論文集抄録
〈Vol.50 No.12(2014年12月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ 地上局とケーブルでつながれたヘリコプターの制御に関する研究―張力推定方法と張力補償制御―

大阪市立大学・今津 篤志,野口 博貴,川合 忠雄

  給電および通信のケーブルによって地上の基地局とつながれたマルチロータヘリコプターシステムにおいて,ケーブルの静的な影響を考慮したヘリコプターの飛行制御方法およびシステムの設計方法を提案した.このシステムではケーブルを介した給電によって長時間の飛行が可能であるが,ケーブルの張力がヘリコプターの飛行を阻害する.
 そのため本手法においては,ヘリコプターに働くケーブルの張力を推定し,張力と重力を相殺するための目標角度の補正,および張力と重力に抗する推力フィードフォワード補償を行う制御方法を提案した.提案手法の効果をシミュレーションで検証し,目標角度補正が水平方向の偏差を低減しフィードフォワード補償が鉛直方向の偏差を低減することを示した.シミュレーションの結果,飛行軌跡の誤差を従来制御に比べて約15%程度にまで低減できることを示した.


 

■ 双Hamilton系の簡約化可能な境界エネルギー制御

京都大学・西田 豪

  本論文では,双Hamilton系に対して,その対称性を利用し,エネルギーに基づく境界制御,観測に用いられる入出力変数の簡約化手法を提案する.Noetherの定理によれば,系の対称性に付随して,保存則が存在する事が知られている.例えば,時間発展に対して,解の平行移動が可能な場合,エネルギー保存の法則が成り立ち,Hamiltonianという保存量が存在する.双Hamilton系には,Hamilton構造を記述できるHamilton作用素が,2つ存在する.それらの合成作用素を繰返し作用させる事で,無限個の保存則と付随するHamiltonianを導く事ができる.もし,何らかの変動により,このHamilton構造が崩れれば,これらの保存則は成立しなくなる.本論文では,この性質を利用し,Hamiltonianの変化を,境界で定義された変数だけを用いて観測する事,および,境界制御入力を用いてHamiltonianを能動的に減少させ,系を漸近安定化する事を考える.その際に,制御や観測に用いるHamiltonianは,複数の候補から都合の良いものを選択できる.これを,本論文では,簡約化と呼んでいる.


 

■ 外れ値環境下における Self-tuning Controller

東京都立産業技術研究センター・金田 泰昌,入月 康晴,東京工業大学・山北 昌毅

  本論文では,非ガウスノイズの一種である外れ値にロバストなself-tuning controller (STC) を提案する.従来の STC のパラメータ更新則は推定誤差の最小化問題の解として与えられる.そこで,提案手法ではこの最小化問題にl1正則化項を追加し,外れ値を陽に推定し,除去する.そして,制御器から外れ値を取り除くことでロバスト STCを構築する.さらに,提案手法の性能が,外れ値を含まない場合の通常のSTC の性能と同程度になることを理論的に示す.非最小位相系を例題とし,数値シミュレーションにて提案手法の有効性を示す.


 

■ 時間軸状態制御形にもとづいた安定化制御におけるゲインの切替条件

東洋大学・山川 聡子

  時間軸状態制御形にもとづいたchained systemの制御手法において,時間軸の切替に合わせてゲインの符号を切替えてシステムを安定化する条件が示されていた.本稿では,さらに制御ゲインの絶対値を切替える条件を示した.この結果,基本となる線形システムが漸近安定であれば,ゲインの絶対値を変更するパラメータを時間軸の切替とは独立のタイミングで,任意の正の値に切替えてもシステムは漸近安定になることが保証された.数値シミュレーションで,時間軸とゲインの絶対値をそれぞれ独立なタイミングで切替えた場合にchained systemの状態が収束する様子を確認した.また,車両の車庫入れを模した数値シミュレーションを行い,ゲインの絶対値を切替えることでシステムの挙動が改善される例を示した.


 

■ 運動学習に伴う座位姿勢での平衡知覚変化に関する計測実験

 岐阜大学・伊藤 聡,石川 靖明,佐々木 実

  本稿では平衡の運動学習に伴い平衡に関する知覚が変化する実験について報告する.平衡の実験は被験者の安全性を考慮して座位状態で行うが,座位姿勢に規則的な外乱を与えるために,座面が不安定化するように回転し同時に全体が平行移動する特別な椅子を製作した.運動学習では,側方向座面回転軸が仮想的に移動すると同時に平行移動で慣性力外乱を受ける状況を被験者に繰り返し提示する.また平衡テストでは,被験者に側方向に傾斜した何通りかの姿勢を複数回とらせ,どちらに傾いているかの回答を得ることで,直立状態と感じる心理的直立姿勢を検出する.14名の被験者に対して実験を行った結果,運動学習後に心理的直立姿勢が運動学習を行う方向によって有意に異なった.これにより運動学習により平衡に関する知覚に変化が起きることが示された.


 

■ モデル誤差抑制補償器と周波数整形型終端状態制御の併用による3慣性ベンチマーク問題の一解法

熊本大学・藤岡 巧,岡島 寛,松永 信智

  これまで,様々な制御理論や制御設計法が提案されており,その有効利用には制御系設計法を評価し,それらの特徴,有用性,問題点などについて把握する必要がある.その評価のために様々な制御ベンチマーク問題が作成 され,同一の問題に対して制御系設計結果の比較検証がなされている.本論文では,ロバスト性を扱う3慣性ベンチマーク問題に対して,モデル誤差抑制補 償器と周波数整形型終端状態制御を併用した制御系設計法を提案する.トルク制約を扱う本ベンチマーク問題に対しては入力信号を直接的に設計する周波数 整形型終端状態制御は親和性が高く,良い性能を実現できると期待される.さらに,先行研究で提案しているモデル誤差抑制補償器を用いることによりモデルと制御対象とのギャップを抑制する.モデル誤差抑制補償器はノミナルモデ ルに対する補償に特化しているため,フィードバック制御器の設計見通しが良 く,制御対象のバラツキを考慮しつつ高い目標値追従性能を実現する.両者の 設計は独立に行うことができる点にも提案法の特徴がある.提案手法の有効性は数値例により検証する.


 

■ モデル誤差抑制補償に基づく非線形システムのフィードバック線形化

熊本大学・岡島 寛,鹿児島大学・西村 悠樹,熊本大学・松永 信智

  非線形システムに対して制御を行う場合に,その有力なアプローチとして非線形システムの線形化が挙げられる.このうち,非線形状態フィードバックによるフィードバック線形化は広いレンジでの制御において効果的な手 法として知られている.この手法は,状態を観測できる環境下では有効である ものの,観測精度が低い場合や,モデリング精度が悪い場合にはその誤差の影 響を直接的に受けやすい.これに対して本研究では,モデルの出力と実プラン トの出力との差をフィードバックする構造として新たなフィードバック線形化の手法を提案する.この方法は出力フィードバックの形で与えられる.モデル 誤差の影響を調整するための設計自由度を有するという特徴がある.提案法の有効性は数値例により検証する.


 

■ 風車電力平滑化のための二次電池制御

九州大学・有馬 浩貴,北九州市立大学・岡田 伸廣,
日本文理大学・和田 清,九州大学・木口 量夫

  風力発電はその時の風の状況によって大きな出力変動を引き起こすことがあり,一定の供給量が保証できず,そのまま電力系統に接続して使うことができないという問題を抱えている.そのため,出力変動を抑える手段が必要となる.その手段として現在主流となっているのが,二次電池を併設してその出力変動を吸収する方法である.この二次電池併設風力発電の制御方法についてはすでに研究が進められているが,それらはいかに出力を平滑化しつつ二次電池の状態を管理するかという観点で考えられており,二次電池の小型化に関してはあまり考えられていなかった.また二次電池のサイズについてもいくつかの研究が進められているが,それらの研究はそれぞれ外部から購入する電力のコストや二次 電池にかかるコストを最小化することを目的としていた.
一方われわれの研究では,二次電池の過充電過放電を防ぎつつその定格容量の小(低)容量化を図ることが目的である.
 今回の研究では,二次電池の充放電制御による平滑化において,風車出力に応じた適切な二次電池の容量をMATLABによるシミュレーションによって求め,二次電地の定格容量の小(低)容量化を目指す.


 

■ 厚鋼板圧延におけるミル負荷適正化技術

新日鐵住金・小林 俊介,角谷 泰則,中川 繁政,
児嶋 次郎,矢野森 義雄,矢澤 武男

  本論文では,厚鋼板圧延プロセスにおける生産性向上を目的に,粗ミルから仕上ミルへ圧延材を移送する適切なタイミングを決定する方法を検討した.厚板圧延移送パス決定問題を最適化問題として定式化し,各種最適化手法の適用を検討した.検討で得られた知見をもとに,分枝限定法の探索深さを限定したサブ問題に分割し,順次最適化を行う独自手法を提案した.提案手法が他手法と比べ圧延能率,計算負荷の点で優位であることをシミュレーションにより確認した.また,実機にて効果確認試験を行い,圧延能率の向上を確認した.


 

■ ユビキタス脈波・血流量センサの開発

芝浦工業大学・今井 信之介,長谷川 忠大

  これまで,加速度と角速度に加えてバイタルサインとして脈波・血流量を用いた転倒検知法を提案してきた.脈波・血流量は,転倒する場合と転倒開始するもののバランスを取り転倒しない場合の判断をするために用いている.本手法を実現するため,転倒動作中であっても脈波・血流量を測定できるユビキタス脈波・血流量センサを開発した.この脈波・血流量センサは,DC-AC分離増幅器と光変調測定器を有し,過渡応答問題,外乱光による影響 防止や測定者の動作中の脈波・血流量の測定を可能にした.さらに,転倒検知実験により,脈波・血流量を用いた転倒検知アルゴリズムが転倒した場合と転倒開始したもののバランスを取り転倒しなかった場合を識別できることを実証した.