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(掲載から1年は計測自動制御学会 会員の方のみ)

ミニ特集 魚釣りに見る動態とダイナミクス

私が大学院生だった20年前,スズキを釣りに岸和田の沖堤までよく行きました.釣座で読みが当たると,棒ウキがスッと海中に沈み込み,魚との力のインタラクションが始まります.季節ごとに変わる魚の捕食タイミング(地合い)や行動習性・経路(海底の地形と水深,タナ)を予測して餌をまき,針を海底近く潮に乗せて自然に流すことで継続的な釣果を上げられるようになります.この一連の操作は,制御工学とのアナロジーがあります.たとえば,仕掛けを流す操作は,3次元空間に分布する時変な外乱のなか,針先の位置を推定する非線形ダイナミクスを対象にした状態推定問題に,そして,糸巻き操作は,張力飽和を考慮した拘束制御をすることに対応しています.さらに,魚の習性(知性や警戒心),また,その動態も考慮・推定できれば,魚の行動予測精度は上がり,釣果は確実になるはずです.

本特集号では,この個人体験をもとに,釣り道具に係る計測・制御の話題だけでなく,魚の生物学的特性や釣り人を含む釣り環境の動態にも焦点をあてた話題提供となるよう企画いたしました.竿やラインの動特性解析から始まり,魚の捕獲における知能測定や創生の試み,釣り用に特化した小型センサ開発,漁獲情報の調査および高精度化,そして,魚の音の感じ方に関する最新の結果まで,様々な切口で解説していただきます.さらに,人に釣りの面白さを伝えるシミュレータ開発では,魚釣りの再現に関する技術開発の難しさもご紹介いただきます.魚釣りという事例を通して,物と生物の特性が干渉する動的システムを考えるきっかけになり,計測・制御の斬新な課題創出,そして,釣り道具や技術のさらなる発展に繋がることを期待いたします.

[巻頭言] 社会貢献と学会のミッション
松村 基史(富士電機)
ミニ特集 魚釣りに見る動態とダイナミクス
[解説] フライキャステイングにおけるモデリングと解析
渡邉 鉄也(埼玉大)
[解説] ロボットと魚の敵対的関係に基づく魚の運動知能の測定とカオスによるロボットの知能創成の試み
見浪 護(岡山大),戸田 雄一郎(岡山大),松野 隆幸(岡山大),矢納 陽(川崎医療短大)
[解説] 釣りにおける超小型センサの利用
荒木 望(兵庫県立大),吉田 陽一(がまかつ),才木 常正(兵庫県立大/兵庫県立工業技術センター)
[解説] 音響を用いた種判別のための釣り調査
今泉 智人(水工研)
[解説] 魚の水中音感覚と釣りへの応用
小島 隆人(日本大)
[事例紹介] 磯釣りシミュレータの開発
吉田 陽一(がまかつ)
特別企画 新たな自動車技術を創造する産学連携コラボレーション
~JSAE-SICE自動車制御とモデルの研究専門委員会~
[総論] 自動車の制御とモデリングの課題解決を目指すSICEの産学連携,異分野交流
川邊 武俊(九州大),向井 正和(工学院大),小森 賢(マツダ),平野 豊(トヨタ自動車)
[解説] 文部科学省委託事業 AIMaP の取り組みについて
溝口 佳寛(九州大),棚橋 典大(九州大)
[解説] ベンチマーク問題1:自動車エンジンの物理モデルを用いた非線形システム同定
加古 純一(トヨタ自動車),大畠 明(上智大)
[解説] ベンチマーク問題2:ハイブリッドパワートレインを用いた通勤車両の燃費最適化問題
安井 裕司(本田技研)
[解説] ベンチマーク問題3:エネルギー消費と動的性能の両立を目指した新モビリティ用車両制御
平野 豊(トヨタ自動車)
[解説] ベンチマーク問題4:境界モデリングおよび境界近傍制御ベンチマーク問題
渡邊 智(トヨタ自動車),加古 純一(トヨタ自動車),大畠 明(上智大)
[解説] ベンチマーク問題5:EVを運用するスマートオフィスの電力最適化問題
石塚 真一(サイバネットシステム)安井 裕司(本田技研)
[解説] ベンチマーク問題6:自動運転システムにおける交通参加者行動の予測問題
安井 裕司(本田技研),土屋 成光(本田技研),柳原 秀(本田技研)
[リレー記事] FACE the future《第1回》実世界画像センシングの課題と期待
上野山 徹(センスタイムジャパン)
[製品紹介] スマート・デバイス・ゲートウェイ形NX-SVG
アズビル株式会社
[編集後記] 小木曽 公尚(電通大)