論文集抄録
〈Vol.51 No.4(2015年4月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ Multiple Model Approach による構造化ロバスト制御器設計法を適用した放射線モニタリング無人固定翼機の飛行制御則設計-福島県浪江町における放射線モニタリング飛行-

宇宙航空研究開発機構・佐藤 昌之,村岡 浩治,穂積 弘毅,
日本原子力研究開発機構・眞田 幸尚,山田 勉,鳥居 建男

  東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大量の放射性物質が周辺に飛散したことから,近隣地域の無人システムによる放射線モニタリングの必要性が高まっている.本稿は,そのような無人システムの一つである放射線モニタリング無人固定翼機 UARMS(Unmanned Airplane for Radiation Monitoring System)の飛行制御則設計および福島県浪江町にて実施した放射線モニタリング飛行について報告する.採用した飛行制御則はPID制御からなる安定性/操縦性増大システムとPID制御からなる誘導ループという従来型の構成としたものの,multiple model approachを用いることで構造化ロバスト飛行制御則を設計した.設計した飛行制御則は飛行試験による検証を行った後,2014年1月24日に福島県浪江町において放射線モニタリング飛行を実施し,最大約10 [m/s]の風が吹く中,水平面内3[m],鉛直面内約5[m]の精度で位置制御を達成した.また,低高度を自動飛行することから計測線の間隔を狭くでき,結果として既存のモニタリングツールの一つである有人ヘリコプターより高解像度なモニタリングが可能であることも確認できた.


 

■ 冗長シリアルリンクロボットの多点接触における衝突回避制御

電気通信大学・田中 基康,佐藤 順亮,田中 一男,京都大学・松野 文俊

  著者らは冗長シリアルリンクロボットを用いたマッサージの研究を行っている.人間が行うマッサージでは,対象部位の固定および圧迫のために複数箇所を同時に接触させる制御が必要となる.一方で,所望の部位以外への接触によって人間が痛みを感じると,筋の二次的緊張が生じて筋の弛緩を妨げる場合がある.よって,所望の部位以外には極力接触しないよう衝突回避制御を行う必要がある.
 本研究では,冗長シリアルリンクロボットが体幹上の複数の制御点を対象物体に接触させる制御において,制御点を任意の数とした場合の制御と,冗長性を用いた新たな衝突回避方法を提案する.提案手法は複数の制御点を同時に干渉なく制御できるほか,複数箇所の衝突回避をトレードオフなく実現することができる.まず制御対象のモデル化を行い,複数制御点を目標値に収束させる制御則を導出する.このロボットは所望の動作を実現する入力が一意に定まらないという冗長性を有しており,冗長性を用いて副次的な目標であるサブタスクを達成できる.サブタスクとして制御点間のリンクと対象物との衝突回避を考え,複数のサブタスクがトレードオフなく同時に実現できる入力設計方法を提案する.そしてシミュレーションにより提案制御則の有効性の検証を行う.


 

■ 音声対話システムにおける挨拶発話の適切なタイミング生成

金沢工業大学・小林 弘幸,大村 卓矢,山本 知仁

  近年音声対話システムがクラウドシステムと融合する中で,一般ユーザが使用できるサービスとして普及しつつある.このような状況において,そのユーザビリティを考えたとき,人同士の対話からみるとそれらはまだ十分でないと考えられる.その理由として,現在の音声対話システムが発話タイミングのようなノンバーバル情報を,十分に考慮していないということが挙げられる.本研究では,現在利用されている音声対話システムのプラットフォームを利用して,反応潜時長の制御を行う簡単な音声対話システムを構築し,システム動作の評価とユーザの印象評価を行った.結果として,反応潜時長を固定で提示した場合,誤差が20msec程度で提示できることが明らかになった.また,固定の反応潜時長を被験者に示し主観的な評価を行った結果,600msecが最も良い結果を得ることが明らかになった.加えて,複数の潜時長生成モデルの評価を行った結果,固定の反応潜時長もしくは緩やかに発話長に同調するモデルが,最も良い評価を得る傾向があることが明らかになった.今後はさまざまな「文脈」を含むより一般的な対話に近い実験を行い,発話のリズム構造を体系的に明らかにしていくと同時に,音声対話システムへの導入を考えている.


 

■ 初期設計段階における多関節ロボットアームの最適な関節数,リンク長,軌道に関する研究

早稲田大学・金 亨俊,山川 宏

  従来多くのロボットアームの関節数やリンク長は経験的に決定しているが,初期設計の段階から関節数やリンク長を最適化することによりコストや効率の面でより幅広い設計が可能と考えられる.そこで本研究は,初期設計の段階における最適な関節数やリンク長を求められ,かつ続く詳細設計にも対応できる汎用性のある手法を提案する.最適な関節数やリンク長は軌道,障害物,作業環境などに影響を受け,最適解を求めることは簡単ではない.この最適化問題を行うためには冗長自由度の発生問題,軌道創生,目的関数選択の三つの課題を解決する必要がある.したがって,最適化は冗長自由度の利点である消費エネルギー減少や特異点の回避に注目し,冗長自由度の関節角度やSpline曲線のコントロールポイントを設計変数として扱い,消費エネルギーや可操作度を評価関数として定式化する.定式化された最適化問題は遺伝的アルゴリズム(GA)を基づいた多重ループにより解を求める.さらに最適化の結果に基づいたモデル実験も行うことによりその有効性を検討する.最後に通常のロボット作業で多く見られる三次元空間内のロボットアームを対象として平面内の手法を発展させた最適化手法を提示し,その有効性を検討する.


 

■ 側面設置型多指ハプティックインターフェイス

 岐阜大学・遠藤 孝浩,川﨑 晴久,大阪芸術大学・中川 志信,
イー・バレイ・山下 誠治,テック技販・土屋 陽太郎,丸富精工・石榑 康彦

  本稿では,人間の5本指に3次元の力覚を提示しつつ,複数指での小物体の把持操りを可能とするハプティックインターフェイスの提案を目的とした.小さい仮 想物体の把持操りが可能となるよう,操作者の手を包み込むかたちでデバイスを設置する側面設置型多指ハプティックインターフェイスという概念および機構構 成の提案を行った.このように操作者の側面にデバイスを設置することで小物体操作を可能とするが,このため,操作者の手とハプティックインターフェイスが 干渉しにくい機構構成とその制御法が課題であった.そこで,ハプティック指は4関節3自由度とし,操作者との干渉を低減する構成にするとともに,制御シス テムを開発し,操作者とインターフェイスの干渉を回避する干渉回避制御を実現し,実験によりその有効性の検証を行った.また実験においては,提案するイン ターフェイスにて,仮想環境における小物体操作が可能であることも検証した.本インターフェイスは,これまで人間にしかできなかった巧みな作業をロボット 等に教示/指示できるインターフェイスとして使用でき,自動化ニーズの要望が高い製造業分野における組立・物流行程の自動化,極限作業分野における遠隔操 縦など様々な分野において応用が期待できると考える.


 

■ 磁界変化に基づいた固定子巻線の短絡コイル挿入スロットの特定手法の提案

トーエネック・中村 久栄

  本論文は,電動機固定子内部の磁界を変化させることで,短絡が発生しているコイルが挿入されているスロットを容易に特定できる手法を提案する.本論文では,はじめに固定子巻線において短絡が発生したときに起こる現象について考察する.そして,その現象に基づいて,短絡コイルが挿入されているスロットを特定する技術について提案する.次に,スロット上の磁束密度を計測する小型の磁束密度センサを製作する.最後に,その小型磁束密度センサを用いた実験により,提案手法の有用性を検証する.


 

■ McKibben型空気圧ゴム人工筋モデルの妥当性

奈良先端科学技術大学院大学・浦邊 研太郎,内藤 諒,電気通信大学・小木曽 公尚

  本研究では,McKibben型空気圧ゴム人工筋モデルの妥当性を調べるため,製造元の異なる人工筋4種類を対象にモデルのパラメータ推定をおこない,各 人工筋のモデルと実機から得られる定常応答および過渡応答を比較する.その結果,定常応答および過渡応答で見られる各種人工筋の特性や差異をモデルが再現 しており,我々が提案する人工筋モデルは妥当であることを確認した.


 

■ FBGセンサを用いた収縮期血圧計測における基礎検討

信州大学・高木 翼,石澤 広明,児山 祥平,新村 正明

 近年,独居高齢者の健康状態モニタリングや健常者の自己健康管理などのためのバイタルサイン測定システムの需要が増加している.本研究では光ファイバ歪セ ンサであるFiber Bragg Grating (FBG)センサを使用した低拘束でウェアラブル測定が可能なバイタルサイン測定器の開発を目指している.FBGセンサは光ファイバセンサであることか ら,多くの特徴を有し,それらの特徴はバイタルサインセンサに適していると考えられる.
本報告ではFBGセンサを手首と肘に固定し動脈の伸縮を 体表面からひずみとして捉えることで脈波を取得した.手首と肘から取得した脈波の対応するピークの時間差から収縮期血圧を算出し妥当性を示した.また FBGセンサで得られる脈波の種類と基準点,測定部位を肘と手首としてPTTを計測した際の血圧測定精度と誤差要因について報告した.