論文集抄録
〈Vol.55 No.8(2019年8月)〉

タイトル一覧
[論 文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ せいめい望遠鏡の分割主鏡制御の概念設計

金沢大学・軸屋 一郎,上野 幸紀,
京都大学・木野 勝,栗田 光樹夫,大阪大学・山田 克彦

 せいめい望遠鏡は京都大学が中心となって開発を進める東アジア最大級の天体望遠鏡である.
せいめい望遠鏡の主鏡は18枚の分割鏡から構成され,72個のセンサと54個のアクチュエータを用いて分割主鏡制御を行うことにより天体観測中の理想鏡面形状を保持する.
 本論文ではせいめい望遠鏡の分割主鏡制御に関する概念設計を行う.制御対象のモデル化を行い,集中制御と分散制御という2種類の制御則を提案する.集中制御は全てのセンサ情報を統合して分割鏡全体を制御し,分散制御はセンサ情報を局所的に用いて個別に分割鏡を制御し,相補的な役割が期待される.集中制御と分散制御の有効性は望遠鏡設計データを用いて数値的に検証する.


 

■ RGB-IRカメラを用いたハイブリッドな瞳孔・虹彩同時追跡

東海大学・山岸 健太,竹村 憲太郎

 一般に,視線計測では近赤外画像と可視画像はそれぞれ独立に利用されてきたが,本研究ではRGB-IRカメラを用いることで,近赤外画像と可視画像を同時に利用するハイブリッドな視線計測技術を提案する.近赤外画像では,まぶたの影響は少なく,安定して瞳孔を検出,追跡することが可能である.また,可視画像を用いると虹彩の追跡が可能となり,サイズが一定であることからモデルベースのアプローチに有効である.これらの特徴を用いることで両画像を用いる本手法は,プルキニエ像の検出なしに眼球姿勢を推定することができる.また,虹彩と比較することで瞳孔径の定量的な計測も可能であり,評価実験を通して提案手法の有効性を確認した.


 

六自由度バケット位置姿勢推定法による地中建機用バケット一体型地中レーダシステム

群馬大学・三輪 空司,鈴木 智洋

 近年,パワーショベル等による地下開削工事の際,作業員の操作ミスにより地下に埋設されたライフラインを破損させてしまう事故が後を絶たない.そこで、バケットとアンテナを一体化したレーダにより掘削しながらバケット下部の探査を行い,受信波形の合成開口処理を行うことにより,対象に近づきながら高精度な埋設物のイメージングを行うシステムを開発した.合成開口処理にはバケット底面のアンテナの三次元的な位置を1cm程度の精度で推定することが必要であり、バケット上部に取り付けた送受信超音波トランスデューサアレイを用いGPS測位を拡張したバケットの三次元位置、姿勢の6自由度推定法を提案する.実験的な検討の結果、毎秒8回の位置推定が可能であり、絶対誤差で概ね1cm、相対誤差で5mmの推定精度が得られることがわかった.さらに、バケット底面の地中レーダ用アンテナとしてスロットアンテナを設計、試作し、実機を用いて掘削しながら、同時にアンテナ測位、レーダ計測を行った後、オフラインでの合成開口処理により、掘削面から30cm程度の深さに埋設された中空塩ビパイプのイメージングに成功した.


 

■ 牧羊犬のヒツジ追い現象に着想を得たエージェント群の機動制御法の理論解析

大阪大学・角田 祐輔,末岡 裕一郎,和田 光代,大須賀 公一

 本研究では,シープドッグシステムと呼ばれる,少数のコントローラ(牧羊犬)を用いて多数のエージェント群(ヒツジ群)を誘導制御するマルチエージェントシステムを取り扱う.システムの非線形性により,理論解析が困難であるため,先行研究の多くがモデリングとシミュレーション解析に終始している.そこで本研究では,牧羊犬が自身の機動性を生かして多数のヒツジ群を誘導する制御を機動制御と称し,この制御原理を理論的に明らかにすることを目的とする.そのために,まず我々は先行研究でVaughanらが提案したシープドッグシステムのモデルを参考に機動制御則を考案する.本稿では,ヒツジ群の誘導をヒツジ1体の誘導と近似し,牧羊犬1体との非線形力学系に対して理論解析を行う.本稿では,まずシステムの平衡点を導出し,線型近似により平衡点の安定性を確認する.そして,平衡点におけるヒツジと牧羊犬の挙動を調べ,加えて,平衡点に収束しない初期値集合について議論する.最後に,牧羊犬の機動制御則設計法を構築し,シミュレーションにより理論解析の妥当性を検証する.結果,平衡点が存在し,かつ漸近安定となるゲインの条件が明らかになった.また,ヒツジを所望の誘導円軌道に収束させるためのゲインの設計法を定式化することができた.


[ショート・ペーパー]

■ 情報遅延を伴う2重積分器型マルチエージェントシステムの合意解析

首都大学東京・根岸 萌友,児島 晃

 マルチエージェントシステムにおける合意問題は, 分散系の制御を考える上で重要な問題であり, 特に 2 重積分器型のエージェントは, 交通流の解析など位置と速度, あるいはフローとストレージの調整に重要な役割を果たすことが期待される. 本稿では, 2重積分器型のエージェントに対して, ネットワークの情報遅延と合意が形成される条件の関係を調べる. そして, 情報遅延を伴う系の合意値が, むだ時間系の固有値問題から直接特徴づけられることを明らかにする.