論文集抄録
〈Vol.50 No.5(2014年5月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ 非線形システムのロバスト安定性・不安定性解析―平衡点がシステムの不確かさに依存する場合―

東京工業大学・新井 貴行,科学技術振興機構/東京工業大学・井上 正樹,
東京工業大学・井村 順一,京都大学・加嶋 健司,東京大学・合原 一幸

  本論文では,不確かさを含む非線形システムに対するロバスト安定性・不安定解析手法を与える.先行研究においては,非線形システムの平衡点の位置は不確かさに影響されないという仮定のもとで,ロバスト安定性・不安定性の条件が求められていた.しかし,一般の非線形システムにおいて,この仮定は成り立たない.そこで,我々は平衡点が不確かさに影響される場合の新しいロバスト安定性・不安定解析手法を提案する.そして,不確かさを含む遺伝子ネットワークモデルのロバスト安定性・不安定性解析をおこなう.



■ 消音帯域を考慮した可変摂動型周波数領域同時摂動法によるアクティブノイズコントロールシステムの設計

慶應義塾大学・西田 知世,嶋津 隆大,
本田技術研究所・坂本 浩介,井上 敏郎,慶應義塾大学・足立 修一

 本論文では,消音帯域を考慮した可変摂動型周波数領域同時摂動(Frequency Domain Simultaneous Perturbation: FDSP)法を用いた新しいアクティブノイズコントロール (Active Noise Control: ANC)システムを提案する.従来法である消音帯域を考慮したFDSP法によるANCシステムは,摂動を加えたときと加えないときの誤差信号のみで消音が可能であるが,その収束の遅さが課題であった.提案法は消音帯域を考慮することに加え,現在の誤差信号の大きさに合わせて摂動の大きさを決定する方法である.そのため提案法では誤差信号が大きいときには摂動を大きくすることにより摂動が誤差信号に埋もれることを防ぐため,収束速度の向上が達成される.また,誤差信号が小さいときには摂動を小さくすることで摂動自体が騒音となることを防ぐ方法である.これらの提案法の有効性を数値シミュレーションと実験によって示す.



■ 超音波渦流量計の気泡混入時の管径の影響と信号処理による耐気泡性向上策

日立オートモティブシステムズ・市川 英伸,東京農工大学・岩本 薫,
東京理科大学・塚原 隆裕,川口 靖夫

  超音波渦流量計は異物混入を嫌う半導体製造装置において好んで使用されている.近年,省エネや製造プロセスのコスト削減の観点から,より高度な流量計測の必要性が叫ばれている.しかしながら,超音波渦流量計計測部に気泡が混入すると,超音波が反射して十分な受信電圧が得られず,精度の低下もしくは出力の停止に至る問題があるため,沸騰流体や発泡性流体等には適用できないという課題がある.
 著者らは,製品への導入の容易な信号処理による耐気泡性向上策の検討のため,管径を変えて計測部の可視化実験を実施した.その結果,管径が4.5mmでは超音波が遮断されてしまい,計測が困難であることが分かった.一方,管径8.5mm以上であれば,適切なローパスフィルタを通過させた計測信号のFFT解析から算出した各周波数強度を,さらに周波数で重み付けする,P-FFT信号処理方式を適用することで,気泡混入中の計測信号からカルマン渦の発生周波数を精度よく抽出できることを見出した.



■ ゲーム理論的学習によるMcKibben型空気圧ゴム人工筋のパラメータ推定

奈良先端科学技術大学院大学・内藤 諒,電気通信大学・小木曽 公尚

  本稿では,ゲーム理論的学習の枠組みに基づいてパラメータを推定する方法 を提案する.事前に取得した参照実験データとパラメータ の暫定値を用いた数 値予測結果を比較し,その誤差 (効用) を評価することでナッシュ均衡に対応す るパラメータ値を決定する方法である.ゲーム理論的学習の利点は,個々のパラ メータに対して誤差を評価す る点に あり,パラメータベクトルに対して一括り に解を確定させる既存手法(準ニュートン法など)に比べ,各パラメータごとに柔 軟に探索で きる.またもう一つの利点として,提案法は,本来考えたい最適化 問題の実行可能領域を有限個の格子点に限定するため,パラメータ推定に係る時 間 の短縮が期待される.そして最後に,提案法および既存手法を用いて実際の 人工筋システムのパラメータ推定をおこない,効用関数値および計 算時間を比 較し,提案法の有用性を考察する.



■ 漏洩同軸ケーブルを用いた車両位置計測技術に関する一検討

三菱電機・辻田 亘,猪又 憲治,仲嶋 一,平位 隆史

  近年,国内では交通事故件数が減少傾向にあるにもかかわらず,高速道路における死亡事故は増加している.現在の交通監視システムは,カメラ等に よる定点計測で車両検知を実施しているため観測の空間分解能が低い.この問題点を解決するため,線状アンテナである漏洩同軸ケーブル(LCX)を 用いた車両検知センサを提案する.これは,高速道路脇にLCXを設置しレーダー技術に基づいて走行中の車両の位置を連続的に計測するもので,観測 の空間分解能を大幅に改善することが期待できる.本報では,LCXを利用して車両の走行方向と車線方向の2次元位置を計測する技術を開発した結果 について述べる.物体を複数の伝搬経路で観測し得られた伝搬遅延時間から,物体の2次元位置を幾何学的に推定する方法を提案し実験によりその有効 性を確認した.



■ 細胞観測のためのバイオイメージング手法

香川大学・奥田 泰丈,高橋 悟 ,理化学研究所・川端 邦明,北海道大学・金子 俊一

  細胞観測に関する研究は幅広く行われ,生物工学分野や医療分野への応用が期待されている.しかしながら,挙動分析などに用いられる動画像を一枚ずつ分析する際,細胞観測の多くは生物学者の目視によるものが殆どであり,多大な時間的コストを有する.また,疲労に伴うバイアスの発生や目視計測の精度低下といった課題がある.これらの課題を解決するために,本論文では,細胞の移動軌跡からその挙動分析を行うために必要な細胞観測支援に向けた細胞の自動検出追跡のためのバイオイメージング手法の提案を行う.提案手法では,画像輝度変化に頑健な方向符号照合法を用い,かつ複数枚テンプレート画像間における各画素の方向符号の変動から重み値を算出し照合に利用することで,細胞の形状変化に対応可能な細胞の検出を行う.さらに,細胞の不規則な運動や各細胞の個体識別のため,微小時間内にて等加速度直線運動に従うと仮定し,かつ重み付き複数枚テンプレート照合に基づく尤度関数を設計し,二重尤度関数に基づく粒子フィルタを構築する.そして、細胞の時系列位置推定を行いながら不規則な運動を伴う細胞の個体識別を施す.上述した複数枚テンプレート画像を用いた方向符号照合法と二重尤度関数に基づく粒子フィルタを併用し,細胞の検出追跡を実施する.



■ タイヤ力の飽和と荷重移動を伴う四輪車両の非線形モデル予測制御

川崎重工業・水野 康平,大阪大学・橋本 智昭,京都大学・大塚 敏之

 本研究では,四輪車両における荷重移動やタイヤの滑り特性から発生する非線形ダイナミクスを考慮した車両の走行制御手法を提案することを目的とする.ここでは,非線形モデル予測制御手法を採用し,その数値解法としてC/GMRESと呼ばれる高速アルゴリズムを適用する.急峻な曲がり角を目標軌道とした軌道追従制御問題に対して,数値シミュレーション及び市販の模型車両を用いた実機実験を行い,提案手法の有効性を確認する.


[ショート・ペーパー]


■ 既約分解表現を用いた制御系に対する強安定率の概念

 岡山大学・矢納 陽,見浪 護,松野 隆幸

  安全性の観点から,制御系は補償器自身も安定な強安定系が望ましいと考えられる.これまで著者らは既約分解表現を用いて強安定系の構成法を提案してきたが,フィードバックによって入力側に戻されていた信号が0になった強安定系における開ループ応答は,定常値に落ち着くものの目標値から大きくずれる場合があり,この状態は安定であるが安全とは言えない.そこで本論文では,強安定系が構成できているという前提のもとで,閉ループ系と開ループ系の定常ゲインの比を強安定率として定義し,新しく導入するパラメータによって提案する強安定率が調整できることを示す.