論文集抄録
〈Vol.52 No.8(2016年8月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ 弾性模擬舌による凝集性抽出効果に基づくペースト状食品の食感評価システム

大阪大学・熊倉 駿,柴田 曉秀,三栄源エフ・エフ・アイ・池上 聡,
中尾 理美,石原 清香,中馬 誠,大阪大学・東森 充

  本研究では,弾性体を用いたペースト状対象物のセンシング問題について議論する.介護用ペースト食品の凝集性を定量化する手法を提案し,ヒトが舌上で感知する食感を評価指標として算出する食感評価システムを構築する.はじめに,圧縮試験装置の接触部に弾性模擬舌を導入する.ペースト食を圧縮する際,模擬舌が受動的に変形して対象物を保持しようとする作用が働く.このとき,ペースト食の素材に依存して保持状態が変化し,その凝集性を浮き彫りにする効果が現れる.この効果に着目し,弾性模擬舌に対するペースト食の凝集性を,圧力分布測定によって定量化する手法を提案する.次に,この手法に基づいた食感評価システムを開発する.ヒトの舌弾性を再現したシリコン製模擬舌を使用し,ペースト食の凝集性(圧力分布特徴量)とヒトが食した際の食感(官能評価値)との回帰モデルから,ペースト食の食感を客観的かつ定量的に評価するシステムを構築する.最後に,5種類の素材の異なるペースト食を用いた実験により,提案手法によって,凝集性の相違を計測可能なこと,ならびに,食感を適切に評価可能なことを示す.


 

■ 大規模線形ネットワークシステムに対する平均値カルマンフィルタ

東京工業大学・渡邉 郁弥,定本 知徳,石崎 孝幸,井村 順一

  本稿では,確率的なノイズが印加される大規模な線形ネットワークシステムに対する平均値カルマンフィルタを提案する.一般に,大規模システムのすべての状態を推定することは,計算コストの観点から困難である. そこで, 提案する平均値カルマンフィルタでは,全状態のうち類似した振る舞いを示す状態の組をその平均値で置き換えることにより,効率よくシステムの大局的な振る舞いを推定することを考える.しかしながら,一般にどの状態が類似した振る舞いを示すかは明らかではないため,そのような状態の組を探す必要がある.これを見つける指標として, 本稿では,外部入力とシステムノイズによる状態の振る舞いに着目して状態の特徴付けを行い,クラスタリングの概念を応用して状態の集約を行う.
 また,本稿では平均値カルマンフィルタの系統的な設計手順を得るために推定誤差解析を行い,推定性能に関する理論的な上界を与える.さらに,電力ネットワークを対象とした数値シミュレーションにより,提案する平均値カルマンフィルタの有効性を示す.


 

■ 能動脚と受動脚の協調システムに基づく腱駆動ヒューマノイドによるペダリング操作の実現

東京大学・木村 航平,浅野 悠紀,上月 豊隆,白井 拓磨,岡田 慧,稲葉 雅幸

  本研究ではヒューマノイドの生活空間における道具の利用及び移動手段としての搭乗物操作を背景とした,ヒューマノイドによるペダリング操作の実現を目的とする.ペダリング操作における制御戦略では,ヒューマノイドと自転車からなる閉ループかつ多点接触型の動的システムといった困難な課題をもつ.このような背景から本研究では能動脚と受動脚に分類されるヒューマノイドの二脚の機能要素に着目する.能動脚はペダルから離脱することなくクランクの回転に作用させる脚であり,受動脚は能動脚によるクランク回転を検知して受動的にペダルを回避させる脚である.これらの脚部の機能によりユニラテラルで協調的な三輪車漕ぎのマニピュレーションを実現する.このとき一般化された操作性について議論し,ヒューマノイドの中でも人間の形態に近い腱駆動ヒューマノイドにおける操作有用性を明らかにする.


 

■ 仮想ライトタッチコンタクトを利用した立位機能評価システム

横浜国立大学・坂田 茉実,島 圭介,島谷 康司

  本稿では仮想ライトタッチコンタクト(VLTC)を利用した体性感覚刺激に基づく立位機能評価システムを提案する.従来,ヒトはカーテンなどの物理的な固定点に軽く触れることで直立姿勢時や歩行時の動揺が安定することが示されており,この現象はライトタッチコンタクト(LTC)と呼ばれる.VLTCは身体の周りに生成した仮想インピーダンス壁への接触反力を指先へ振動刺激として与えて仮想的にLTCの効果を得ることができ,立位姿勢の保持支援が可能である.提案法ではKinect とフォースプレートおよび振動子を用いて被験者の立位状態においてVLTCを構成し,仮想インピーダンス壁からの仮想反力の提示/非提示状態を無作為に変化させる.これにより,指先への体性感覚刺激の有無によって生じる立位姿勢の変化を計測して立位機能を定量化できる可能性がある.実験では若年者と高齢者に対し,開発したプロトタイプによる立位機能の評価を行った.また,若年者のデータを用いて高齢者のデータを標準化することで若年者と高齢者間で違いがみられた.標準化結果に関して各評価指標の絶対値総和を用いた総合評価を行った結果,若年者郡と高齢者群間で有意差が認められ,仮想壁に基づく立位機能の定量化が可能であることが示された.


 

■線形行列不等式による離散時間予見フィードフォワード補償設計

 宇宙航空研究開発機構・濱田 吉郎

  一定時間先までの目標値や外乱に関する情報が事前に得られる場合に,それらを積極的に利用することで制御性能を向上させる制御手法を「予見制御」と呼ぶ.予見制御則の基本的な構成は,通常のフィードバック系と予見情報を用いるフィードフォワード補償部分からなる.
 本稿では,あらかじめフィードバック系が与えられている離散時間系に対して,離散時間予見フィードフォワード補償の設計条件を線形行列不等式(LMI: Linear Matrix Inequality)で記述し,数値的に予見フィードフォワードゲインを得る手法を提案する.従来手法における評価関数が2次形式であるのに対し,提案手法ではH∞ノルムやインパルス応答のピーク値など,LMIで性能条件が記述される評価関数を幅広く扱うことができる.またフィードフォワードゲインそのものがLMIの変数行列として表されるため,保守的でない解としてゲインを得ることができる.例としてH2性能条件およびH∞性能条件を示し,簡単な数値例によって,提案する手法の有効性を示す.


 

■ 凹凸板を用いた熱伝導材料の新しい評価法

 神奈川工科大学・斎藤 靖弘,小室 貴紀

  凹凸板や金属メッシュを利用して熱抵抗測定を行うことにより実装状態におけるTIMの特性を評価する手法を提案して検証を行った.実装状態における熱伝導材料の熱特性を正確に評価することは困難であるが、接触面の凹凸を正確に管理することで再現性良く評価することが可能となった。また、シミュレーションでも接触熱抵抗に相当する要素を再現することに成功した.これにより、従来のAskerC硬度によるType2-TIMの選定方法に加え、接触状態を考慮した熱抵抗値を示すことができたので、熱設計のマージンを減らしてコスト低減が期待できる.