Vol.50,No.3
論文集抄録
〈Vol.50 No.3(2014年3月)〉
特集 制御でつなぐ人と人,そして社会へ
タイトル一覧
[論 文]
- ■ フィードバック制御による燃料電池自動車の施策に関する検討
- ■ ディーゼルエンジン過給圧制御へのオンラインリファレンスガバナの応用検討
- ■ 船舶の時変操舵応答性に適応する一般化最小分散制御の設計
- ■ 状態空間表現による自律無人搬送車のタスク割当てと経路計画の同時最適化
- ■ 状態依存シルベスタ方程式を用いた非線形オブザーバの提案
- ■ 確率的モデル予測制御を用いた分散最適電力配分とプライシング
- ■ モデル予測制御による小規模飛行実験機の水平面内誘導 - 直線軌道追従ケースでの飛行試験結果-
- ■ 電力潮流を考慮した分散的な動的電力価格決定
- ■ 故障時に有限発散時間を利用する自己修復追従制御
- ■ タイヤ横すべりを考慮した限界スリップ率推定に基づく電気自動車の駆動力制御
- ■ マルチロボットのD-SLAMにおける環境地図統合とその理論解析
- ■ LPVシステムに対する最適出力レギュレーションによるロックアップクラッチのスリップ回転速度制御
- ■ 粒子フィルタによる制御器パラメータ調整
- ■ 日射量変動予測シナリオ群に基づく蓄電池運転計画の最適化-太陽光発電によるピーク電力低減に向けて-
- ■ プレフィルタとポストフィルタを含むAD/DA変換系の設計と音声信号圧縮系への適用
- ■ 間欠的観測を考慮したH∞フィルタによるSLAM
- ■ エンジンモデル同定における誤差モデルのカーネル同定法
[論 文]
■ フィードバック制御による燃料電池自動車の施策に関する検討
法政大学・坂本憲昭,小沢和浩,新村隆英,高森 寛
次世代自動車として水素燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle,以下FCV)が期待されている.FCV普及のためのおもな課題は,高価な車両価格と高額になる水素ステーション建設費であり,消費者と水 素ステーション事業の両方に対する補助が必要である.本研究では,FCV普及シナリオについて提案をおこなう.具体的には,予算消費型の補助金施策ではな く,フィードバック制御によりFCV台数を目標パターンに追従させる.シミュレーション結果は,公的機関がスタンドを1基建設するごとに,公設民営の事業 者の入札金額の最低額を与える.それは,建設結果を事業者に無償譲渡するのではなく,FCVの計画通りの普及を前提にして,入札制度により応募する事業者 の最低入札金額である.しかし現実には,モデルに,パラメータ見積もり誤差や,景気の影響によるFCV購入およびステーション建設費の増減など,多くの不 確定要素がある.そこで,ロバストな制御則としてスライディングモード制御を適用し,不確かさが存在しても,目標パターンに精度よく追従させることで,消 費者の満足度を計画通りにすすめ,同時に,入札金額の最低金額が低く抑えられ,事業者の参入ハードルを下げる効果が得られること示す.
■ ディーゼルエンジン過給圧制御へのオンラインリファレンスガバナの応用検討
トヨタ自動車・仲田勇人,リカルドUKリミテッド・Martin Peter,Milton Gareth,
トヨタ自動車・家村曉幸,大畠 明
本論文では,自動車用ディーゼルエンジンの過給圧制御へのリファレンスガバナの応用について考察する.将来 予測に用いる制御対象モデルは,非線形性を考慮するため,区分的アフィンモデルを用いる.その各サブモデルは,エンジン回転数と燃料噴射量から定まる定常 運転条件におけるシステム同定によっ
て得られる.その予測モデルを用いて,最急降下法に基づくオンラインリファレンスガバナアルゴリズムを提案し,それをターボチャージャ回転数の上限制約を 考慮した過給圧制御に適用する.最後に,車両実験によって,提案手法の有効性を実証する.
広島工業大学・土井正好,弓削商船高等専門学校・永本和寿・首都大学東京・森 泰親
船舶は舵により旋回する. 舵角を大きく取れば旋回角速度を増し, 航跡の旋回半径は小さくなる. しかしながら, 船体運動は慣性が大きいため舵効きの応答性が鈍い. 特に離着岸操船では、低速航行のため舵効きがさらに鈍くなる. その一方, 着岸操船では指定した桟橋に船舶を精密に誘導するため頻繁な操舵力を与える. 操舵角入力が可変である場合において, 操舵応答は時変系となる. 本研究では, 時変操舵系に適応した制御構造を設計する. 時変系に適応したGMVCは, 制御構造において現れる時変多項式積について時刻シフトを考慮する必要がある. これまで, 時変系のためのGMVCは多項式積について一般式の演算方法を示した. 本研究では, 操舵時変GMVCに現れる多項式積について具体的な時刻シフト演算法を明らかにする. さらに, 標準のGMVC構造では目標値変化に対してオフセットを残すため, 内部モデル原理に基づくフィルターΔを評価関数中に組み込みサーボ系を設計する. 最後に, 導出したサーボ型時変GMVCをシミュレーション上で操舵系に適用し, 従来の時不変操舵GMVCの目標値追従性と比較する.
>■ 状態空間表現による自律無人搬送車のタスク割当てと経路計画の同時最適化
電気通信大学・中村亮介,澤田賢治,新 誠一,
電気通信大学/村田機械・熊谷賢治,村田機械・米田尚登
半導体生産工場における自動搬送システムでは,半導体ウエハーを格納したFOUPを高速に搬送することが求められている.しかしなが ら,FOUPを搬送する天井設置型自律無人搬送車(OHT)に関わる制約により,自動搬送システムは渋滞が発生しやすく効率的な搬送は容易ではない.この 問題に対する有効な解法としてOHTのタスク割当てと経路計画の同時最適化が研究されてきているが,本論文では状態空間表現を用いた新たな同時最適化方法 を与える.全OHTが全タスクを完了する時間の最小化(最短時間搬送)の目的関数を定式化し,この最短時間搬送問題を状態空間表現を用いて0-1整数計画 問題へ帰着する.数値実験では,同時最適化と経路最適化の比較を行い,搬送時間の観点から同時最適化の有効性を確認する.
名古屋大学・上野晃司,坂本 登,科学技術振興機構・鈴木雅康,首都大学東京・小口俊樹
本稿では状態依存シスベスタ方程式を用いた非線形オブザーバを提案する.提案手法は状態依存係数行列とシル ベスタ方程式の解析解を用いて構成される,新たな非線形推定機構である.提案手法はLuenbergerオブザーバの定式化を状態依存係数行列を用いて非 線形システムへ拡張したものとなっている.提案手法の設計にはシルベスタ方程式の解析解を用いているため,SDREオブザーバや拡張カルマンフィルタなど の従来手法実装に伴う複雑な数値計算は不要である.提案手法の有効性は数値シミュレーションとローレンツシステムをベースとした電気回路実験によって示し た.
■ 確率的モデル予測制御を用いた分散最適電力配分とプライシング
慶應義塾大学/独立行政法人科学技術振興機構・余 正希,
カリフォルニア工科大学ジェット推進研究所/独立行政法人科学技術振興機構・小野雅裕,
マサチューセッツ工科大学・ブライアン ウィリアムズ,慶應義塾大学・足立修一
近年注目されている風力や太陽光などの再生可能エネルギーによる発電量は,天候に左右され不確定であるとい う問題がある.そのため,今後予想される電力網への再生可能エネルギーの大量導入に伴い,電力需給の不均衡が発生するリスクを適切に抑制するメカニズムの 構築が重要な課題となっている.既存の電力市場は,翌日の需給予測値に基づくday-ahead市場などで電力の取引が行われている.これは未来の電力需 給の期待値を取引する仕組みと捉えることができ,需給の確率分布全体の情報は用いられておらず,需給不均衡のリスクを定量的に管理することはできない.そ こで本研究では,期待値に加え電力需給の標準偏差を市場で取引する新たな電力配分・プライシング法を提案する.本手法により,需給不均衡リスクを定量的に 抑制すると同時に,実際の市場メカニズムに基づく分散的な最適電力配分を実現することが可能となる.
■ モデル予測制御による小規模飛行実験機の水平面内誘導 ― 直線軌道追従ケースでの飛行試験結果 ―
宇宙航空研究開発機構・濱田吉郎,塚本太郎,石本真二
本稿では,宇宙航空研究開発機構で開発した小規模飛行実験機による,非線形モデル予測制御を用いた水平面内誘導則の検討及び飛行実験結果を紹 介する.モデル予測制御による誘導を実現する際に問題となるのは,実験機の誘導は地面に対して(対地座標系で)行う必要がある一方で,実験機の運動自体は 対気姿勢や対気速度(対気座標系)で制御するという不整合である.この問題を解決するために,本稿では定常風推定機構を導入し,これをモデル予測制御と組 み合わせることで,地面に対する正確な軌道誘導を実現する.実飛行試験では,複数の風条件の下で直線軌道への追従飛行を実施し,微風/強風ケースどちらに おいても高精度な誘導が可能であることを実証した.
慶應義塾大学・大川佳寛,祓川 悠,滑川 徹
本研究ではエネルギーマネジメントシステムのための電力潮流を考慮した分散的な動的電力価格決定メカニズム を提案する.まず本研究では市場参加者として電力消費を行う需要家,発電を行う供給者,電力網の管理と電力価格の決定を行う独立系統運用機関(ISO)の 3種類の参加者を想定する.そして各参加者の利益の総和を社会全体の利益とし,各市場参加者が利己的に決定した電力消費量および発電量が,この社会全体の 利益を最大にする理想的な電力消費量および発電量となるような最適な電力価格を決定する問題について考える.ここで本研究はこの最適化問題に対して交流電 力網における潮流方程式を制約条件として加えており,物理的制約を陽に考慮した電力価格決定手法である.また本研究が提案する市場アルゴリズムは最適化問 題の双対関数の勾配法を用いており,ISOと需要家・供給者が電力価格とその価格に対応した需要計画・発電計画の情報交換を繰り返し行うことで最適な電力 価格が分散的に決定される市場アルゴリズムである.さらに本研究ではリアプノフ関数を用いた電力価格の収束性の証明を行い,最後に数値シミュレーションを 用いて本研究が提案した分散最適市場アルゴリズムの有効性の検証を行う.
東海大学・高橋将徳
本稿では,固着型を含むセンサ故障問題に対して,故障したセンサを自動的に検知・交換して制御系を修復する(安定性と制御性能を取り戻す)こ とができる,新しい自己修復制御系構成法を提案する.具体的に,ここでは,1次の非線形な検知フィルタを導入して,故障時に生じるこのフィルタの有限発散 時間を一時的に利用し,センサ故障を正確かつ事前に規定された時間内に検知する方法を提案する.この方法では,検知フィルタのパラメータ設定により検知に 要する時間を任意に設定(早める)ことが可能である.さらに,ここでは,制御対象の出力を目標値に追従させるトラッキング制御問題について考え,センサ正 常時に,上述の非線形の検知フィルタを含む制御系を安定化し,追従誤差の収束領域を任意に小さくすることができる非線形制御器構成法を示す.また,これら の,検知フィルタ,故障検知法,制御器を用いることで,自己修復制御と目標値へのトラッキング制御が実現できることを理論的に示す.いくつかの数値例を通 して提案手法の有効性について検証を行う.
■ タイヤ横すべりを考慮した限界スリップ率推定に基づく電気自動車の駆動力制御
東京大学・前田健太,藤本博志,堀 洋一
本稿では,自動車におけるタイヤ横すべりを考慮したタイヤブラシモデルに基づき,逐次最小二乗法を用いたスリップ率上限値推定法を提案する. 推定した制限値は,著者らの研究グループが提案した,電気自動車におけるスリップ防止制御である駆動力制御法に適用する.提案する推定法を駆動力制御法に 適用することで,高μ路ではドライバの望む駆動力を発生可能であり,低μ路で駆動力が飽和する場合にもタイヤは粘着域にとどまる.タイヤが粘着域にあれば 旋回中の横力飽和が防止できることから,低μ路上を旋回する際の車両運動の安定性が向上することを,実車を用いた走行実験により示す.
■ マルチロボットのD-SLAMにおける環境地図統合とその理論解析
慶應義塾大学・小嶋昂明,大川佳寛,滑川 徹
本論文ではマルチロボットを用いたD-SLAMにおける環境地図の統合問題について扱う.D-SLAMとは SLAMの分割問題であり,具体的には個々のロボットがEKF SLAMにより取得する局所的な環境地図を統合し,すべてのロボットとランドマークの位置情報を含むような全体地図を推定する問題となる.大規模環境下に おいてマルチロボットを用いることで,短時間での環境地図作成や計算負荷の分散が可能となる利点がある.この問題を解決するため,本論文ではRLSベース の地図統合アルゴリズムを提案する.本提案手法では,全体地図の推定にあたり局所地図の相対情報を観測値として扱い,またその信頼度をEKFが与える推定 誤差共分散行列からの誤差伝搬として考慮することで,観測値の確かさに応じた状態推定値の重み更新を行う.また,本論文では提案手法における推定誤差の理 論的な解析として,状態推定値の不確かさの指標である推定誤差共分散行列に着目し,その収束性の証明を行う.そして,移動ロボットを用いた実機検証によ り,本提案手法を用いることで全体地図の推定精度が向上すること,また,推定誤差共分散行列が理論的な解析値に収束することを示す.
■ LPVシステムに対する最適出力レギュレーションによるロックアップクラッチのスリップ回転速度制御
名古屋大学・梅村 哲央,坂本 登
ロックアップクラッチのスリップ回転速度制御は自動車の低燃費性能と乗り心地を両立する重要 な役割を担っている.しかしながらロックアップクラッチの特性は動作条件によって大きく変動 するため,従来よく用いられていたH∞制御では大きな特性変動に対する制御性の確保が難しい. 特性が大きく変動するような系に対しては,制御対象を線形パラメータ変動系(LPV)システムと して表現し,ゲインスケジュールドH∞制御を用いた制御系設計が用いられるが,車載用電子制御 ユニット(ECU)の計算能力が高くないため,ゲインスケジュールドH∞制御器を実装することも また困難である.このような問題に対し,本論文では制御対象をタービン回転速度を変動パラメ ータとしたLPVシステムとして表現し,出力レギュレーション問題を適用することで簡易な制御系 設計を行う.得られた制御器をシミュレーションを用いてH∞制御器と比較して提案手法の有効性 を示し,また実機試験を行うことで提案手法が車載用ECU程度の計算能力でも実装が可能であるこ とを示す.
山口大学・若佐裕治
近年,制御対象の数式モデルを用いることなく,入出力データを用いてPIDゲインのような制御器パラメータを直接調整する方法がいくつか提案 されている.これらの方法は制御対象をモデル化する過程を経ないため,制御系設計にかかる時間やコストを省くことのできる実用的な方法として注目されてい る.さらに,これらの中で,Fictitious ReferenceI terative Tuning (FRIT)はより実用的で有用な方法としてその応用も盛んに研究され,不感帯やヒステリシスを含むシステムへの拡張法も提案されている.一方,粒子フィ ルタは状態推定だけでなく,非線形システムの同定やパラメータ推定の方法としても有効であることが知られている.本論文では,FRITの評価関数から導か れたシステムに対して粒子フィルタを適用し,新たな直接的制御器パラメータ調整法を提案する.まず,基本的な場合として,線形制御対象を扱い,その後不感 帯およびヒステリシスをもつ制御対象への拡張を試みる.また,数値例によって,提案法の有効性を検証する.
■ 日射量変動予測シナリオ群に基づく蓄電池運転計画の最適化-太陽光発電によるピーク電力低減に向けて-
富士通・仲尾由雄,谷口 剛
太陽光発電は,持続可能で豊かな低炭素社会実現の鍵として期待されているが,不確実な天候要因により出力変動するため,需要にあわせた効果的 活用が難しいという問題がある.本稿では,太陽光発電と蓄電池の複合システムによるピーク電力低減に向け,太陽光発電の不確実な出力変動を考慮して蓄電池 の運転計画を最適化する手法を提案し,富士通川崎工場に構築した実証システムの運用データに基づき,その有効性を検証する.
■ プレフィルタとポストフィルタを含むAD/DA変換系の設計と音声信号圧縮系への適用
熊本大学・鍋倉司樹,岡島 寛,松永信智
AD/DA変換はディジタル信号処理における重要な技術である.従来よりAD/DA変換系はポストフィルタ と量子化器を含む形で構成されている.このとき,良好な性能となるために低量子化ノイズ特性と低歪性が求められる.しかしながら,これら2つの特性間には トレードオフの関係がありその調整は容易ではない.これに対し先行研究では,従来のAD/DA変換系にプレフィルタを加えたAD/DA変換系を提案した. ここで,プレフィルタとポストフィルタは,量子化ノイズの影響と量子化に伴う歪みを最小化し,原信号に近づくように設計される.本論文では,各フィルタの 具体的な設計法についてその設計方針を与える.その際,提案系を用いて音声信号圧縮を行い,提案手法の量子化ノイズ除去効果を検証する.さらに,音声品質 の主観評価手法により音声の劣化度合いを評価し,従来手法との比較検証を行なう.
慶應義塾大学・大川佳寛,滑川 徹
本論文では間欠的観測を考慮したH∞フィルタによる移動ロボットの自己位置推定と環境認識(SLAM問題)について扱う.SLAM問題におい て,移動ロボットは周囲に点在する特徴点の観測情報を基に自身の自己位置推定と周囲の環境認識を行うが,センサの有効範囲の限界や障害物の存在等によって 正常な観測情報が間欠し,その結果,推定精度の悪化や推定失敗を生じる。この問題に対し,提案アルゴリズムでは,まず取得した各ランドマークに対する観測 値とロボット自身が算出したその推定値を比較することで,個々の観測値それぞれに対して間欠的観測の検出を行う.そしてその検出結果に基づいてフィルタゲ インを算出することで,正常な観測情報のみを利用して状態推定値の更新が可能となり,正常な観測情報が間欠的となる状況下においても推定精度の維持を達成 する.また本論文では提案手法における推定誤差の理論的な解析として推定誤差共分散行列の収束性の証明を行う.そしてシミュレーション及び移動ロボットを 用いた制御実験の検証結果より,提案手法を用いることで間欠的観測の検出・補償が行われ推定が精度よく継続されていること,更には推定誤差共分散行列が収 束していることを確認する.
東京工業大学・川口正浩,山北昌毅
プラントモデリングはホワイトボックスモデリングとグレイボックスモデリング、ブラックボックスモデリング に大別することができるが、プラントの物理的動特性が既知の場合、ホワイトもしくはグレイボックスモデリングが適用可能である。詳細な物理的性質を加味し たモデルは複雑すぎて使用できず、代わりに簡略化されたモデルが用いられることがあるが、十分な性能を得られない場合もある。このような問題に対処するた め、本論文では簡易物理モデルと誤差モデルを組み合わせた同定手法を提案する。この手法では、同定されたモデルの性能を向上させるために、物理モデルの推 定誤差を定常誤差と過渡誤差に分けて、それぞれを推定する2つの誤差モデルを導入する。過渡誤差モデルはガウシアンカーネルを用いた非パラメトリックな同 定手法を利用し、この誤差システムにより、簡易物理モデルの推定誤差を補償することで、より正確な推定を実現する。本論文において手法の同定対象として想 定しているものは、自動車の内燃エンジンであり、これはSICEおよびJSAEより、ベンチマーク問題として出題されているものである。