論文集抄録
〈Vol.52 No.9(2016年9月)〉

タイトル一覧
[論  文]


[論  文]

■ l1ノルム最適化に基づくセルオートマトンモデルの同定法

金沢大学・山本 倖大,山本 茂

  本論文では,l1ノルム最適化問題に基づくセルオートマトンモデル同定法を提案する.セルオートマトンは,空間をセルと呼ばれる格子状に離散的に分割し,そのセル上の離散状態の離散時間ごとの遷移を表現する数理計算モデルである.セルオートマトンの各セルの離散状態は,セルの周囲のセルの状態で記述される状態遷移関数と呼ばれる関数に従って遷移し,この関数は max/min関数で記述することも可能である.一般に任意の状態遷移を表現する状態遷移関数は複数の表現方法が存在することが知られており,解析や実用性の観点から,セルオートマトンモデル同定によって簡単なモデルが求まることが望ましい.より簡単なモデルの獲得のために,本論文ではセルオートマトンモデル同定法をl1ノルム最適化問題へ帰着させる.提案する同定手法の有効性をいくつかの数値例を用いて検証する.


 

■ 巡回シフトM系列を用いた多入力1出力系のシステム同定

慶應義塾大学・室井 秀夫,足立 修一

  多入力1出力のすべての入力に共通な極を持つ多項式ブラックボックスモデルの同定入力として,M系列を時間シフトしてそれぞれの入力に印加する,『巡回シフトM系列』を利用することを考える.
巡回シフトM系列はシフト幅とM系列の長さのみを決めればよいため,簡単に設計可能な同定入力である一方で,これらの決め方によっては可同定性を満たさず同定できないことがある.
本論文では,可同定性を満たすための巡回シフトM系列の条件を導出し,数値例によりこれらの条件の妥当性を検証する.


 

■ 無限プラント集合で表わされる変動に対するロバスト強化学習

京都大学・泉田 啓,大坪 立サミュエル,谷 百合夏

  一般的な強化学習問題では,推定プラントで学習した方策を実プラントに適用するが,両プラントの間の誤差が大きいと学習した方策が有効でない場合がある.そこで,誤差に対応した変動を推定プラントに加えた変動プラントの集合に対して学習を行うが,変動プラントは無限個存在する.そこで,この無限プラント集合をプラントの構造と方策のプロパー性との関係に基づいて離散近似する.適切に離散近似して得られた有限集合の全ての元を同時にプロパーにする方策は,元の無限プラント集合の全ての元も同時にプロパーにすることが示される.プラントの構造と方策のプロパー性との関係を用いて,有限プラント集合に対する様々な緩和問題で得られた方策のプロパー性が明らかになる.これらの議論の正当性を数値例によって示す.


 

■ 周波数領域主成分分析に基づく多入出力構造物の音響振動モデル同定ー自動車ロードノイズの推定―

日産自動車/九州大学・高松 吉郎,
日産自動車・藤木 教彰,出口 欣高,九州大学・川邊 武俊

  自動車車室内の静粛化のため,定常走行時に発生するロードノイズの低減は長年の課題である.筆者らは前報告にて,アクティブ構造騒音制御法により制御系を構築し,H2制御法を用いてコントローラを設計する方法を提案した.さらに,台上実験において有用性を実証した.
本論文では,より困難な条件が課される走行時のロードノイズを推定する手法を提案する.路面から侵入する無限次元の振動を,有限個のセンサで観測しなければならない.本論文では,ロードノイズ源となる振動をリッチに計測するために,配置する加速度センサの数と位置を選定する手法を提案する.センサ選定基準である推定モデル精度を見積もる尺度として,マルチプルコヒーレンスを用いた理想制御効果を導入する.
 複数のセンサ信号間に相関関係が存在する多重共線性が成立する可能性が高いうえに,周波数ごとに相関関係が異なる可能性が高い.本論文では,加速度データ行列を周波数領域において主成分分析し,主成分のみを用いて推定モデルを同定する手法を提案する.走行実験で取得した加速度およびロードノイズデータに提案手法を適用し,ロードノイズ推定モデルを導出した.その結果,十分な推定精度で且つ過同定でないモデルが得られた.


 

■ 出力フィードバック制御における出力観測雑音の影響評価

広島市立大学・齊藤 充行,
コンチネンタル・オートモーティブ・切田 滉人,
ボッシュ・市本 貴宏,広島市立大学・小林 康秀,脇田 航

  状態フィードバック制御は,制御系の全状態量がセンサなどを用いて観測できることを前提としている.しかし,実際にはセンサに不具合が生じる(故障する)場合もあり,全状態量が観測できるとは限らない.このような場合の解決策として,使用可能なセンサなどにより観測されたシステムの出力からオブザーバなどを用いずに直接フィードバックする出力フィードバック制御が提案されている.これまでの提案法はシステム雑音の混入は考慮されているものの,状態を観測する際の観測過程(出力方程式)に混入する観測雑音(出力観測雑音)が考慮されていなかった.実際のシステムを考えると,センサなどによる観測過程には多くの場合,種々の雑音が混入し,制御を行なう際に何らかの影響を与えると考えられる.本稿では,出力観測雑音の混入を想定した出力フィードバック制御系に対する出力観測雑音の影響を評価する手段の一つを提案する.この手段は,筆頭著者らによって提案された状態観測雑音の影響を評価する手段を出力フィードバック制御に拡張したものである.つまり,本稿では,操作量があるクラスの出力観測雑音と等価であることを示す.これにより,出力観測雑音の影響を評価する手段を得ることができる.


 

■ コード信号と交渉ゲームを用いたスマートグリッドにおけるリプレイ攻撃の検出

慶應義塾大学・入田 隆,篠原 巧,滑川 徹

  情報通信技術を用いた監視制御データ収集システムに基づくスマートグリッドにおいて, サイバーセキュリティを保証することは主要な課題である. 特に, リプレイ攻撃は完全性及び認証に影響を及ぼす危険なサイバー攻撃とされている. 本論文では, コード信号に制御性能を犠牲にしたリプレイ攻撃の検出法を導入し, 攻撃を早期検出するシステムを提案する. 具体的には, 二人のプレイヤーが互いに協力して合意に至る交渉ゲームにより, 制御性能と検出精度を考慮した制御入力の雑音をオンラインで設計する. そして, 観測値および状態推定値を用いて故障評価行列を定義し, リプレイ攻撃を検出する. 最後に, 数値シミュレーションによって, 本提案手法における有効性を検証する.


 

■ ヘキサロータの動的可操作性に基づく切替位置・姿勢制御

東京工業大学・安田 真大,伊吹 竜也,
防衛装備庁・鈴木 洋史,東京工業大学・三平 満司

  本論文は,6つのロータからなるヘキサロータに対して,新規の位置・姿勢制御手法を提案する.ヘキサロータは,6つの入力を用いて全駆動システムを構成できるため,代表的な2つの制御手法が適用可能である.1つは,ヘキサロータモデルの線形近似に基づく線形制御手法であり,これを用いると水平方向への運動の際にヘキサロータが姿勢を傾ける挙動を示す.もう1つは,フィードバック線形化を用いた手法であり,これを適用するとヘキサロータは位置と姿勢を独立に制御することが可能となる.これらの性質を基に,前者は大きな並進移動に適しており,後者は目標値近傍の精密な制御に適しているという知見が得られているが,ヘキサロータに対してこれら2つを融合させた制御手法は提案されていない.そこで,本論文は重み関数に基づいてこれらの手法を連続的に切り替える新規の制御則を提案する.ここで設計される重み関数は,ヘキサロータの運動のしやすさを表す動的可操作性に基づいて設計される.さらに,提案手法に対して収束性解析を行い,数値シミュレーションによりその有効性を示す.