論文集抄録
〈Vol.52 No.11(2016年11月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ FRITを用いた一般化内部モデル制御器における自由パラメータのデータ駆動型更新

金沢大学・奥谷 明大,電気通信大学・金子 修

  本論文では,Zhouらにより提案された一般化内部モデル制御器の自由パラメータを,データを直接用いることで,設計当初に想定していた所望の性能を発揮するパラメータへと更新する手法を与える.ここでは,とくに一組のデータのみを用いた制御器パラメータの更新手法であるFictitious Reference Iterative Tuning (FRIT)をこの一般化内部モデル制御器に適用するように拡張を行う.そして,FRITによる最適化計算が最小二乗法で可能な点,および評価関数が,内部モデルと実際の対象の変動の相対的誤差を補償するように最小化される点についても述べる.そして,数値例により,本論文での提案手法の妥当性を検証する.


 

■ マッチング理論に基づくアグリゲータによるメカニズムデザインを用いた電力需要管理

慶應義塾大学・池上 余人,永見 健太郎,滑川 徹

 本論文では電力市場における電力需要管理問題を扱う.
 初めに需要家とアグリゲータのモデル化を行う. その際, 各プレーヤーは自身の利益を最大化するように行動を行う.アグリゲータは供養超過が生じる際に, どの需要家がどのくらい供養料を調整すべきかを決定する機関である.メカニズムデザインとマッチング理論を用いて, アグリゲータが電力調整量を決定する手法を提案する.
 最後にシミュレーション検証により, 提案手法が適切に需要管理を行うことができることと需要家の利益を向上させることを確認し, 有効性を検証する.


 

■ 階層協調型モデル予測制御を用いた電力系統の周波数制御

慶應義塾大学・高村 俊, 平中 拓人,滑川 徹

  近年,冷凍分野では過冷却を用いた瞬間冷凍技術が注目されており,実用化にあたっては冷凍過程における凍結状況のモニタリングが必要な技術として挙げられている.
本研究では,凍結過程での水の相状態の変化の定量的な把握を目的に,水による近赤外光の吸光現象に着目し,特定の2波長間の吸光係数の差をベースとした評価指標を提案する.
水の吸光スペクトルは,水が液相から固相に転移するに伴い,そのピーク波長が長波長側にシフトすることが知られている.この波長のシフトは,シフト範囲内にある一つの波長に注目すると,その波長での吸光係数の変化として捉えることができる.本研究では,吸光係数の変化の大きい1410nmと変化のほとんどない1300nmの2波長を選定し,この2波長間のの吸光係数の差を基本量とした評価指標を設定した.
基本特性実験の結果,本評価指標が光散乱等による透過光強度変動や水の厚み変化等の外乱要因の影響を除去できる効果を有することが確認された.また実証実験の結果,過冷却解放時の凍結過程においても,本指標が相状態の検出に有効であることが確認された.
 これらの結果から,提案した評価指標が,凍結過程における水の相変化検出に対して有用性を有することが確認された.


 

■ 走行/駐車の時間経過マルコフモデルと動的計画法に基づく車の使用予測

名古屋大学・佐々木 勇介, 山口 拓真,川島 明彦,稲垣 伸吉,鈴木 達也

  本論文では, 電力系統の周波数制御問題を扱う. 近年, 地球温暖化問題やエネルギー問題などから, 電力系統において再生可能エネルギーを利用した発電機が導入されている. 時々刻々と変化する電力需給バランスを維持する周波数制御を行っている. しかし,再生可能エネルギー型発電機の導入により, 需給バランスを維持することがより困難になる. これに対して, 電力融通を強化することが模索されてきている. これに対して,本論文では, より経済的でより効率的な周波数制御としてモデル予測制御を基にした手法を提案する. はじめに, 制御構造について記述する. その後, 階層協調型モデル予測制御を用いた周波数制御を構成している経済配分と協調型モデル予測制御を用いた周波数制御について記述する. シミュレーションにおいては, 提案手法と従来手法と周波数変動の抑制・燃料費の観点で比較することで, 提案手法の有効性を示す.


 

■ TOF型レーザセンサとパンチルトアクチュエータを用いた実世界クリック方式の提案と生活支援ロボット動作教示への応用

広島市立大学・安孫子 優紀,日髙 雄太,佐藤 健次郎,岩城 敏,池田 徹志

  運動機能が衰えた被介護者が,乱雑な居住環境で働く生活支援ロボットを教示するための直観的なインタフェースについて論ずる.
パンチルトアクチュエータに搭載されたTOF型レーザセンサをマウスで駆動することで,ロボットに操作させたい実物体を「クリック」することが可能となる.実物体をクリックすることで,レーザ長とパンチルトアクチュエータ角度計測により,実物体の3次元位置が得られる.この技術により,実物体とPC内のアイコンとを相互に関係づけるドラッグアンドドロップが実現され,これにより様々なロボットへの命令が生成される.ユーザはレーザセンサ近傍に設置されたカメラ画像を通して部屋全体を見回すことができる.提案したインタフェース実験装置を構築し,スループットと測定精度の観点から,そのユーザビリティと操作能力を評価した.
 最後に,多自由度アームを搭載した移動ロボットを用いて物体搬送タスクを行わせることで,提案手法の有効性を確認した.


 

■ 混合整数計画法を用いたモデル予測制御による1 車線道路への合流経路生成

工学院大学・向井 正和, 野口 凌介,九州大学・川邊 武俊

 本論文では,1車線道路での自動車の合流問題に対してモデル予測制御を用いた合流軌道の生成法を提案する.さらに,その合流の実行可能性に基づいた制御問題の設計について述べる.モデル予測制御を用いることにより,時々刻々変化する本線車両の運動を予測して最適な合流軌道を生成することが可能となる.このモデル予測制御問題は,混合整数計画問題として定式化でき,厳密な最適化に基づいた衝突のない合流軌道を生成することができる.計算機シミュレーションにより,適切な合流軌道が生成可能であることを確認する.また,モデル予測制御問題に含まれる変数をパラメータとして合流可能性を調べ,重みを設計する方法について示す.


 

■ 一般化2自由度PID制御システムの2段階E-FRIT調整法

アズビル・小河 守正, 京都大学・加納  学

  プロセス動特性モデルに基づくPID 設定則に対峙するものが,モデルをまったく必要としない直接的PID調整法である.その一つである E-FRIT (Extended-Fictitious Reference Iterative Tuning) を,一般化2自由度PID制御システムに拡張した.閉ループ状態での目標値変更テストデータだけから,望ましい外乱抑制性と目標値応答性を得るように,コントローラパラメータを二段階で設計する方法である.第一段階では,1自由度PID制御システムでの閉ループテストデータから,擬似外乱信号を生成し,望ましい外乱抑制特性を満足するようにPID設定値を定める.第二段階では,そのPID設定値を持つ2自由度PID制御システムにおいて,    望ましい目標値応答特性を与える2自由度パラメータを求める.
 本論文では,まず,開発のねらいを説明する.次に,二段階設計法のアルゴリズムを詳述する.最後に,ボイラー主蒸気圧力制御を対象に数値検証し本方法の有用性を示す.


 

■ 位相リセットが多足歩行に及ぼす影響のシンプルモデルを用いた解析-進行波,後退波,わき出し波の存在-

東北大学・安部 祐一,京都大学・青井 伸也,土屋 和雄,松野 文俊

 多足生物は幾つかの秩序だった歩容を生成する.ヤスデは遊脚が後ろから前に進んでいくような歩容(進行波)を生成し,あるムカデは遊脚を前から後ろに進めて歩行する(後退波).進行波と後退波がわき出す部分をもって共存する歩容(わき出し波)もヤスデにおいて観測されている.しかし,歩容は身体と神経系の環境を通した複雑な相互作用の結果として生まれるため,この歩容生成メカニズムはよく分かっていない.
 本研究では,局所センサフィードバックが多足歩行に及ぼす影響のシンプルモデルを用いた解析を行う.矢状面上で多足シンプルモデルを構築し,位相リセットの影響を受ける振動子で各脚を駆動する.各振動子間には直接の相互作用はないにも関わらず,位相リセットを通した環境との相互作用により,生物で観測されるような3つの歩容(進行波,後退波,わき出し波歩容)が創発することがシミュレーションで確認された.これらの結果は,局所センサフィードバックが生物やロボットの歩容生成に重要な影響を与えることを示唆する.さらに,この歩容の特徴を明確にするために,物理的仮定の下で歩容を解析的に導出する.結果,脚数によらずに,これら3つの歩容がシステムに存在することが示唆される.