論文集抄録
〈Vol.55 No.5(2019年5月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論  文]

■ 統計情報と二値変数を利用した確率最適制御手法の提案とPHVの最適なモード切替計画への適用

東京工業大学・渡辺 隆之助,吉岡 弘人,伊吹 竜也,
トヨタ自動車・坂柳 佳宏,東京工業大学・三平 満司

 本論文では,確率モデル予測制御のフレームワークに基づいた確率最適制御手法を提案する.この提案手法は,ある確率システムの最適制御問題を統計情報と二値変数を利用することで混合整数線形計画問題として定式化し,確定的な数理計画問題として扱う.さらに本手法では,確率過程に関して白色雑音のような仮定を必要としていない.そして,プラグインハイブリッド自動車の最適なモード切替計画問題を例題として示し,提案手法の有用性を述べる.検証は自動車用の詳細シミュレータ(ADVISOR)を用いて行い,従来手法と比較して燃料消費量が減少していること,および実装するにあたって計算コストが十分小さいことを示す.


 

■ 色情報と深度情報を併用した自己遮蔽に頑健な物体追跡手法

千葉工業大学・今井 順一,エム・ソフト・柏木 雄平,カイカ・木辻 亮

 移動物体の視覚的追跡は画像に基づくセンシングにおいて広く応用される重要な技術である.物体追跡の代表的な手法として,色分布による物体モデルを利用したパーティクルフィルタによる追跡手法がある.しかし,色分布モデルは追跡開始時にカメラから見える外見をもとに作成されるため,自己遮蔽によって外見の色の配分が大きく変化し得る物体に対して適切に対応できない問題がある.そこで本研究では,追跡中に深度情報によって追跡対象と同一物体の領域を抽出し,物体モデルを更新することで,自己遮蔽に対して頑健な物体追跡を実現する手法を提案する.追跡対象物体の深度変化は連続的であることを仮定し,深度情報に基づくGraph Cutによりモデルに追加すべき領域を抽出する.その際,追跡対象と接する他物体が存在するとその領域を追跡物体領域から分離できず,誤ってモデルに追加してしまう問題が生じる.そこで提案手法では,追跡対象物体ではない除外領域は注目点の周辺にまで広がって存在する性質を利用することでこの問題を解決する.


 

■ 制御バリア関数を用いたヒューマンアシスト制御

東京理科大学・中村 文一,吉永 昂央,小山 悠,江藤 隼

 自動車の運転ミスなど,人間の操作ミスに起因する事故の低減は現代社会の大きな課題である.制御理論における状態制約に関する取り組みとして,これまでモデル予測制御,制御バリア関数(CBF),座標変換を用いた制御法などが提案されているが,筆者らの知る限りCBFを用いたヒューマンアシスト制御については議論されていない. 本論文では,人間の操作性向上を目的として拡張制御バリア関数(拡張CBF)および,提案した拡張CBFを用いたヒューマンアシスト制御法を提案する.本論文では,提案するヒューマンアシスト制御法が人間の与える任意の入力に対して状態制約を守ることを示す.さらに,提案法が安全性を保証する入力の中でユークリッドノルムが最小となる最適性を持つことおよび,人間の操作入力が連続である場合に提案するヒューマンアシスト制御入力が連続写像になることを示す.これらにより,提案法が操作性と安全性を理論的に保証することを示す.本論文では,状態制約を持つ2重積分系および4輪車両型移動ロボットの衝突回避問題に提案法を適用し,コンピュータシミュレーションおよび実機実験により有効性を明らかにする.


 

■ 複合物理領域での定温度制御方式熱式流量計のモデル化

堀場エステック・瀧尻 興太郎,堀場製作所・境 行男,京都大学・杉江 俊治

 従来より流量計測において熱式流量計が広く使用されている.
特に半導体製造プロセスでは流量計測市場が拡大しており,計測対象となるガスの種類が増加している.流量計において,計測値の基準となる流量特性を取得する必要があるが,活性ガスの中には腐食性が強く安定した計測が難しいガスがある.これまで比熱などの物性値が近いガスから特性を推定せざるをえなかったが,流量計測の高精度化のためには流量に対する入出力特性や時間応答の流量計モデルによる検証が必要である.
 本論文は熱式流量計の中の定温度制御方式を対象とした.流量計はステンレス毛細管に電熱線を巻いたセンサ部と温度制御回路により構成されている.伝導・対流などの熱伝達形態が混在し,かつ温度制御回路も含まれるシステムにおいて,熱回路網の熱流量収支を記述した状態方程式と,温度制御回路における温度-発熱量の関係式を組み合わせて統合したモデルを構築した.本モデルにおいてガスの物性値を入力することで,流量の入出力特性やダイナミクスの検証が可能となった。特性の異なる複数のガスにおいて,センサの温度分布や流量入出力特性を実験とシミュレーションで比較することにより有効性の検証を行った.


 

■ 頂点彩色問題の定式化を応用したスラブ山分け問題求解技術開発

新日鐵住金・黒川 哲明,東京工業大学・松井 知己,早稲田大学・大貝 晴俊

 製鉄プロセスでは, 製鋼工程から圧延工程へ鋼材を供給する際, 鋼材は, 一旦ヤードと呼ばれる一時保管場所に山積状態で置かれた後, 圧延工程の処理時刻に合わせて搬出される. ヤードは, 異なる工程間の製造順を調整し, 圧延工程への材料供給を滞りなく行う役割がある. また, 次工程の加熱炉燃料原単位削減のため, 高い装入温度を保持することが求められる. そのため, 設備限界まで高く積み上げることが必要となる. 一方, 鋼材を積上げる際には, 次工程処理順番に鋼材が上から積まれていること, 積み姿を安定にするなどの制約がある. 更に, 山積みを行う際の作業負荷も見逃せない要素である. つまり, ヤード管制では, 前記制約下, 出来るだけ少ない作業負荷で, より高い山積みを行う作業計画を策定することが望まれる.以前筆者らはこの問題を集合分割問題として定式化する方法を提案した. この方法では鋼材数に対し変数が指数関数的に増大するため, 大規模な問題に対応しづらい課題があった. そこで本論文では, 山分け問題がグラフ理論の代表的な問題である頂点彩色問題と類似した構造を持つことに着目し, 従来型の色への割り付けでなく, 色を特定しないことにより高速化を図った定式化方法を提案する.


 

モーションアーチファクト除去用のウェアラブル飲み込みセンサのための信号処理法に関する研究

富山大学・斎藤 匡浩,折谷 直耶,金 主賢,中林 美奈子,
特別養護老人ホーム梨雲苑・坪内 奈津子,林 一枝,富山大学・中島 一樹

 介護職員の提供する介護技術の中で最も困難感が強いのは食事介助であった.そこで,福祉用具・機器で飲み込みを検出できれば,介護職員の心理的負担感の軽減が期待できる.前報告において,エプロンに加速度計を内蔵したウェアラブルセンサを開発した.このウェアラブルセンサを用いることで,要介護者の飲み込み検出の可能性が示唆されたが,被検者のモーションアーチファクトが問題となった.本研究では,2種のバンドパスフィルタを用いて被検者のモーションアーチファクト軽減に関する信号処理法の提案を行った.提案する信号処理法を用いることで,低周波のモーションアーチファクトが大きく低減した.また,咀嚼時のiAccは,若年者全員と要介護者の5人中4人において,X軸の値>Z軸の値となった.飲み込み時のiAccの値は,若年者全員と要介護者の5人中4人において,X軸の値<Z軸の値となった.これより,加速度計から得られる各軸の成分を比較することで,咀嚼と飲み込みを判別できる可能性が示された.


 

■ 無人飛行体によるインフラ設備外観自動点検システムのための状態データの精度と作業効率を考慮した計測位置決定

 名古屋大学・麻 晃太朗,舟洞 佑記,
道木 慎二,愛知工業大学・道木 加絵

 著者らは,無人飛行体(以降,UAV)を用いたインフラ設備外観自動点検システムの確立を目的とし,UAVの経路計画についての研究を進めてきた.これまでに,対象設備の三次元モデル・計測すべき状態データの要件・計測機器の仕様をもとに,対象設備外観全体の状態データを所望の精度で計測するためのUAVのウェイポイント(以降,計測位置)を決定する手法を提案した.計測位置をウェイポイントとみなして既存の巡回順決定法を適用することで,計測すべき状態データの精度を保証した経路計画が可能となった.しかし,求められた計測位置では多数の重複した計測が発生し,点検作業の効率化に課題を残した.
 本論文では,UAVを用いたインフラ設備外観自動点検システムのための計測位置決定法を提案する.計測条件を考慮して三次元モデルを構成するポリゴンを再構成することで,画像データの精度と作業効率を両立した計測位置を導出する.点検作業を想定したシミュレーションにより,従来手法と比べて効率的に外観を計測できることを確認する.