論文集抄録
〈Vol.51 No.3(2015年3月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ SO(3)上の勾配法に基づく協調視覚環境モニタリング

東京工業大学・舩田 陸,畑中 健志,藤田 政之

  本論文では,3次元空間上に設置された回転運動のみを可能とする複数の視覚センサで構成される視覚センサネットワークが,2次元平面で表される環境を協調してモニタリングする問題について考察する.まず,本環境モニタリング問題をSO(3)上の最適化問題として定式化し,SO(3)上の勾配法に基づいた制御手法を提案する.つぎに,視覚センサが取得する画像データから環境上の各点の重要度を推定するアルゴリズムを導入することで,本提案手法がモニタリング対象の事前情報がなくとも実装可能であることを示す.このことは未知の環境のモニタリングに対しても,本提案手法が適用可能であることを意味する.さらに,上記の重要度推定アルゴリズムを複数の画像データに対して実行し,その計算時間を計測することで実時間における可解性を検証する.最後に,本提案手法の有効性をシミュレーションにより検証する.


 

■ 周波数依存型非線形最適制御による回転型柔軟倒立振子の振り上げ安定化

名古屋大学・山口 恭輔,坂本 登

  柔軟倒立振子の安定化制御は,太陽電池パドルやテザーなど柔軟構造を有する人工衛星に対して,制御系設計時に無視した振動モードに起因するスピルオーバ不安定を回避するための制御法の検証を目的として数多くの研究が行われてきた.本稿では,柔軟構造を有する人工衛星の姿勢制御を想定して,柔軟倒立振子の非線形最適制御則による振り上げ安定化問題を考察する.剛体モードのみを制御モードとして,スピルオーバ不安定を回避する振り上げ安定化制御を達成するため,周波数依存型最適レギュレータを非線形システムに適用する周波数依存型非線形最適問題を考える.制御系の導出には安定多様体法を用いて,ローパスフィルタを付加した拡大系非線形システムに対するHamilton-Jacobi方程式を解き,シミュレーションと実験により回転型柔軟倒立振子の振り上げ安定化を達成した.これまでに柔軟倒立振子の振り上げ安定化について報告された例はなく,本稿が初めての例である.


 

■ ブーリアンネットワークのネットワーク構造とダイナミクス多様性

京都大学・吉田 卓弘,東 俊一,杉江 俊治

  ブーリアンネットワークは,遺伝子ネットワークの数理モデルとしてよく用いられており,システムバイオロジにおいて重要な研究対象のひとつとなっている.そのため,近年盛んに研究が行われており,様々な成果が得られている.一般にブーリアンネットワークは,ネットワーク構造と個々のノードの入出力関係の組として完全に記述できる.
 このようにブーリアンネットワークを捉えたとき,前者を固定し,後者の自由度によってどの程度多様なダイナミクスが生成できるかは興味深い問題である.実際,ネットワーク構造だけの情報を用いてダイナミクスの特徴を解析することは構造的解析と呼ばれるが,ダイナミクス多様性は,そのような構造的解析の難しさに対応する.
 そこで,本論文では,ブーリアンネットワークのネットワーク構造とダイナミクス多様性の関係を明らかにする.まず,ブーリアンネットワークのダイナミクス多様性を,状態遷移グラフの同値類として定義する.そして,ダイナミクス多様性のタイトな上限を,ネットワーク構造のトポロジ,特に,各ノードの入り次数によって特徴付ける.最後に,いくつかの代表的なグラフを取り上げ,ネットワーク構造とダイナミクス多様性の関係を示す.


 

■ 系統連系PWMインバータ制御系の包括的設計法

北見工業大学・小岩 健太,梅村 敦史,高橋 理音,田村 淳二,榮坂 俊雄

  本論文は分散型電源を既存の電力系統に接続する際に用いる系統連系インバータ制御系の包括的・体系的な設計法を提案している.本制御系設計法によれば,一般に系統連系インバータ制御系に求められる以下の制御要求を満たすことができる.
1.系統に流れ込む電流が正弦波電流目標値に対して低歪みで高速に,定常偏差なく追従すること.
2.電力系統電圧の変動やシステムモデルの不確かさなどの影響を受けにくい(ロバストである)こと.
提案する設計法は補償限界形制御系設計理論に基づいているため,実現可能な線形制御系の全てを対象として,多様な複数の制御目的を合理的に考慮することができ,試行錯誤による調整が軽減できるという特徴を有している.
提案手法により設計された制御器は,最適レギュレータ理論による従来制御器と比較され,実際的計算機シミュレーションにより,その優位性が示された.


 

■ 運転時分制約の可視化による列車運転支援インタフェース

 京都大学・工藤 大輝,堀口 由貴男,椹木 哲夫,中西 弘明

  本研究では,作業制約に対する認識や理解の違いが運転士間のパフォーマンスのばらつきを生む要因の一つであるとの認識の下,制約を可視化し知覚的な手がかりとして顕在化させる列車運転支援インタフェースの開発に取り組んだ.具体的には,列車運転に関係する制約群の中で「基準運転時分の遵守」に焦点を絞り,この達成を補助する2つの可視化を作成した.これらの設計はそれぞれ,タスク分析の2つの異なるアプローチに着想を得ている.運転時分制約の可視化は,自車の現在の速度を,定刻に目標停止位置に到達し停止できる速度範囲とともに表示する.そのため,運転士は自車の状態を基準運転時分の遵守という作業文脈の中で明確に意識することができる.一方,定刻到着運転手順の可視化は,時刻表の作成に用いられたランカーブを利用して,正確な運行を実現する操作手順とそのタイミングを具体的に指示する.これらの支援効果は列車運転シミュレータを用いた実験により評価された.調査の結果,制約可視化は,操作者の経験を回復可能な範囲内に限定するが,手順可視化のような強い誘導を与えず,主体的に判断を下す余地を操作者に残すため,支援情報に過度に依存しない運転技術の獲得を促すことを確認した.


 

■ モデル縮約に基づく非線形偏微分方程式の最適フィードバック制御

京都大学・濱口 謙一,西田 豪,名古屋大学・坂本 登,京都大学・山本 裕

  本論文では,非線形分布定数系に対して,安定多様体法を用いた最適フィードバック制御器の一設計法を提案する.安定多様体法により,非線形最適制御問題におけるHamilton-Jacobi方程式の安定化解を計算する事ができる.
 この手法を,固有直交分解(POD)とGalerkin法により得られた縮約モデルに対して適用する事で,有限次元の制御器を設計する事ができる.
 その設計法の実行可能性は,Burgers方程式のフィードバック制御に関する例題によって示される.


 

■ 相対情報に基づく3次元群れ制御

東京工業大学・伊吹 竜也,Daniel SEITZ,畑中 健志,藤田 政之

  本論文では,Reynoldsが提案している群れ運動の3法則に基づき,3次 元空間上の群れ問題について考察する.まず,制御対象として3 次元空間上の剛体運動モデルと剛体間の情報交換構造を 表すグラフから成る剛体ネットワークを提案する.
 つぎに,群れ問題の部分問題として,集合・整列を目的とする位置・姿勢同期問 題を再考察し,相対情報のみに基づく制御則に対しても位置・姿勢同期が達成さ れることを示す.さらに,本研究の制御目的としてReynolds の3法則に基づいて群れ運動を定義 し,位置・姿勢同期則に衝突回避則を加えた相対情報に基づく群れアルゴリズム を提案する.
 また,提案アルゴリズムに対して収束性解析を与え,シミュレーションにより 提案制御則の有効性を確認する.


 

■ 推定Hessianを利用したノンパラメトリックPWAモデルの構築法

京都大学・藤本 悠介,丸田 一郎,杉江 俊治

  近年,制御対象の複雑化と制御仕様の高度化から,非線形システム同定の重要性がますます高くなってきている.特に近年注目されているのが,多数のデータ点により写像を表現するノンパラメトリックPWA(Piecewise Affine: 区分的アフィン)モデルである.このモデルは自由度が高く,複雑な写像も表現することができる.このモデルの有効性は実システムであるモータの同定などを通して示されているが,既存の同定法は計算量が大きいという問題点があった.この問題のために,このモデルを用いた同定法を状態あるいは入力が高次元であるようなシステムに適用するのは困難であった.ここで,この計算量は主としてモデル表現に要するデータ点の数に起因していた.そこで本論文では,より少数のデータ点でこのノンパラメトリックなモデルを構築する方法を提案する.これにより計算量を削減することで,このモデルを用いた同定法をより複雑なシステムに適用することが可能となる.具体的には,少数のデータ点で精度良くモデルを表現するためにはどのような場所に点を配置するべきかの考察を行い,それに基づく点配置アルゴリズムを提案する.また,提案法の有効性を,数値シミュレーション及び実機であるモータの同定を通して確認する.


 

■ 気体濃度予測のためのカルマンフィルタを用いた伝播係数推定

慶應義塾大学・徳本 晋一郎,入田 隆,滑川 徹

  本論文では災害対策の研究の一つとして, 建物や地下空間で火災が発生した際に, 火災によって発生する一酸化炭素や, 有毒ガスなどの気体濃度の短期未来の予測を行うことよって, 危険区域がどのように拡散していくかを予測することを目的とする. 気体濃度の短期未来の予測を行うための手法として, 周囲のエリアとの相関性を表わす伝播係数という概念を導入する. そしてカルマンフィルタを用いて伝播係数と気体発生量の推定を行い, それらの推定結果を用いることで短期未来の予測を行う. さらに, 本論文では火災等の災害を考えているため, 推定の最中にセンサが故障することが想定される. そのため本論文では, センサ破壊が生じるような場合においても推定が行えるような, 耐故障性を有したシステムの構築も行う.  そして最後にこれらの提案手法の有効性を簡易な建物を模した実験環境による実験によって検証する.