論文集抄録
〈Vol.52 No.6(2016年6月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ 無線水素センサの防爆対応

横河電機・林 尚典,早稲田大学・植田 敏嗣,大井川 寛

  地球温暖化への対策として,地球温暖化ガスである二酸化炭素削減のために,水素は,燃焼により排出される物質が水であり,クリーンなエネルギー源であることから,水素をエネルギーとして活用する動きが近年活発化してきており,水素供給のためのインフラとして,水素ステーションや水素製造設備の整備が進められている.本論文では,水素ステーションや水素製造設備の水素漏えい検知システムに水素センサを適用するにあたり,防爆対応について検討を行った.水素ステーションの防爆要件については,防爆基準を考慮して,本質安全防爆 Ex ia ⅡC T4の適用が必要との要求仕様の抽出を行った.この防爆構造に対応するために,水晶振動子型水素センサが有力であり,測定原理や開発したセンサの動作条件を考慮して,適応の可能性を示した.また,白金による温度制御回路の本質安全防爆対応を検討して,回路シミュレーションを行うことにより,適用の可能性を示した.また,センサ信号の通信に工業用無線ISA100.11aを適用して,電源をバッテリとして持ち,無線水素センサとして組み合わせることにより,本質安全防爆対応が容易になることを提案し,その適合性について検討を行い,実用化への可能性とその有効性を示した.


 

■ 歩行中の下肢関節間シナジーにおける足関節の寄与

九州情報大学・橋爪 善光,鹿児島工業高等専門学校・垣内田 翔子, 山口大学・西井 淳

  歩行中の脚関節軌道は一歩毎に若干異なるが,遊脚中期に足先が地面に一旦近づく瞬間等においては,各関節角のばらつきを相殺する関節間シナジーによって股関節に対する足先高さのばらつきが抑えられていることが報告されている.本研究では,関節間シナジーにより調整されている制御量が,歩行中の時期に応じて足先位置から踝(足関節)位置等の他の制御量へと切り替わっている可能性について検討するとともに,関節間シナジーの形成に足関節がいかに寄与しているかを検討した.健常な若者8名の平地歩行中の股,膝,踝,足先の軌道を計測し,UCM解析を用いて股関節に対する足先および踝の位置・速度のばらつきを抑える関節間シナジーの強さを定量評価した.その結果,前期両脚支持期と片足支持期においては股関節の水平速度を,後期両脚支持期から遊脚中期までは股関節に対する足先高さを,遊脚終期においては足関節の鉛直速度を調節する関節間シナジーが観察された.また,後期両脚支持期から遊脚中期における関節間シナジーの形成には足関節が強く寄与していた.以上の結果は,歩行中の時期に応じて関節間シナジーが動的に再編成されていること,その結果,遊脚中には地面に近い足底部位の高さや速度が調整されていることを示唆する.


 

■ 高度熟練技能における数理解析モデルおよび制御解析法の構築ならびに書道の運筆活動における潤渇への適用

東京大学・馬渡 正道,土屋 健介

  熟練技能者が手作業で行っている技能をロボットで自動化する必要性が産業界で高まっている.しかし,人間の動作は言葉で正確に表現することが困難である上に,時間的摂動および空間的摂動を伴っており,このことが自動化を困難にしている.本研究では,書道の運筆作業を題材に取り,モーションキャプチャーを用いて得られたデータにスプライン関数を適用し,技能の数理モデル化を実現する.そして,人間の時間的摂動を適切に処理するために同型変換法という手法を導入し,また空間的摂動を適切に処理するためにMin-Maxノルムを適用した.さらに,可制御性という観点を見出し,構築された数理モデルにこれを導入することによって,自動化の最終的な目標となるターゲット軌道の導出を行った.これにより,可制御性という観点に立った場合の,自動化用の動作の基礎が確立した.


 

■ 一般化最小分散評価に基づく閉ループ同定とむだ時間の推定

首都大学東京・植松 凌太, 増田 士朗

 本論文では,定値制御が行なわれている状況において,確率的な外乱から生成される一組の入出力データを用いて閉ループ同定とむだ時間の推定を同時に行なう手法を提案する.著者らの一般化最小分散評価に基づく閉ループ同定法では,むだ時間が未知の場合,一般化出力の最小分散値を特徴づける多項式が正確な次数で推定できない.そのため,先行研究を効果的に利用するためにはむだ時間をより正確に推定することが必要となる.そこで.提案法では与えられた範囲にあるむだ時間に対して,評価関数値を最小とするシステムのパラメータおよびむだ時間を獲得することで,むだ時間が未知の場合に対応した.また本論文では,むだ時間の推定誤差を多項式の構造的な誤差として考えることで評価関数の解析を行なう.そして,評価関数の最適解の一意性からシステムのパラメータとむだ時間が同時に推定可能であることを示す.最後に,提案法の有効性は数値例を通して確認される.


 

■ 選好を考慮したLQG電力需給ネットワークに対する動的出力統合メカニズムの設計

 早稲田大学・松井 駿,金沢工業大学・村尾 俊幸,
長岡技術科学大学・平田 研二,早稲田大学・内田 健康

  本稿では,ダイナミクスを持つ複数のエージェントおよびユーティリティーからなる次世代の電力需給ネットワークを想定し,観測情報での運用を目指した動的出力統合メカニズムの提案を行う.エージェントは,複数のエネルギー需要者および供給者に対応し,個人利得の最大化を目的とする.一方,ユーティリティーは公共機関に対応し,公共利得の最大化,すなわちエージェントの利得確保と電力需給バランスの維持を目的とする.
 このような2種類のプレーヤーを想定した電力需給ネットワークに対して,再生可能エネルギー源の確率的性質などを考慮するための正規性白色雑音を付加したLQG電力需給ネットワークモデルを構築し,Vickrey-Clarke-Groves メカニズムの考え方に着目した動的出力統合メカニズムの設計を行う.提案メカニズムの下では,各エージェントにインセンティブを与えて,それを考慮した実時間価格策定手法により,エージェントによる利己的かつ戦略的な意思決定を公共利得の最大化に導くことが,コスト汎関数とハミルトン関数の両方を用いて示される.本稿では,提案メカニズムが,個人的最適制御による公共的最適性,誘因両立性,個人合理性の三つの特性を満たすことを示し,さらに数値実験によりそのメカニズムの有効性を検証する.


 

■ 合成開口レーダを用いた遠隔観測型コンクリートひび割れ計測の原理検証実験

三菱電機・星野 赳寛,田中 泰,諏訪 啓,原 照幸

  本論文では,Ka帯(26 GHzから40 GHz)の全偏波合成開口レーダを用いたコンクリートひび割れ計測の原理検証実験について報告する.全偏波合成開口レーダ装置はVNA,RFスイッチ,4つのホーンアンテナからなり,VV,VH,HV,HHの全偏波SAR画像を得る.実験から,VH偏波はレーダ視線方向に生じたひび割れ計測に適することを確認し,一方でVV偏波はレーダ視線方向に垂直な方向のひび割れ計測に適することを確認した.以上の検討から,Ka帯の全偏波合成開口レーダを用いたコンクリートひび割れ計測の有効性を確認した.