論文集抄録
〈Vol.52 No.5(2016年5月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ 非最小位相系に対する分散評価に基づく外乱抑制FRIT法

首都大学東京・石井 友貴,増田 士朗

 本論文は,分散評価に基づく外乱抑制型Fictitious Reference Iterative Tuning(FRIT)法を提案する.分散評価に基づく外乱抑制型FRIT法 は,すでに最小位相系に対して提案されている.しかしながら,先行研究で は,不安定な極零キャンセルによる内部不安定化のために,非最小位相系に対 して適用することができない.そこで,HuangとShahの非最小位相系に対する 制御性能評価に関する文献において導出されている一般化インタラクタを利用 したH2最適制御器を本論文に応用することを考える.加えて,われわれは, データ駆動型制御器設計法の評価関数の最適化を行なうことが,プラントモデ ルと制御器を獲得する評価関数を同時に最適化することと等価であることを証明する.また,提案法の有効性を確認するために数値例を与える.


 

■ 少数個体の鮎(Plecoglossus Altivelis)が形成する群れとその個体数による振る舞いの変化

筑波大学・新里 高行,早稲田大学・村上  久,筑波大学・三具 和希,早稲田大学・都丸 武宣,
大阪大学・西山 雄大,立命館大学・園田 耕平,早稲田大学・郡司 ペギオ幸夫

  本稿では,少数個体の鮎(Plecoglossus Altivelis)が形成する群れの運動を解析し,そこから現れる個体数による振る舞いの差異を明らかにする.本稿で主張する論点は次の大きく分けて三点である.
 一点目は,鮎は個体数によらず探索・搾取のトレードオフをうまく解消するレヴィウォークを行っていること.
 二点目は,群れの中のリーダー的な役割をはたす個体がランダムでないタイミングで切り替わっていること.
 三点目は,未知の環境に置かれた時,鮎は個体数によってその探索範囲を変えていること.
 以上の三点の事実から,群れの中で個体は強い揺らぎにさらされていながらもある秩序を維持し,さらに,相互作用の個体数の違いによってその探索方法を変更していることが明らかとなった.これらの結果は群知能をはじめとした現象を理解するのに重要な結果となりうるだろう.


 

■ 脳の数理モデル構築を目的とした RTミドルウェアの応用と結果

電気通信大学・占部 一輝,中村 大樹,佐藤 俊治,韓  雪花

 脳は典型的な複合システムであり,視覚の画像処理,聴覚や触覚などのセンシング処理,運動制御を行う.著者らは脳による複合的情 報処理、特に視覚情報処理のシミュレーションを目的としたソフトウェア基盤を,RTミドルウェア及びOpenRTM-aistを基に構築し た.OpenRTM-aistはロボットシステムを目的とした基盤であるため,視覚数理モデル用のデータ型,共有メモリの使用とその自動判別機能 を持つソフトウェアライブラリなど,視覚研究に必要な機能拡張を行った.またOpenCV内の画像処理関数群をOpenRTM-aistのコン ポーネントへ変換するパッケージ;OpenCV-RTCを開発した.これによりOpenRTM-aistで多くのOpenCV関数を利用すること が可能となるため,様々な視覚モデルの構築が容易になる.器官モデルと脳機能モデルの結合を例に挙げ,脳神経系研究に対してコンポーネント指向開 発の重要性を示す.また,複数の既存モデルを再利用することで新規モデルが効率よく作成でき,さらに定量評価値も既存モデルを超えることを示す. 我々は数理モデルの共有,結合,置換が容易に行えるソフトウェア基盤の重要性を主張したい.


 

■ オープンソースGNSSライブラリを用いた遊歩道環境での自律移動ロボットナビゲーションのための位置推定

早稲田大学・塚越 貴哉,明比 建,電子航法研究所・北村 光教,
早稲田大学・鈴木 太郎,天野 嘉春

  近年,屋外環境における車両やロボットの自律移動技術の開発に注目が集まっている.車両やロボットの自律移動技術は,様々なサービスの創出に貢献できるため大きな期待がされている.ここで,自律移動システムの実現において鍵となるのが,高精度かつ信頼性の高い位置推定技術である.屋外環境での位置推定にはGPSに代表される衛星測位システム(GNSS)が利用可能であるが,都市部における自律移動システムにおいて,GNSSはその自己位置推定手法として積極的に利用されていない.その原因として,GNSS受信機がブラックボックス化されているため,他のセンサとインテグレーションが困難であることと,都市部におけるマルチパスによる突発的な測位誤差の発生することが考えられる.我々はGNSS測位の問題を解決するために,オープンソースのGNSS測位ライブラリを利用し,慣性センサとのインテグレーションによることで,ロボットのナビゲーションに適したGNSS測位手法の構築を目指している.本論文では,マルチパスが発生するような遊歩道で自律移動体のナビゲーションを可能とする車両位置推定法について述べ,マルチパス誤差が発生するつくば市 街地において検証実験を行った結果,提案手法が有効であることを確認した.


 

■ 3次元マーカを用いたビジュアルサーボ型水中ロボットの気泡外乱に対する制御特性

岡山大学・矢納 陽,米森 健太,石山 新太郎,見浪 護,松野 隆幸

  本研究ではこれまで水中ロボットの水中自動充電を目指した自動嵌合制御実験を行っているが認識画像に含まれ る外乱に関して対象物の位置・姿勢の認識精度の制御特性の検討は行っていなかった.実海域においては水中ロ ボットと認識対象物間にマリンスノーやチムニーから噴出する熱水が存在する場合もあると考えられるが,これ らが水中ロボットの取得画像の中で対象物を遮るように映り込むと,正確な認識結果が得られず位置・姿勢制御 が乱される可能性がある.すなわち実海域での使用を考えた場合,対象物を遮るように映り込む外乱に対し,開 発中の水中ロボットがどの程度レギュレート性能を発揮できるか確認することが重要な問題である.そこで本研 究では海中での画像認識に対する様々な外乱を気泡によってシミュレートし,実時間遺伝的認識手法のロバスト 性を確認するとともに,気泡外乱中でもビジュアルサーボが可能であることを示す.


 

■ 太陽光型植物工場における連続細霧発生による気温・飽差制御システムの開発

木更津工業高等専門学校・渡邊 孝一,浅野 洋介,栗本 育三郎,
大仙・糠谷 綱希,ダブルエム・狩野 敦,千葉大学・丸尾 達

  異常気象や自然災害の深刻化,高年齢化が進む現代社会において,食の安心安全や農作物の安定した生産が可能な植物工場が求められている.植物工場は,温湿度や二酸化炭素濃度などを制御可能な園芸施設であり,閉鎖環境下で制御を行う人工光型と太陽光を利用し半閉鎖環境で制御を行う太陽光型がある.太陽光型植物工場において,夏季の高温抑制のため細霧冷房システムが用いられている しかし,細霧発生の制御はオンオフ制御であり,植物の光合成に必要な蒸散にとって最適とはいえない.
 本研究では,計測データに基づいて霧の噴霧速度を連続的に調節し,施設内の水蒸気飽差(VPD)を安定化する気温・飽差制御システムを提案する.まず,日射の影響を排除するため同心円2重構造の通風筒で計測した温湿度から算出されるVPDにより霧の噴霧速度を算出する.次に,インバータユニットの圧力変更,噴霧ノズル数の調整,ゲイン調整制御により噴霧速度を変化させながら連続噴霧を行う.細霧による気化熱と窓換気により,気温を下げつつVPDを安定化させる.本論文では,提案システムによる栽培環境での制御効果と収量への寄与を報告する.


[ショート・ペーパー]

■ Box-Cox変換を用いた風力発電出力の非線形モデリングと超短時間先予測

慶應義塾大学・浦田 賢吾,井上 正樹,東芝・村山 大,慶應義塾大学・足立 修一

  本稿では,風力発電出力の超短時間予測をするためのモデリング方法を提案する.提案するモデルは二つの要素の直列構造を持つ.その二つの要素のうちの一つは線形動的部分であり,白色雑音で駆動するような自己回帰モデルで記述される.もう一つの要素は線形動的部分の出力によって駆動する非線形静的部分である.これは,非線形静的部分の出力の分布と風力発電出力の分布を一致させるように決定する.
 構築したモデルは風力発電出力の数秒オーダの一段先予測に利用し,提案法の有効性を検証する.さらに,予測精度とモデリングのサンプリング時間の関係性について数値実験を通して評価を行なう.