロボットアームを介して操作者の動作を暗号化したままメモリに保存する.フォロワ側は,メモリから暗号化されたモーションデータを読み込み,操作者の動作を再現する.また,準同型演算により復号を行わずに保存されたモーションデータを直接編集でき,操作の位置情報や力情報の拡大・縮小が可能である.本論文では,自由動作,物体接触,空間スケーリングの3つの実験を通じて,提案システムが暗号化した状態で動作保存・再現・編集できることを確認した.本成果は,熟練の技術者の技能伝承など機密性の高い動作データの安全な利用を可能にし,遠隔操作や産業分野におけるサイバーセキュリティ強化に寄与する.

(論文賞)
○ 高精度時刻同期と経路冗長化を実時間で両立する EtherCAT通信制御手法の提案と実機評価
(SICE 論文集 Vol.59, No.12 で発表)
(株)日立製作所・丸山龍也 君

まるやま たつや
丸山 龍也 君(正会員)
2005年慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻修士課程修了.同年より(株)日立製作所日立研究所に勤務.制御用ネットワーク,組込みシステムのハードウェア及びソフトウェアの研究開発に従事.技術士(情報工学部門).IEEE, 情報処理学会会員.

受賞論文「高精度時刻同期と経路冗長化を実時間で両立するEtherCAT 通信制御手法の提案と実機評価」
本論文では,産業用Ethernet のEtherCAT 規格において,産業オートメーションにて求められる高精度時刻同期と,経路冗長化による耐故障性を両立する通信制御手法を提案している.EtherCATでは時刻基準となる被制御装置の時刻を残りの被制御装置に配信することで同期するが,経路冗長化した構成であっても経路異常時は時刻基準装置と分断された被制御装置に基準時刻が共有されず,同期できない.提案手法では,EtherCATにおける経路異常時の被制御装置の通信フレームの転送や論理アドレス空間といった特徴を前提に,制御装置における経路異常の発生検知,通信フレームの転送制御,基準時刻の補正処理,論理アドレス空間への補正値の分散記憶といった方法を示し,経路異常時であっても被制御装置数や経路異常の発生箇所に依存せず,過渡的な精度低下なく同期を維持することを特徴とする.提案手法を制御装置のFPGAに実装し,複数の被制御装置を用いた実機評価の結果,本方式の有効性を確認した.

[技術賞]4件
(技術賞)
○「 No-Latency Interleaved Delta-Sigma ADC for Multiple-Sensor Interfacing Circuits」
(SICE FES 2024 で発表)
アズビル(株)・手島紘明 君,加藤太一郎 君,梶田徹矢 君

てしま ひろあき
手島 紘明
2011年慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻前期博士課程修了,同年株式会社山武(現アズビル株式会社)入社.現在に至る.集積回路設計業務に従事.

かとう たいちろう
加藤 太一郎
1999年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻前期博士課程修了,同年株式会社山武(現アズビル株式会社)入社.現在に至る.集積回路設計業務に従事.

かじた てつや
梶田 徹矢  君(正会員)
1990年3月早稲田大学大学院理工学専攻修士課程修了.同年 山武ハネウエル(株)[現:アズビル(株)]入社.2018年から4年間,アズビル北米R&D 株式会社社長.2023年4月アズビル(株)執行役員.現在に至る.アナログ集積回路設計ならびに研究開発業務に従事.計測自動制御学会,IEEE 正会員.

受賞論文「No-Latency Interleaved Delta-Sigma ADC for Multiple-Sensor Interfacing Circuits」
複数センサに適したA/D 変換器として,インターリーブ型ΔΣA/D 変換器を提案し,回路の試作,評価にて機能を実証した.従来のΔΣA/D 変換器で問題となる入力チャネル切り替え時の遅延を,アナログメモリを用いた構造により解消し,複数チャネル並列でのA/D 変換を低消費電力・小面積で実現した.

(技術賞)
○「 画像照合航法技術と高精度誘導制御技術によるSLIMピンポイント月面着陸の実現」
( The 75th International Astronautical Congress( IAC),他で発表)
宇宙航空研究開発機構・坂井真一郎 君,澤井秀次郎 君,福田盛介 君,植田聡史 君,
伊藤琢博 君,横田健太朗 君,石田貴行 君,狩谷和季 君,上野誠也 君
横浜国立大学・樋口丈浩 君, 明治大学・鎌田弘之 君, 東京大学・髙玉圭樹 君
東京都立大学・小島広久 君

さかい しんいちろう
井 真一郎
東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了(2000年).日本学術振興会特別研究員を経て2001年に宇宙科学研究所に助手として採用後,科学衛星の姿勢制御系開発に従事.併せて人工衛星の姿勢制御,電磁気フォーメーションフライト,探査機の着陸航法誘導制御等の研究に従事.2005年11月から准教授,2019年4月から教授.2016年4月から2024年12月まで,SLIMプロジェクトマネージャーを併任.総合研究大学院大学教授,東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻客員教授を併任.

さわい しゅうじろう
澤井 秀次郎 君(正会員)
1994年3月東京大学大学院工学研究科博士課程修了.工学博士.1994年4月文部省宇宙科学研究所助手.1999 年9月から1年間,ミシガン大学工学部宇宙工学客員研究員を併任.2003年10月宇宙航空研究開発機構発足に伴い,同機構主任研究員.2018年1月より宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所教授.同年4月より静岡大学客員教授,総合研究大学院大学教授を併任,現在に至る.宇宙機システム設計などに従事.現在,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所副所長,宇宙科学プログラムディレクタを併任.57期(2025年度)一般社団法人日本航空宇宙学会会長.

ふくだ せいすけ
福田 盛介
2000年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了.同年宇宙科学研究所助手.現在,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所教授.東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻教授(兼担).博士(工学).科学衛星・探査機システムの開発や,レーダ信号・画像処理の研究に従事.米国電気電子学会,電子情報通信学会,日本航空宇宙学会,日本神経回路学会各会員.

うえだ さとし
植田 聡史  君(正会員)
2002年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了.同年宇宙開発事業団入社.宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の航法誘導制御系の開発,運用に従事.欧州宇宙機関(ESA)訪問研究員を経て,現在,宇宙航空研究開発機構研究開発部門研究領域主幹.小型月着陸実証機SLIM の航法誘導制御系の研究開発および深宇宙探査ミッションのための航法誘導制御技術の研究に従事.専門は,制御工学,飛行力学,システム最適化.日本航空宇宙学会,米国宇宙航行学会所属.

いとう たかひろ
伊藤 琢博
2014年4月宇宙航空研究開発機構入社.超小型深宇宙探査機PROCYON,超小型衛星打上機SS-520-5,小型月着陸実証機SLIM 等の研究開発に従事.専門は宇宙機の誘導航法制御・宇宙航行力学.2021年9月東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程修了.博士(科学).2022年12月同機構宇宙科学研究所助教.米国航空宇宙学会,日本航空宇宙学会会員.

よこた けんたろう
横田 健太朗
2022年東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻修士課程修了.同年宇宙航空研究開発機構入構.現在,同研究開発部門研究開発員.小型月着陸実証機SLIMや水星磁気圏探査機MMOなど,宇宙機の航法誘導制御系の研究開発・運用に従事.専門は,制御工学,モーションコントロール.日本航空宇宙学会,米国航空宇宙学会,米国電気電子学会所属.

いしだ たかゆき
石田 貴行
2015年慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修士課程修了.同年国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構入社,現在に至る.地形照合航法の研究や小型月着陸実証機SLIMの開発・運用に従事.日本航空宇宙学会所属.

かりや かずき
狩谷 和季
2020年総合研究大学院大学博士課程修了.同年(国研)宇宙航空研究開発機構入社.以来,国際宇宙探査に係る月・火星探査機のシステムおよび要素技術の研究開発に従事.現在,同社研究開発員.専門は,宇宙機システム,画像処理,データ処理.日本航空宇宙学会,電子情報通信学会,日本神経回路学会に所属.博士(工学).

うえの せいや
上野 誠也 君(正会員)
1985年3月東京大学大学院工学系研究科航空学専門課程博士課程修了.工学博士.(株)東芝宇宙開発部問勤務を経て,1988年8月横浜国立大学工学部助教授に採用.2023年3月定年退職後は宇宙航空研究開発機構航空技術部門主幹研究開発員や大学非常勤講師等に従事.航空宇宙工学における誘導制御に関する研究に従事.日本航空宇宙学会においては第46期会長,名誉会員.

ひぐち たけひろ
樋口 丈浩 君(正会員)
2005年横浜国立大学大学院博士後期課程修了.博士(工学).山口大学工学部助手.横浜国立大学助教を経て,2014年より横浜国立大学環境情報研究院准教授.現在に至る.航空宇宙機の誘導制御,群制御などの研究に従事.

かまdた ひろゆき
鎌田 弘之
1982年3月明治大学工学部電子通信工学科卒.1987年3月明治大学大学院工学研究科電気工学専攻博士後期課程修了.工学博士.同年10月明治大学工学部助手,専任講師,助教授を経て2000年10月理工学部教授.現在に至る.ディジタル信号処理による音声,画像処理,暗号等に関する研究に従事.

たかだま けいき
髙玉 圭樹 君(正会員)
1998年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).同年,国際電気通信基礎技術研究所(ATR)入所.2002年東京工業大学講師,2006年電気通信大学助教授,2007年准教授,2011年教授をて,2024年東京大学 教授,現在に至る.2018年GECCO のGeneral Chairを拝命.進化計算,強化学習,マルチエージェントシステムに関する基礎研究と応用研究(宇宙,交通,ヘルスケア)に従事.

こじま ひろひさ
小島 広久 君(正会員)
1994年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了,トヨタ自動車入社,1999年東京都立科学技術大学 講師,2003年助教授,2006年首都大学東京准教授,2009年教授を経て,2020年より東京都立大学大学院 教授.宇宙機の姿勢制御関連の教育研究に従事.博士(工学)(東京大学大学院航空宇宙工学専攻).

受賞論文「画像照合航法技術と高精度誘導制御技術によるSLIM ピンポイント月面着陸の実現」
SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所が開発した小型月着陸実証機である.SLIMは2024年1月20日に月面への軟着陸に成功した.その着陸精度が10m程度と評価されたことから,世界初のピンポイント月面着陸を達成したことが確認された.月惑星の科学探査,月面における人類の活動の両面において,ピンポイント着陸のための自律的かつ高精度な航法技術および誘導制御技術は必須であり,SLIMにより新たなパラダイムを開いた.

(技術賞)
○「ツイン投光差分方式を用いた厚鋼板表面検査装置」
(SICE 論文集,他で発表)
JFEスチール株式会社・大野紘明 君,小川晃弘 君,楯 真沙美 君,飯島慶次 君,飯塚幸理 君
JFE テクノリサーチ株式会社・大重貴彦 君, 元JFE スチール株式会社・山崎孝博 君

おおの ひろあき
大野 紘明 君(正会員)
(本号 p.796 参照)

おがわ あきひろ
小川 晃弘
2009年名古屋大学大学院工学系研究科マテリアル理工学専攻修士課程修了.同年JFE スチール(株)入社,現在に至る.主に鋼管の製造プロセス開発・導入および製造管理に従事.2020年機械振興賞などを受賞.

たて まさみ
楯 真沙美 君(正会員)
(本号 p.796 参照)

いいじま よしつぐ
飯島 慶次 君(正会員)
(本号 p.796 参照)

いいづか ゆきのり
飯塚 幸理 君(正会員)
1989年東京都立大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年日本鋼管(現JFE スチール)株式会社入社,現在に至る.鉄鋼プロセスにおける非破壊検査技術をはじめとする計測技術の研究開発,DX関連技術の研究開発推進に従事.1997年工学博士.2016年大河内記念技術賞,2017年全国発明表彰,2025年機械振興賞などを受賞.

おおしげ たかひこ
大重 貴彦 君(正会員)
(本号 p. 796 参照)

やまさき たかひろ
山崎 孝博
1983年早稲田大学理工学部電気工学科卒業.同年川崎製鉄株式会社(現JFEスチール株式会社)入社.2024年退職.在職中は,制御エンジニアとして,鉄鋼生産設備,研究開発設備の建設,設備管理業務に従事.2020 年機械振興賞などを受賞.

受賞論文「ツイン投光差分方式を用いた厚鋼板表面検査装置」
鉄鋼プロセスにおいて,表面検査装置は製品の表面に発生する欠陥を製造ライン内で自動検出する設備であり,外観上や強度保証の観点から非常に重要な役割を持つ.しかしながら,表面の状態が比較的均一である自動車用薄鋼板と異なり,鋼管・厚鋼板などの表面検査は黒皮と呼ばれる酸化被膜の模様と欠陥の判別が難しく,自動化には至っていなかった.「ツイン投光差分方式」は上記難題に対するブレイクスルーであり,2方向から照射し別々に撮像した2画像の差分を取ることにより,模様をキャンセルして凹み疵のみ強調することを可能とする.このシンプルかつ汎用的な原理で黒皮模様の影響をキャンセルし凹凸欠陥のみ精度よく検出することが可能となる.本技術を用いて黒皮鋼材の一つである厚鋼板(建材や船舶,パイプライン用配管などの材料)を対象とした表面検査装置を開発し,今まで目視に依存していた表面検査の自動化を達成した.

(技術賞)
○「 機械学習と最適化のハイブリッド手法を用いた最適操業条件の設計法」
(第67 回自動制御連合講演会,他で発表)
日鉄テックスエンジ株式会社・内野邦望 君,稲富峰憲 君,
古川昭仁 君,黒川哲明 君,中川繁政 君, 近畿大学・福山歩武 君,谷崎隆士 君

うちの くにみ
内野 邦望  君
2017年大分大学大学院工学研究科知能情報システム工学専攻修士課程修了.同年日鉄住金テックスエンジ株式会社(現,日鉄テックスエンジ株式会社)に入社.現在に至る.入社以来,プロセスコンピュータシステム,データ解析等の開発業務に従事.

くろかわ てつあき
黒川 哲明 君(正会員)
1985年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年新日本製鉄(株)(現,日本製鉄株))に入社,2019年日本製鉄(株)を定年退職,2020年日鉄テックスエンジ(株)へ入社,現在に至る.主に電気計装システム分野の制御システム及び数理最適化システムのエンジニアリング業務・開発業務に従事.2021 年 早稲田大学大学院情報生産システム研究科博士後期課程修了.博士(工学).日本鉄鋼協会,システム制御情報学会, スケジューリング学会の会員.

なかがわ しげまさ
中川 繁政 君(正会員)
1987年京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修士課程修了.同年住友金属工業(株)(現,日本製鉄(株))に入社,2019年日鉄テックスエンジ(株)へ移籍,現在に至る.電気計装システム分野の開発企画に従事.2011年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学).2012年日本鉄鋼協会学術記念賞(白石記念賞),2013年科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門),2013年日本塑性加工学会学会大賞を受賞.計測自動制御学会フェロー,日本鉄鋼協会,日本塑性加工学会,システム制御情報学会の会員.

ふくやま あゆむ
福山 歩武
2025年近畿大学大学院システム工学研究科システム工学専攻博士前期課程修了.同年東洋製罐グループホールディングス株式会社に入社.現在に至る.入社以来,データを活用した製造現場の業務効率化等の製造DX業務に従事.

たにざき たかし
谷崎 隆士
1984年京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修士課程修了.同年住友金属工業(株)(現,日本製鉄(株))に入社,2009年近畿大学教授,現在に至る.組合せ最適化および機械学習の応用研究および技術開発に従事.2005 年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻博士後期課程修了.博士(情報学).2007年日本鉄鋼協会 計測・制御・システム研究賞,2007年スケジューリング学会学会賞(技術賞),2008年計測自動制御学会学会賞(技術賞),2024年日本鉄鋼協会 計測・制御・システム研究賞を受賞.日本オペレーションズ・リサーチ学会フェロー,スケジューリング学会,日本経営工学会,日本経営システム学会 他の会員.

受賞論文「機械学習と最適化のハイブリッド手法を用いた最適操業条件の設計法」
製造工程における操業品質データをもとに,GBDTを用いて操業条件と製品品質との関係性を示す複数の決定木から1つに統合された決定木を構築し,望ましい操業条件を統合決定木の最適経路として求める0-1整数計画問題を定式化.製品品質が安定的に基準範囲内に入るように,操業条件の設定値計算に際して操業条件の解集合の重心をもとに設定値計算を行う独自の工夫を導入した.開発手法が高精度な操業運転実現に有効であることを計算機実験にて確認した.

[著述賞] 3件
(著述賞)
○「不整地移動ロボティクス」(2023年・コロナ社)
永谷圭司 君(編著)
石上玄也 君,遠藤大輔 君,永岡健司 君,遠藤 玄 君,
程島竜一 君,亀川哲志 君,田中基康 君(共著)

ながたに けいじ
永谷 圭司 君(正会員)
1997年筑波大学大学院博士課程修了.博士(工学).カーネギーメロン大学ポスドク,岡山大学講師,東北大学准教授,東京大学特任教授を経て,現在,筑波大学 システム情報系教授.SIP「スマートインフラマネジメントの構築」のサブ課題A 研究開発責任者.フィールドロボティクスの研究に従事.日本ロボット学会,日本機械学会,土木学会,IEEE 等の会員.

いしがみ げんや
石上 玄也 君(正会員)
2008年東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻修了,博士(工学).同年よりMIT Postdoctoral Associate,2010年よりJAXA 宇宙科学研究所プロジェクト研究員.2013年より慶應義塾大学理工学部専任講師,同准教授を経て,同教授となり,現在に至る.IEEE/RAS Co-chairs for the technical committee for space robotics,国土交通省宇宙建設革新会議議長など.宇宙探査をはじめとしたフィールドロボティクスを主専門分野とし,テラメカニクスや自律移動制御などの研究開発を進める.日本ロボット学会,日本機械学会,日本航空宇宙学会,IEEE 等の会員.

えんどう だいすけ
遠藤 大輔
2017年東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).株式会社デンソー,日本学術振興会特別研究員(DC2),株式会社不二越を経て,現在,国立研究開発法人土木研究所技術推進本部先端技術チーム主任研究員.クローラ型ロボットの自己位置推定と動作制御,移動マニピュレータ,建設ロボットの研究に従事.現職では建設機械の自動化を促進するためのオープンな研究開発プラットフォームの整備に取り組む.日本ロボット学会,土木学会,IEEE 等の会員.

ながおか けんじ
永岡 健司 君(正会員)
2011年総合研究大学院大学5 年一貫博士課程修了.博士(工学).東北大学大学院工学研究科助教,九州工業大学大学院工学研究院准教授を経て,現在,九州工業大学大学院工学研究院教授.宇宙ロボティクスを専門とし,地球周回軌道上サービスから月惑星探査まで,宇宙ロボット技術に関する研究開発に従事.日本ロボット学会,日本機械学会,IEEE,ISTVS の会員.

えんどう げん
遠藤 玄 君(正会員)
2000年東京工業大学理工学研究科機械物理工学専攻博士課程修了.博士(工学).2000年ソニー株式会社リサーチャー,2002年国際電気通信基礎技術研究所(ATR)客員研究員,2007年東京工業大学SMS創造開発センター 特任助教/産学官連携研究員,2008年東京工業大学 助教,2014年東京医科歯科大学 准教授,2015年東京工業大学 准教授,2021年東京工業大学 教授,2024年東京科学大学(統合による名称変更)教授,現在に至る.ロボットの機構設計に興味を持つ.日本ロボット学会,日本機械学会,計測自動制御学会,IEEE Robotics and Automation Society の会員.

ほどしま りゅういち
程島 竜一 君(正会員)
2006年東京工業大学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻博士課程修了,博士(工学).同年より東京工業大学21世紀COE 研究員,2008年より東京工業大学産学官連携研究員,2009年より総務省消防庁消防大学校消防研究センター研究官を経て,2010年より埼玉大学大学院理工学研究科助教,2017年より同准教授となり,現在に至る.脚型ロボットをはじめとした移動ロボットを主な専門分野とし,ロボットの機構設計や運動制御などの研究に従事.日本ロボット学会,日本機械学会等の会員.

かめかわ てつし
亀川 哲志 君(正会員)
2004年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了.博士(工学).同年,NPO国際レスキューシステム研究機構研究員を経て,2006年より岡山大学大学院自然科学研究科助手,2007年同助教,2008 年同講師,2020年より岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科准教授,2024年より岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域教授となり,現在に至る.この間,2004年ローマ大学客員研究員,2012年カーネギーメロン大学客員研究員.ヘビ型ロボット,レスキューロボット,医療ロボットの研究開発に従事.日本機械学会,日本ロボット学会,日本コンピュータ外科学会の会員.

たなか もとやす
田中 基康 君(正会員)
2009年電気通信大学大学院電気通信学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
同年キヤノン株式会社に勤務.2012年電気通信大学大学院情報理工学研究科助教,2017年准教授を経て,2020 年より電気通信大学大学院情報理工学研究科教授.主にヘビ型ロボットの研究に従事.

受賞図書「不整地移動ロボティクス」
本書は,不整地移動ロボットの移動機構や制御について体系的に解説したテキストである.対象読者は,本分野の専門知識を習得しようとする学生,研究者,および企業の技術者である.不整地移動機構の研究は,ロボット研究の黎明期から継続的に進められてきたが,これを体系的にまとめたテキストはこれまで存在しなかった.そこで本書では,編著者と,現在第一線で活躍する若手研究者7名が協力し,車輪型,クローラ型,脚型,ヘビ型といった多様な不整地移動ロボットについて,ハードウェア,運動制御,動作計画などを整理した.また,各章や節の末尾にはコラムを設け,ロボット開発において直面する課題や,実践に役立つヒントとなるトピックを紹介した.これらもぜひ注目されたい.
本書には,著者らの「駆け出しの頃にこんな本があれば良かった」という思いが込められている.不整地移動機構の研究開発に携わる読者にとって,有益な一助となることを願うものである.

(著述賞)
○「多変数の制御・解析・最適化に使える行列論」(2022年・コロナ社)
浅井 徹 君(著)

あさい とおる
浅井 徹 君(正会員)
1996年東京工業大学大学院理工学研究科制御工学専攻修了.同年日本学術振興会特別研究員.1999年大阪大学大学院工学研究科助手,2002年同研究科講師,2005年同研究科助教授,2007年同研究科准教授,2015年名古屋大学大学院工学研究科准教授,2024年中部大学工学部教授となり,現在に至る.モデルベース制御,ロバスト制御,制御工学教育などの研究に従事.IEEE,システム制御情報学会,鉄鋼協会などの会員.博士(工学).

受賞図書「多変数の制御・解析・最適化に使える行列論」
多変量解析,最適化,システム制御などの多変数を扱う分野では行列を用いて問題解決を考えることが多い.行列に基づいて問題を解決できるためには,2 次形式や特異値分解などを理解しているだけではなく,目前の問題を行列で解決できそうだとイメージできることが重要である.
このような理解に到達するには大学初年度の線形代数だけでは質・量ともに不十分である.しかしながら,多くの学習者にとって必要な知識を独力で,かつ効率的に学習することは極めて困難である.上級者による支援によって効率的な学習が可能になる場合もあるが,このような支援をいつでも,どこでも得られるとは限らない.特に社会人技術者の場合は周囲に勉強を補助してくれる人がいない,勉強に割ける時間が厳しく制限されているなど,状況は大学の学生よりも悪い場合が多い.
筆者の経験から,学習が非効率になる主な原因は以下の2点にあると思われる.1)個々の知識の必要性を理解するための背景や動機の説明,結果の意味の説明が不足している.2)教科書で説明される順序が必ずしも学習者にとって必要性を感じる順序や理解しやすい順序ではない.そこで本書では,まず解決したい問題や解消したい疑問を示し,その上で問題の本質を理解するための議論を進める,という順序で必要な知識を示すこととした.また,行列の知識を得ることで問題解決能力が高まることを実感しやすくするように,内容を中級的かつ実用上重要なものに絞ることとした.こうした構成にすることにより,上級者による支援が無くても行列の高度な知識を独力で理解することが容易となった.

(著述賞)
○「 センサ技術の基礎と応用(計測・制御セレクションシリーズ6)」(2023 年・コロナ社)
計測自動制御学会,次世代センサ協議会(編)

こばやし あきら
小林 彬 君(永年会員)
1969年に東京工業大学博士課程修了後,1987年より同大学教授,2001年から保険管理センター所長を務,2005年に定年退職.以後,大学評価学位授与機構客員教授,帝京平成大学教授(2005年~2012年)として教育・研究に従事.計測自動制御学会論文賞を1973年~2005年に4度受賞,フェロー認定.日本ファジィ学会著述賞,東京都科学技術振興功労者賞(2003年),経済産業省局長表彰(2011年)など多数受賞.本会理事・各種委員,日本学術会議委員長,次世代センサ協議会会長(2015年~)などを歴任.

おおき しんいち
大木 眞一 君(正会員)
1976年早稲田大学大学院・理工学研究科 制御工学専攻・修士課程修了.同年横河電機製作所(現 横河電機株式会社)入社,流量計測技術業務に従事.2015年退職以来,日本工業大学 特別研究員,2022年早稲田大学・理工学術院 招聘研究員,エンジニアリング協会・技術部 主席研究員,CCS 研究に従事.現在に至る.

受賞図書「センサ技術の基礎と応用(計測・制御セレクションシリーズ6)」
センサおよび計測技術は,あらゆる製品開発分野で必須となる基盤技術であり,技術者として活用することが必要である.IoT,DXなど技術の進歩が加速している現状で,センシング技術の応用範囲が一層広がりつつある.一方,計測する対象は温度,圧力,密度,流量など多様な領域であり,それぞれセンサ固有技術の組合せや使い分けが必要である.このような状況で,一般技術者としてセンサ技術の基礎・原理および活用方法を理解して活用することが求められている.この書籍は,各分野のセンサ技術の専門家が分担して基礎編および主な最新技術の応用編を専門書として編集・出版した.技術者向けの教科書として普及されることを期待している.

[新製品開発賞] 3件
(新製品開発賞)
受賞製品「サファイア隔膜真空計 形V8」
アズビル株式会社 殿
半導体製造プロセスは日々進化しており,真空環境を保つために不可欠な真空計にも耐デポ性の向上,高温環境への対応,さらには高速な応答性が求められている.それらのニーズに対応するため,従来のサファイア真空計(形SPG)を大幅に進化させた新型隔膜真空計「形V8」を開発した.
MEMS 加工技術を駆使した独自構造により,プロセス副生成物のダイアフラムへの堆積(デポ)による特性悪化を大幅に抑制し,安定した高精度計測を実現.さらに,ゲージヘッドとコントロールユニットを分離した構造により,250℃までの高温ガスの計測が可能となった.加えて,計測回路技術の革新により,1msの高速応答を実現し,次世代半導体プロセス(ALDやALE など)にも対応している.
注)デポ:デポジションの略語で堆積の意味があり,半導体製造工程では薄膜を生成する成膜工程を指す
注)MEMS:Micro Electro Mechanical Systems の略
注)ALD:原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)
注)ALE:原子層エッチング(ALE:Atomic Layer Etching)

受賞製品「ソフトセンサ構築/ 演算ツール EFPROSENS(エフプロセンス)」
富士電機株式会社 殿
ソフトセンサとは,リアルタイムで測定することが難しい物理量を,それと相関のある温度,圧力,流量等の容易に収集できるデータを使って推算する技術で,化学や鉄鋼,製薬等のプラント・工場で用いられる.こうしたプラント・工場では,生産中の製品データを分析し,原料の投入量などを調整することで製品品質を保つが,成分濃度や強度等の品質に関わるデータは分析に時間を要する場合がある.リアルタイムでデータが監視できないため,製品品質が基準を下回った状態に気が付かず後工程に進んでしまった場合,作り直しをするための原料やエネルギーのムダが生じる.ソフトセンサを監視制御システムに実装することで,成分濃度や強度をリアルタイムに推算でき,原料やエネルギーのムダを抑えることが可能になる.一方,ソフトセンサの構
築には多くの煩雑な手続きが必要である.富士電機株式会社は,ソフトセンサのモデル生成の過程に自動機械学習技術を適用し,ソフトセンサの構築に特化した業務効率を大幅に改善できる「ソフトセンサ構築/演算ツールEFPROSENS(エフプロセンス)」を発売した.従来の煩雑な手続き・作業が解消され,作業負荷及び作業時間が大幅に改善(70% 以上)でき,早期の収益改善による生産性向上の実現が可能である.本製品は,解析作業効率の向上,購入コストの低さ,使いやすい操作性が特徴である.
本製品は,データ解析・活用を専門とする奈良先端科学技術大学院大学データ駆動型サイエンス創造センター 船津公人センター長,東京農工大学工学部化学物理工学科 金尚弘准教授の監修を受けている.

受賞製品「水道標準プラットフォーム対応運転監視アプリケーション Harmonas-DEOTM」
アズビル株式会社 殿

日本の水道事業は,施設の老朽化,職員数の減少,人口減少に伴う料金収入の減少などの問題に直面しており,日本政府や各自治体はその対策の一つとして,水道の広域化に取り組んでいる.アズビルの「水道標準プラットフォーム対応運転監視アプリケーションHarmonas-DEOTM」は,自治体の枠を超えた広域連携による水処理施設の監視・制御機能を提供する,クラウド型運転監視アプリケーションである.
現場機器との通信には計測制御市場で広く普及しているOPC Unified Architecture (OPC UA)を採用.本アプリケーション内部には監視操作用データベース(OPDB)を備えており,クラウド経由であっても従来のオンプレミス型システムと同等の監視操作性を実現している.また,OPDBと水道標準プラットフォーム内部の共通データベースを連携させることで,他社が提供する様々なアプリケーションとの情報利活用を可能にした.
本製品が水道事業の持続性確保の一助となることを期待する.

[教育貢献賞] 1件
(教育貢献賞)
○「SICE セミナーにおける教育貢献」
京都大学・大塚 敏之 君

おおつか としゆき
大塚 敏之 君(正会員)
(本号 p. 795 参照)
受賞学会活動「SICE セミナーにおける教育貢献」
受賞者は,SICE セミナーの講師として計測自動制御学会における制御工学の教育活動に携わってきた.2007 年の「アドバンスト制御―基礎・先端・応用」と2009 年の「実践的な制御系設計―自動車制御技術の現在と未来―」で講師を分担したほか,2019年からは「モデル予測制御―最適制御の基礎から応用事例・ソフトウェアツールまで―」の講師を継続して務めている.モデル予測制御のセミナーでは,最適制御とモデル予測制御の基礎から応用に至る体系的な内容を扱い,理論と数値解法の考え方やソフトウェアツール,応用事例を解説している.これらの活動を通じて,学術界および産業界の双方に向けてモデル予測制御の理解と普及を促進し,学生・若手研究者・技術者の育成に貢献している.

[国際標準化賞] 1件
(国際標準化賞 奨励賞)

えんどう たろう
遠藤 太郎
1998年筑波大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程終了.同年より横河電機株式会社入社.以降電気回路設計技術者として,渦流量計,電磁流量計,ガスクロマトグラフ,液体分析計などの開発業務を20年にわたり携わる.2018年よりEthernet-APLの規格開発を中心に標準化関連業務に従事している.
対象国際標準規格名:
・ IEC TS 63444: Industrial networks–Ethernet-APL port profile specification
・ IEC TS 60079-47: Explosive atmospheres–Part 47: Equipment protection by 2-wire intrinsically safe ethernet concept (2-WISE)
・ IEC 61326-2-7: Electrical equipment for measurement, control and laboratory use–EMC requirements–Part 2–7:
Particular requirements–Test configurations, operationalconditions, test levels and performance criteria for field devices with Ethernet

プロセスオートメーション分野における通信は防爆対応と長距離通信,高い信頼性が求められるため,長年Ethernetの様な高速,汎用的な技術の導入が進んでいなかった.「Ethernet-APL」はその様なプロセスオートメーションの状況を変化させるべく複数のベンダーと4 つの通信規格を開発・管理する団体が「APL project」を構成し,コンセプトや基本性能などが考案されました.遠藤太郎氏は「APL Project」が発足した2018年より日本から唯一のメンバーとして規格作成に参加し,本質安全防爆やEMC対応の知見を活かして関連規格のIEC標準化にも貢献.並行して,国内外のセミナーでの講演を通じてEthernet-APLの普及促進にも継続的に尽力している.

[若手学会貢献賞] 2件
(若手学会貢献賞)
東京大学・安 琪 君
金沢大学・辻 徳生 君

あん ち
安 琪 君(正会員)
2014年東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻博士課程修了,博士(工学).東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻助教,九州大学大学院システム情報科学研究院准教授などを経て,2022年より東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻准教授.2015年計測自動制御学会論文賞を受賞.

受賞学会活動
受賞者は,システム・情報部門およびSI 部門を中心に,計測自動制御学会の多岐にわたる活動に継続的に貢献してきた.特に,2022~2024年にはSI部門において会計幹事を務め,さらに2024~2025年にはシステム・情報部門にて幹事を務めるなど,複数部門にわたり学会活動の推進に中心的な役割を果たしている.
他にも2022年からSICE 和文論文集のAE を務め,学術誌の質の向上に寄与している.部会活動では,2019~2022年にかけてシステム・情報部門自律分散システム部会の委員・幹事を歴任し,専門分野の活性化と若手研究者の参画促進に努めた.このように,部門運営や部会活動などの各側面において継続的かつ多面的に学会活動に貢献しており,若手会員の模範となるものである.

つじ とくお
辻 徳生 君(正会員)
2005年九州大学大学院システム情報科学府知能システム学専攻博士課程修了.同年広島大学大学院工学研究科,COE研究員.2008年産業技術総合研究所知能システム研究部門,産総研特別研究員.2011年九州大学大学院システム情報科学府知能システム学専攻助教,2016年金沢大学理工研究域准教授.博士(工学).

受賞学会活動
受賞者は,学会活動において多面的に貢献し,特にSI部門において中核的な役割を担ってきた.2023年にはSI部門表彰委員会幹事を務め,2024 年度にはSI部門運営委員会庶務幹事およびSI部門将来計画委員会幹事としてSI部門の円滑な運営に尽力した.また,2022年よりSICE 和文論文誌Associate EditorおよびSICE表彰委員を務め,論文誌の学術的な価値の維持ならびに表彰活動の円滑な運営に貢献している.さらに,現在はSICE 代議員およびSI部門ノミネーション委員を務め,学会の組織運営に積極的に参画している.これらの活動は,学会全体の発展に大きく寄与するものである.