表紙

J-STAGE からオンラインで閲覧できます
(掲載から1年は計測自動制御学会 会員の方のみ)

特集:医療支援におけるAI技術の活用

あらゆるモノが簡単にインターネットへ接続できる現代では,IoT技術を活用したセンシングシステムが幅広い分野で活用されている.特に人手不足が深刻な医療や福祉分野での発展はめざましく,遠隔医療やみまもり,介護支援においては多くの研究開発の成果が実用化されてきている.さらに,これらのセンシングシステムはコロナ禍における感染対策としても期待されており今後も需要の高まりが予想される. また,このようにして得られたデータに対し人工知能を活用することにより,従来の統計処理だけでは考えられなかった多くの成果が得られるようになった.しかし,そこで紹介される事例は海外のものが多く国内に関する事例は稀であった.これはデータの整備や法制度および医師の働く環境などが諸外国に比べ不利であったためだが,現在はデータの整備が進み,個人情報に関する取り扱いなどにもある程度の合意が形成されたことにより,各地で研究や開発が進んでいる.医療に関する計測データの活用という面では国内の動きは着目すべきものがある. 本誌では2020年4号で「保険医療・介護における人と情報技術の未来」,2019年7号で「医療画像の基礎と新展開」,2006年11号で「医療・バイオ関連の計測制御技術」という特集を組んでおり,学会員の医療に関する関心は高いと言えるが,AIに特化した特集はない.特に,近年のAIの発展により,これまでとは精度や規模が異なる研究事例が増加しているため,本特集により,この分野における知識のアップデートの機会を提供したい. 本特集では,ゲストエディタおよび編集担当委員の研究パートナーや関連学会における研究者や企業の研究事例をベースに,医療データや医療の現場を対象にした人工知能の活用について,国内においてどのような取り組みが行われているかを外観し,また研究の障害となっているものは何かを検討することで,今後の本分野における発展にむけての課題を探る.

計測と制御 Vol.62 No.2 目次

[リレー記事] 「FACE the future」《第49回》セキュアな製品開発のための取り組み
宮﨑 里美(横河電機)

特集 医療支援におけるAI技術の活用

[総論] AIを利活用した外傷・救急医療の将来展望
齋藤 大蔵(防衛医大)
[総論] 医療行為支援AIとニューラルネットワークの説明可能性
本谷 秀堅(名工大)
[解説] 機械学習を利用した外傷死の分類
堤 悠介(水戸医療センター),土谷 飛鳥(東海大)
[解説] トピックモデルをベースとするレセプトデータの解析
野中 尋史(愛知工大)
[解説] 地域医療における医療AIの活用の未来
上村 博輝(新潟大学病院)
[事例紹介] 整形外科外傷診療に役立つAI開発の試み
高原 俊介(兵庫県立加古川医療センター)
[事例紹介] NASA-Task Load Index(TLX)による拡張現実技術を用いた外傷初期診療シミュレーションの効果の測定
伊藤 香(帝京大学医学部附属病院),杉本 真樹(帝京大学冲永総合研究所)
[解説] 深層学習を用いた肝臓がんの診断支援
陳 延偉(立命館大)
[解説] AI技術の医用画像解析への応用
神谷 亨(九工大)
[事例紹介] 救急医療現場における音声入力やOCRの利活用
園生 智弘(TXP Medical)
[部門だより] 第39回センシングフォーラム 計測部門大会報告
牧野 泰才(東京大)
[特別企画] 観測粒度の違いに適応可能なマルチエージェント強化学習
上野 史(岡山大)
[編集後記] 白川 智弘(長岡技科大)