論文集抄録
〈Vol.54 No.7(2018年7月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論  文]

■ 二重差タイトカップリング相対測位における外れ値検出手法の研究

日立製作所・板東 幹雄,川股 幸博,大阪大学・大須賀 公一

 本論文では,タイトカップリング相対測位において課題の一つとなる擬似距離の外れ値検出手法について述べる.
タイトカップリング相対測位は移動している二つのアンテナの速度ベクトルを用いた相対位置を計算する技術であり,衛星とGNSSアンテナとの間の電波遅延時間によって算出される擬似距離を観測値として用いて最尤推定する.提案する擬似距離の外れ値検知は,タイトカップリングにおいてGNSSアンテナの予測動作から計算されるイノベーション過程が1つの信号であると考えて,定常性を用いた信号の分離を試みる.提案した方法は,対象とする信号が非定常と判断できたとき,サイクルスリップまたはマルチパスなどの影響を受けていると判断する.提案方法の効果を調べるため,実際の車両を用いた実験を実施し,その結果,提案方法は,特に二つのアンテナにおける共通可視衛星数が少ない場合に有効な方法であることを証明した.一方で,可視衛星数が多い場面では測位結果に影響しない.この特徴を活かし,複数の外れ値検知手法を併用することでさらに性能を上げることが出来ることを示した..


 

■ 薄型AEセンサとオートエンコーダの再構成誤差を用いた回転式真空ポンプの異常検知

産業技術総合研究所/九州工業大学・内田 雅人,
産業技術総合研究所・石田 秀一,田原 竜夫,九州工業大学・宮本 弘之

 真空ポンプは半導体製造装置で常に使用される.真空ポンプの異常は装置の停止などの不具合の原因となるため,真空ポンプの異常検知は非常に重要となる.そこで我々は薄型AE(Acoustic Emission)センサと機械学習を用いた真空ポンプの状態診断を検討した.しかし,生産ラインにおいて異常データは常に利用できない問題がある.そのため,異常検知は正常データのみから学習する必要がある.近年,オートエンコーダを使用した異常検知が行われている.オートエンコーダは正常データが再構成され,異常データは再構成されない.この再構成誤差を利用することで異常検知を行うことができる。本稿では,薄型AEセンサとオートエンコーダの再構成誤差による回転式真空ポンプの異常検知を提案する.提案手法の性能は,真空ポンプの排気異常を検知することによって評価する.


 

■ Moving Horizon Estimationとロバストモデル予測制御を用いた電力系統の負荷周波数制御

慶應義塾大学・平中 拓人,関根 徹也,
慶應義塾大学/科学技術振興機構・滑川 徹

 本論文では, 電力系統の負荷周波数制御問題を扱う. 電力系統では, 電力需給バランスを維持するための制御として, 時々刻々と変化する負荷変動に対して発電機の出力を調整する負荷周波数制御が行われている. しかし, 近年の出力変動の予測が困難な再生可能エネルギーを用いた発電機の大量導入により, 相対的な負荷変動量が増大し, 需給バランスを維持することがより困難となっている. この対策として, 供給側では従来より用いられてきた火力・水力発電機に, 蓄電池などの分散型電源を組み合わせることや, 新たな制御理論・制御方式を適用することなどが検討されている. そこで本論文では特に, 需給バランスの維持に大きく影響を与える風力発電機の大量導入を想定した電力系統において, 火力などの発電機に加え, 蓄電池を用いた新たな負荷周波数制御の制御手法を提案する. 具体的に, 風力発電機という出力に不確実性を持つ発電機が導入されても, 蓄電池の残容量といった状態, 発電機と蓄電池への制御入力が制約条件を満たすよう, Moving Horizon Estimationとロバストモデル予測制御を用いた負荷周波数制御の手法を提案する.


 

■ リグレットマッチングとVCGメカニズムデザインを用いたネガワット取引に基づく複数系統における電力需給調整

慶應義塾大学・永見 健太郎,武藤 啓太,
慶應義塾大学/科学技術振興機構・滑川 徹

 本論文ではネガワット取引に基づいた電力需給管理について扱い,需給バランスを保つこととネガワット取引,調整用発電機,および潮流のコスト最小化を目的とする.
本研究では,電力需要家と独立系統運用機関(ISO)が電力市場に参加しており,電力需要家は学習理論のひとつであるリグレットマッチングに基づいて行動する.さらに,ネガワット取引におけるインセンティブ設計としてVCGメカニズムデザインを用いて耐戦略性と個人合理性について考慮した.そして,リグレットマッチングとVCGメカニズムデザインに基づいたネガワット取引アルゴリズムを提案する.最後に,シミュレーションにより提案手法の有効性を確認する.