論文集抄録
〈Vol.52 No.1(2016年1月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ ゲインスケジューリングモデル予測制御によるHEVの燃費最適化

慶應義塾大学・井山 仁志,,須田 貴俊, いすゞ・西頭 昌明,瀬戸 洋紀,
工学院大学・向井 正和,,慶應義塾大学・滑川 徹

  本稿では,ゲインスケジューリングモデル予測制御によるスプリット式HEVの燃費最適化を提案する.複雑なパワートレインを持つHEVには,エンジンとモータの動力を最適に分配するエネルギーマネジメントアルゴリズムが不可欠である.このアルゴリズムにより,走行区間で燃費最適化,ドライバの要求する走行の実現,バッテリの状態管理を行う.本稿では,このエネルギーマネジメントアルゴリズムの設計問題を扱う.
 具体的には,時々刻々と走行状況が変化するHEVにおいて,走行状況やパワートレインの状態をフィードバックし逐次最適化を行うことのできるモデル予測制御によるエネルギーマネジメントを行う.
HEVは時変システムであるため,動作点に適したパラメータを設定し,制御対象を線形パラメータ変動システムとして表現し,それに対してゲインスケジューリングを適用し,前述のモデル予測制御と融合させたゲインスケジューリングモデル予測制御系を設計する. 始めに,ベンチマーク問題について言及し,HEVのモデリングを行う.次に,提案するゲインスケジューリングモデル予測制御によるエネルギマネジメントシステムを設計する. 最後に,提案した制御則の有効性を数値シミュレーションにより結果を示し,従来法であるルールベース制御の結果と比較検証する.


 

■ 周波数領域における事前情報を考慮した部分空間同定法

慶應義塾大学・阿部 侑真,井上 正樹,松林 綾香,足立 修一

  本論文では,周波数領域で特徴付けられたシステムの事前情報を,同定モデルに組み込む部分空間同定法を提案する.まず,システムの全周波数帯域での特性を,KYP補題を用いてシステム行列に関して線形な行列不等式に変換する.この行列不等式を部分空間同定法の制約として用いることで,指定した周波数特性を含むモデルを構築することができる.また,提案法を応用することで,事前情報がある周波数帯域のみの特性である場合にも適用できる部分空間同定法を提案する.最後に,これらの提案法の有効性を数値例で検証する.


 

■ 2レベル階層型PTZカメラセンサネットワークによるイベントトリガ型協調追跡

大阪大学・瀬川 昂平,浜田 健太,林 直樹,高井 重昌

  近年,扱える情報量の多さからカメラセンサネットワーク(CSN:Camera Sensor Network)が次世代の監視システムとして注目されてきている.本論文では,Pan-Tilt-Zoom(PTZ)カメラを用いて複数のターゲットを追跡する2レベル階層型の手法を提案する.この手法では,追跡を行うためのカメラ間の局所的な通信と,ターゲット割り当てを行うためのコーディネータとの大域的な通信を組み合わせることによりターゲットの追跡を行う.ターゲット割当問題は0-1整数計画問題として定式化する.割当問題の計算負荷を減らすため,割り当てられているターゲットを追跡困難になったときのみに割当問題を解きなおす,イベントトリガ型の手法を提案する.また,シミュレーションにより提案手法で正しくターゲットを追跡できることを確認する.


 

■ 群ロボットの隊形制御における指数関数を用いた外挿手法の提案

北陸先端科学技術大学院大学・神ノ尾 淳,丁 洛榮,宮崎大学・李 根浩

  本論文においては,群ロボットにおける通信損失時の適切な位置推定手法について議論を行う.群ロボットの隊列制御において,既定の幾何形状を形成するためには,ロボット同士が互いの位置情報を交換する必要がある.しかし,無線通信においては,ロボット同士の通信が行えないという事態がしばしば発生する.このため,ロボットは通信損失時に何らかの方法で失われた位置情報を推定する必要がある.この問題に対する一般的な取り組みとしてはEKF(拡張カルマンフィルタ)やPF(粒子フィルタ)などの適用が考えられるが,これらのフィルタは多くの計算量を必要とする場合が多く,限られた計算能力しか持たない群ロボットに直接適用することは難しい.このため,本論文においては計算量を抑えつつも高い精度でロボットの位置を推定する手法について提案する.具体的には外挿式として指数関数を用いることで少ない計算量で高い推定精度を実現する手法を提案し,その数学的特性について解析するとともにその有効性についてシミュレーションによる検証を行った.その結果,本提案手法は群ロボットのformation制御における位置推定に有効なことを確認した.


 

■ ヒトの下肢運動に関わる不変量としての筋シナジー

 大阪大学・富永 健太,日立製作所・飯村 太紀,
大阪大学・植村 充典,平井 宏明,宮崎 文夫

 身体運動の冗長性に関する問題はベルンシュタイン問題として知られているが,いまだ明確な説明は得られていない.本研究では,機能的な筋の協調作用の観点からこの問題にアプローチし,物理モデルに基づく独自の筋シナジー抽出法を用いて,ヒトの歩行,走行などの下肢運動から筋シナジーを抽出する.そして,それらの下肢運動中の筋活動は被験者間,タスク間で不変の2つの筋シナジーの重ね合わせで説明できることを実証する.さらに,それら2つの筋シナジーの運動学的な機能を明確化する.これらの成果は,ヒトが少数の筋シナジーを柔軟に使い分けることで,多彩なタスク間を実現していることを示唆するものである.


 

■ システムの直列分解に基づく動的量子化器設計

 奈良先端科学技術大学院大学・南 裕樹,京都大学・加嶋 健司

 本論文では,離散値入力制御のための動的量子化器の代数的設計手法を与える.提案手法では,まず,制御対象を二つの部分システムに直列分解する.そして,片方の部分システムの情報を利用して動的量子化器を設計する.この方法により,従来の代数的なアプローチでは困難であった非最小位相系に対する安定な量子化器設計や固定次数の量子化器設計が可能になる.