論文集抄録
〈Vol.52 No.7(2016年7月)〉

タイトル一覧
[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ マルコフパラメータマッチングに基づく離散時間線形システムの多時間分解能制御

東京工業大学・加藤 拓朗,石崎 孝幸,
東京海洋大学・小池 雅和,東京工業大学・井村 順一

  本論文では離散時間線形システムに対する多時間分解能制御系を設計する.まず,Wedderburnの低階数分解と呼ばれる行列分解法を用いて低 階数モデルを導出する.次に,この低階数モデルを用いた冗長な状態空間表現に基づき,より良い過渡特性を有する安定化補償器を設計する.ここで, 低階数モデルをもとのシステムと同じ可到達部分空間および可観測部分空間を持つように求めることにより,過渡的な振る舞いと残余の振る舞いを陽に 考慮した多時間分解能制御系を系統的に設計できる.また,配電系統の局所的な事故を想定した周波数変動の整定に関する数値シミュレーションを行 い,提案する多時間分解能制御系の有効性を示す.


 

■ ポジティブ2次システムによる細胞内分子間相互作用の表現

東京工業大学・岡本 有司,井村 順一,理化学研究所・岡田 眞里子

  細胞内では,シグナル伝達や遺伝子転写発現制御など,様々な分子間相互作用が存在する.本研究では,細胞内の分子間相互作用を統一的に解析するために,ポジティブ2次システムという,新しいシステム表現を提案する.提案されたシステム表現は,細胞内の分子間相互作用が2次のダイナミクスで表現できること,たんばく質やその他の化学物質の濃度が非負の状態のみ取りうることから特徴づけられる.このモデルを元に,我々は原点の局所安定性の十分条件と,初期値に依存した不変集合と正不変集合を導出する手法を提案する.最後に,この手法が基本的な生物モデルにおいて効果的であることを,数値計算を用いて検証する.


 

■ 遅延結合非線形システムネットワークの同期パターン

首都大学東京・大岡 芳成,小口 俊樹

  近年,多数のシステムの相互結合により構成されるネットワークシステムが,様々な分野で関心を集めている.ネットワークシステムにおける同期問題において,その同期条件の導出や部分同期のパターンの解析は重要な課題である.本論文では,双方向遅延結合により形成された非線形システムのネットワークにおける同期問題について検討している.まず,同期条件の推定法であるスケーリング法を適用する際,ネットワークの構造に対応するグラフラプラシアンの固有値とその対応する固有ベクトルに着目し,発生する部分同期パターンが固有ベクトルの要素から推定可能であることを示す.このことにより,従来の同期パターン推定法のようなシステム数の増加に伴う複雑な計算をすることなく,パターンの推定が可能となる.さらに,大規模ネットワークを容易に構成するグラフ積ネットワークについて検討し,グラフ積ネットワークに対してもスケーリング法が適用可能であること,そして,同期条件と現れる部分同期パターンは,グラフ積の元となるネットワークそれぞれのグラフラプラシアンから推定可能であることを示している.これらの推定法の妥当性は,数値シミュレーションにより検証している.


 

■ 有限レベル変動域を考慮したファジィ・ベイズフィルタに基づく音環境の一状態推定法

県立広島大学・生田 顕,折本 寿子

  音環境においては,対象信号以外の外来雑音(暗騒音)が常に存在し,時には対象信号が外来雑音に全面的に埋もれてしまうような場合さえ生じる.一方,現実の観測データは非ガウス型の複雑な変動形態を示し,さらに例えば計測器における信頼性の存在や許容誤差のごとく,あいまいさを含んだデータのみが得られる場合がしばしばである.さらに,実環境での計測においては,振幅変動の有限性や計測器のダイナミックレンジにも基づいて,現実に摂取できる信頼性のある振幅レベルの変動範囲としては,有限のレベル範囲内に限定された情報であるのが通常である.本研究では,非ガウス型の外来雑音が混入し,しかもあいまいさを含んだ観測データの逐次摂取に基づき,対象とする信号のみの変動波形を推定するための信号処理法を,特に,観測値の有限振幅変動に整合したベータ分布を重みとする直交展開型分布表現を導入することにより提案している.具体的には,展開型ベイズ定理をもとに,新たにメンバーシップ関数を導入しファジィ事象の確率を適用することにより,データのあいまいさと有限レベル変動域にも対処できる一状態推定法を理論的に導出している.さらに,音環境の実データに本手法を適用することにより,その有効性の一端を実験的にも確認している.


 

■ ネットワーク化制御系に対する設計自由度の高い制御構造の提案

熊本大学・岡島 寛,奈良先端科学技術大学・南 裕樹,熊本大学・松永 信智

 近年,ネットワーク通信技術の発達に伴い,ネットワーク化制御系の社会的役割が大きくなっており,精力的に 様々な研究がなされている.情報セキュリティーの観点からもネットワーク化制御系に対する研究は様々な視点から進められる必要がある.こ のとき,実用的なネットワーク化制御系を構築するには,与えられた制御構造の安定性などの解析だけでなく,実用上どのような制御系を構成 することが適しているかを考えて系全体を構築する必要がある.特に,通信路を介した制御の便利さだけでなく,通信路を介した制御の不便さ を陽に考慮して設計がなされなければならない.本研究では,ネットワーク化制御系・遠隔制御系に対して設計自由度の高い新たな制御構造を 提案する.提案する制御構造は,通信量制約に起因した量子化ノイズやパケットロスを想定したシステムに対して性能劣化量の少ない制御系設 計を行うことができる構造となっている.まず,制御系の安定性条件を導出し,設計問題としての定式化を行う.さらに,提案手法の有用性 は,数値シミュレーションにより検証する.


 

■ フィードバックシステムにおける消散性能の強化

慶應義塾大学・浦田 賢吾,井上 正樹

  本論文では,定性的な消散性を表現するだけでなく消散性能を定量的に評価することが可能な動的システムのクラスを提案する.二つのサブシステムが提案するクラスに属するとき,それらのサブシステムをフィードバック接続することでシステム全体の消散性能が厳密に向上することを示す.さらに,消散的なシステムを再帰的にフィードバック接続することによって大規模システムを構築する.このとき,システム全体の消散性能がサブシステムの個数の増加に伴って徐々に向上していくことを示す.そして,サブシステムの個数が無限に増大した究極的な状態では,システム全体の出力は外乱入力の影響を全く受けないことを示す.


[ショート・ペーパー]

■ 魚類追跡タグの試作およびタグ用加速度センサーの特性について

近畿大学・谷本 浩一,天野 亮,越智 洋司,前田 佳伸

  一定期間魚に取り付け,魚の行動を記録し,そしてARGOSシステムを使って回収するポップアップタグを作製した.そのタグには,加速度セン サー・角速度センサー・圧力センサおよび温度センサーが搭載されているが,今回はターンテーブルを使用しその回転速度と加速度の関係から,加速度 センサーの特性を明らかにした.