論文集抄録
〈Vol.54 No.9(2018年9月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論  文]

■ 三次元環境を移動可能な多脚型ロボット-身体の柔軟性を利用した未知環境への適応-

法政大学・齋藤 明日希,永山 和樹,本間 義大,青柳 龍志,
伊藤 一之,名城大学・大道 武生,芦澤 怜史,京都大学・松野 文俊

 日本各地においてインフラの老朽化が指摘されており,ビル,橋などの巨大建造物を効率よく保守点検することが大きな課題となっている.ロボットによる保守点検は,その解決策の有力な候補として注目されるとともに,これらのロボットは災害などの緊急時にはレスキュー活動に転用することも期待されている.しかし,これらの作業には地上での移動に加え,複雑な未知構造物上を3次元的に移動可能な高い機動性と,これを可能とする高度な計測技術ならびに制御技術が必要とされる.特に,効率化を図るため,少数のオペレータが多数のロボットを同時に管理することが想定されるため,ロボットには高い自律性が求められ,これを如何にして実現するかが課題となっている.本論文では,この問題を解決するために生物の身体的特徴の一つである柔軟性に着目し,身体の機構的な性質を利用して未知環境を自律的に移動可能な枠組みを提案する.また,提案した枠組みの有用性を確認するため,具体例として,凹凸や湾曲の存在する垂直な壁面を移動するロボット,並びに,配管,角柱などの柱状物を昇降するロボットの二つの多脚型ロボットを開発した.実験の結果,開発したロボットが身体の柔軟性を利用することで環境を計測することなく,未知環境に適応可能なことを確認した.


 

■ 家族類型と世帯内の役割を考慮したSA法による大規模世帯の合成

関西大学・原田 拓弥,村田 忠彦,枡井 大貴

 本論文では,対象地域と同じ規模の人口を合成するためにSimulated Annealing法(SA法)に基づく世帯構成合成手法を改良する.近年,社会シミュレーションを実現する技法としてMicro SimulationやAgent-Based Simulationが利用されている.
 これらを用いるためには,世帯の各構成員について年齢や職業,その他の属性などを事前に用意する必要がある.しかし,現実の個人の属性はプライバシーや個人情報保護の観点から利活用が困難である.そのため,公的統計を始めとする利活用可能な情報から仮想の世帯構成を合成する研究がされている.本論文では,公的統計を用いたSA法による世帯構成合成法を改良するために,初期世帯生成法,SA法による最適化に用いる統計表,最適化の手続きを提案する.提案手法を用いて山形県の仮想の世帯構成を合成したところ,従来手法より統計表との誤差の総和を約30分の1に削減できた.


 

■ 分散型モデル予測制御による車両群の合流制御

慶應義塾大学・林 靖大,豊田 凌,滑川 徹

 本論文ではモデル予測制御を用いて分散型の車両の制御アルゴリズムを構築する.分散型の制御アルゴリズムは高速道路合流部付近を走行する各車両が互いに協調し,かつ分散的に最適な軌道を計画するものである.また,想定する高速道路としては合流車線が1車線,本線が2車線ある一般的な道路を考える.本線を2車線にすることで,すでに高速道路を走行している車両は加速や減速だけでなく車線変更も伴って合流する車両を支援することができる.つまり本線が1車線の場合と比較して,本線が2車線の場合は本線を走行する車両の動きの自由度が高まり,よりスムーズでより無駄な動きの少ない合流を実現することが出来る.その際に各車両はどの車線を走行すべきかを決定する必要があり,同時に車両同士の衝突や高速道路形状に沿った走行も求められるため,これらのことを軌道計画の段階で考慮する.さらにモデル予測制御の安定性を高めるために終端制約を設け,終端制約のもとで最適化問題が可解となるための条件を導出する.最後に提案法によって車両群がスムーズな合流を達成するかどうかを数値シミュレーションを通して検証し有効性を確認する.


 

■ 確率計画法による電力運用最適化

立命館大学・佐藤 優馬,瀬尾 昌孝,
富山県立大学・榊原 一紀,立命館大学・西川 郁子

 発電と蓄電機能を有するスマートハウスにおける電力運用計画の最適化を考える.最適化対象期間にわたる発電と電力消費の時系列が与えられた下で,発電した電力の効率的利用の指標として,系統電力からの買電量最小化を目的とする.さらに,スマートハウス間での電力融通も含めて,対象期間にわたる数理計画モデルを定式化した.発電量と消費量が予め確定的に既知の場合には線形計画モデルで表わせるが,それらが既知の確率分布に従う確率変数とした場合には確率計画モデルに拡張される.買電と充放電に対応する2種類のリコース変数を導入した二段階確率計画モデルで定式化した上で,確率分布の離散近似により,線形計画として求解できることを示した.実測データを用いた数値実験により,提案モデルの有効性を検証した.まず,電力融通を含まない課題として,離島での実測データを用いて,島全体を単一組織とした運用計画を求めた.次に,スマートハウス間の電力融通を含む課題として,一般家庭での実測データを用いて運用計画を求めた.いずれの課題でも,線形計画や買電リコース変数のみによる確率計画と比較して有効な解が得られ,特に,蓄電に対するリコース変数の有効性と,電力融通によりそれがさらに顕著になることが確認できた.