Vol.53,No.4
論文集抄録
〈Vol.53 No.4(2017年4月)〉
タイトル一覧
[論 文]
- ■ 誘電エラストマーアクチュエータとばねの直列引張構造をもつアクチュエータの動作解析
- ■ 横すべりを考慮した車両の経路制御手法の提案とその検証
- ■ テンソルベースブラインド信号源分離による車両加速挙動の低次元物理モデリング
- ■ 能動膝アシスト装具を適用した自動伸展不全リハビリテーションシステム
[ショート・ペーパー]
[論 文]
■ 誘電エラストマーアクチュエータとばねの直列引張構造をもつアクチュエータの動作解析
和歌山大学・岩政 宏紀,土谷 茂樹
本研究では,平板型DEAとばねの直列引張構造をもつアクチュエータにおいて,エラストマーの粘性を考慮した動作解析を行った.その結果,引張方向に予備伸張を付与することで粘性の影響が小さくなることがわかった.また,最も大きな動作ひずみおよび発生力が得られる予備伸張条件を,荷重がないときおよび荷重があるときについて求めた.さらに,最大変位および最大けん引力に関する目標仕様を満たすためのDEAの積層枚数を求めた.
神奈川大学・江上 正, 渡邊 孝之,梅本 和希
本論文では横すべりを考慮しないモデルに対して提案した点列経路に対する経路制御手法を横すべりを考慮した車両モデルに拡張している.この経路制御手法は横すべりを考慮した車両の位置を表す幾何モデルに対して,経路を計算機と親和性の高い点列で与え,時間軸状態制御形と最近目標点探索を用いた経路制御手法を組み合わせて用いることで離散時間系の経路制御系を構成する手法である.本手法では任意経路へ追従するような車両の並進速度とヨーレートをこの経路制御系の入力から求めている.そしてこのヨーレートを目標値として,横すべりを考慮した等価2輪モデルに基づいたヨーレート制御系を構成し,目標ヨーレートに追従させるように導出された入力から車両の操舵角を求めている.ヨーレート制御系では,コーナリングパワーと横すべり角の情報が必要であるが,これらを重みつき逐次形最小二乗法と同一次元オブザーバを用いて推定し,推定結果に応じてフィードバックゲインを変化させる極指定制御系を用いている.実験用4輪車両に対して,レーザースキャナを用いた自己位置及び姿勢角の測定を行い,さらにモーションキャプチャを用いて,使用している横すべり角推定手法や提案している経路制御手法の有効性の検証を行っている.
■ テンソルベースブラインド信号源分離による車両加速挙動の低次元物理モデリング
豊田中央研究所・神保 智彦,日比野 良一,山口 裕之,
トヨタ自動車・大坪 秀顕,加藤 伸二
車両はドラビリ・乗心地などの複数の要求制約を満足するようにハード特性や制御器が設計される.両設計には各振動現象を再現可能なモデルが必要となるが,多種多様な車両形式の詳細モデリングや低次元化,入力計測を含む同定は困難もしくは多くの工数を必要とする.そこで本論文では,実稼働時の出力データのみを用いて,振動現象を再現可能な最小次元の物理モデルを導出する手法を提案する.車両各部の加速度の時間-周波数データ配列をテンソル分解することで定常振動と過渡振動(振動モード)に分離する.さらに,分解構造を利用したモデル精度と運動の次元のトレードオフ解析から考慮すべき運動を抽出する.抽出された運動から車両全体の運動・振動の伝達構造が決定され,計測が困難な入力トルクであるエンジントルクや各部の伝達力などが推定可能となる.その結果,推定された伝達力より剛性や粘性を同定することで低次元物理モデルを得ることができる.本手法をドラビリ現象で検証する.
■ 能動膝アシスト装具を適用した自動伸展不全リハビリテーションシステム
山梨大学・青木 今日子,牧野 浩二,市立甲府病院 ・中村 祐敬,
大森 英功,花形 悦伸,植田 祥平,山梨大学・石田 和義,寺田 英嗣
高齢者の質の高い生活を支えるためには,日常生活動作(ADL)を維持し,向上させることが重要である.ADLを低下させる原因の1つとして自動伸展不全があげられる.これは全人工膝関節置換術後の高齢な患者に多いと言われており,手術する必要はなく,多くの場合はリハビリテーションを行うことで改善される.しかし,そのリハビリテーションは理学療法士には負担が大きいとされている.本稿では,全人工膝関節置換術後の歩行リハビリテーションを行うために開発している能動膝アシスト装具(Knee Assistive Instruments for Rehabilitation, KAI-R)を適用して,自動伸展不全のリハビリテーションを機械化について述べる.まず,自動伸展不全のリハビリテーションについて検討し,それを機械化するために必要なアルゴリズムを提案する.次に,そのアルゴリズムを実装し,筋電位によって効果を確認する.最後に,そのアシスト装具を用いた臨床研究を実施し,回復傾向がみられると理学療法士の負荷軽減に効果があることを確認する.
[ショート・ペーパー]
東京都立産業技術研究センター・金田 泰昌,入月 康晴
本稿では,密度比推定ならびにカーネル密度推定を用いた条件付き確率密度関数の直接推定手法を提案する.そして,それらの手法をカルマンフィルタのフィルタ分布推定に応用することで,観測値の事前情報を必要としない状態推定手法を提案する.数値シミュレーションにより提案手法の有効性を示す.