論文集抄録
〈Vol.55 No.2(2019年2月)〉

タイトル一覧
[論 文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 多重周期サンプリングデータに基づくシステム表現と制御方式

大阪大学・可知 怜也,藤崎 泰正

 線形システムが生成しうる入出力信号の振る舞いは,それ自身の空間の基底により記述できる.このことに着目すれば,データを直接用いて制御入力を生成することが可能である.本論文では,このような入出力データに基づくシステム表現と制御方式が,入力信号と出力信号のサンプリングレートが異なる多重周期サンプリングシステムに対しても,有効に働くことを明らかにしている.特に,ある与えられた目標となる振る舞いに有限時間で一致する振る舞いの中で,2次形式評価関数を最小とする制御入力が,入出力データを並べた配列を用いて定義される凸最適化を解くことにより得られることを明らかにしている.


 

■ 段階的な最適化計算とグラフ分割を用いた鉄道乗務員スケジュールの作成-大規模かつ複雑な構造を持つ路線への適用-

早稲田大学・鎌田 龍太,渡邊 亮

 鉄道乗務員スケジューリング問題とは,与えられた列車の運行スケジュールに対して労働規則を満たすように乗務員を配置する問題である.多くの先行研究において「行路案(乗務員の業務スケジュールの候補)の作成」と「行路案の最適化」の2つのステップにより問題の解決が図られている.本稿では,支線と複数基地を有する大規模かつ複雑な構造を持つ路線を対象に,数理最適化に基づく乗務員スケジュールの自動作成方法を議論する.部分行路を用いる段階的な最適化計算[高橋,渡邊,計測自動制御学会論文集,Vol.53,No.2,p.162-168(2017)] に,ペナルティ付き集合分割問題,グラフ分割,および支線と複数基地に関する従来手法の改良を導入した新しい行路案作成手法を提案する.


 

■ 未知評価関数を有する連続時間最適制御問題におけるベイズ的最適化手法

統計数理研究所・豊田 充

 本研究ではステージコスト関数が未知の連続時間最適制御問題に対してガウシアンプロセス回帰を用いたベイズ的最適化手法の拡張を行う.control parametrization method により最適制御問題を非線形計画問題として近似表現し,ガウシアンプロセス回帰による評価関数の推定値の解析を行う.そして推定値により得られた最適化問題の解を得るための効率的な勾配計算法を示し,提案アルゴリズムによって与えられる解の最適性に関してbandit問題の手法により解析を行いregretの評価を与える.


 

■ モモシンクイガ検出システムを対象とした被害果の出荷リスク低減に関する検討

山梨大学・牧野 浩二,石田 和義,
渡辺 寛望,鈴木 裕,小谷 信司,寺田 英嗣

 農作物の輸出拡大は推進すべき課題であるが,検疫の問題がある.特に,日本の果物輸出額第3位のモモは40%が台湾へ輸出される.台湾へモモシンクイガの幼虫が果実内に混入したモモを輸出すると日本全体からの農作物の輸出停止などの措置が取られる.検疫条件で決められた目視による全数検査では見逃すリスクがある.筆者らはモモ果実中のモモシンクイガの幼虫をX線で検出するシステムを開発している.被害果の出荷を防ぐには,検査精度の向上だけでなく,検査速度も重要な要素となる.検査機器の開発では,精度と速度を必要以上に向上させると開発期間が長くなるだけでなく開発コストの増大にもつながる.この対策には問題のリスクを分析することが有効であり,これにより必要な機能の確保と不必要な機能の削減が可能となる.本稿では,実証機で実現するときの数値的な見積もりを行うことで実用的な出荷リスクと時間コストについて検討するとともに,新たな出荷リスク低減法として検査後の梱包についても検討する.さらに,提案するリスク低減法の中で時間コストが許容できる方策であった2つを実証機に導入して検証をした.この実証機を用いた検証結果は,農作物を対象とした検査システムの設計指針に有用な知見を示すことにつながった.


 

■ ICT機器連携システムを利用したデータセンタ空調機の実時間最適化

東京工業大学/富士通研究所・遠藤 浩史,東京工業大学・石倉 大地,
大阪大学・畑中 健志,富士通研究所・児玉 宏喜,福田 裕幸,東京工業大学・藤田 政之

 本論文では,サーバなどのICT機器と連携したデータセンタ冷却システムの最適管理について検討する.近年のデータセンタでは,システム管理者がICT機器温度,消費電力,ファン回転速度,計算負荷などのデータを取得できるようになった.技術進歩により,冷却プロセスをより正確にモデル化し,オンラインデータを空調ユニットの制御アルゴリズムにフィードバックすることができるようになった.これにより冷却システムのエネルギー効率を高めることができる.本論文では,まず上記のデータに基づいてデータセンタの冷却過程をモデル化し,空調ユニットの設定温度を決定するためにある時間間隔で解くべき最適化問題を定式化する.さらに空調ユニットのリアルタイム最適化方式を,実際のデータセンタを模した試験環境で実証した結果について示す.


 

電力系統の減衰性能を強化する潮流状態の探索

慶應義塾大学・荒幡 充,井上 正樹,
電気通信大学・定本 知徳,慶應義塾大学・鈴村 美月

 本論文では,電力系統の減衰性能を強化する問題に取り組む.減衰性能の強化は,潮流状態の設計と制御器の設計により達成される.潮流設計問題は,パラメータ依存である電力系統のモデルにおける,パラメータ設計問題として定式化される.
本論文では,このパラメータ設計問題に対する解法として,線形行列不等式を繰り返し求解するアルゴリズムを提案する.また,減衰性能のさらなる改善のために,提案アルゴリズムを潮流状態と制御器の同時設計法へと拡張させる.


 

■ Receding Horizon戦略に基づく固定カメラを用いた競技動画像の再構成

 熊本大学・岡島 寛,橋爪 壮一郎,大石 凌史,diffeasy・宮原 智新

 東京オリンピックが開催される2020年に向けて,日本のスポーツ界全体が盛り上がりを見せている.一般にスポーツ競技映像は,プロ競技のように大規模な競技大会においては専用の予算を充てることができるため,専門カメラマンによって競技が撮影され,プロの編集者によって編集されたものを視聴できる.しかし,小中学生等の競技大会のように小規模の大会においてはコストが掛けられないため専門のカメラマン等を配備し,観客に編集された高品質の競技映像を提供することは困難である.仮に,定点固定カメラによる撮像を行えば運営者が競技会場に設置するだけでコストを掛けずに競技動画像を入手することができるが,動画像としての質を考えた場合,定点固定カメラの映像では満足できるものにならない.本研究では,定点固定カメラ映像から仮想カメラワーク処理により動画像を再構成し,良質な動画像を制作する方法を提案する.具体的には,高解像度カメラを用いて得た動画像に対して,注目領域のトリミングを行うことで仮想的にパンニング,ズーミング動作などのカメラワークを実行する.この意思決定操作には,制御工学でよく利用されるReceding Horizon型の手法を利用する.提案手法の有効性は空手競技動画などを用いて検証する.


[ショート・ペーパー]

■ 一般物体認識RTCの開発-コンポーネントの設計と性能評価-

名城大学・石田 健悟,大原 賢一

 本稿では, ロボット用ミドルウェアであるOpenRTM-aistを利用して一般物体認識を有するRTコンポーネントおよび物体認識のためのコンポーネント間のインタフェースを提案し, その設計指針を示す. 合わせて, これまで議論されてこなかったモジュールの粒度と処理時間を考慮に入れたシステムの設計形態の妥当性について基礎検証結果について報告する.