論文集抄録
〈Vol.56 No.12(2020年12月)〉

タイトル一覧
<特集 第25回ロボティクスシンポジア特集号>

[論 文]


[論  文]

■ 混合余事象分布に基づく未学習クラス推定確率ニューラルネット

横浜国立大学・迎田 隆幸,島 圭介

 教師データが存在するパターン識別問題では予め識別対象のクラス数やサンプルデータを与えることで識別器の学習を実現するが,学習時に想定しない異常なパターンが入力された場合には必ず誤識別が発生するという問題がある.本論文では想定外の異常値の分布を新たに提案する余事象分布により表現し,学習時に含まれない未学習クラスの分類が可能な確率ニューラルネットを提案する.提案法は混合正規分布と混合余事象分布を内包するニューラルネットであり,ネットワークの重み係数は誤差逆伝播法と勾配法の2種類の学習則から最適化される.また,提案法は多クラス識別と異常検知を単一の識別器によって実現し,正常なデータのみを学習に用いる半教師あり学習を扱うことができる.実験では人工データを用いた識別性能評価と筋電位信号を利用した前腕動作分類実験を実施し,提案法の有効性を検討した.結果から,提案法は学習データ数が少ない場合にも高い識別性能を発揮することが示され,両実験の識別率において比較手法との間に有意差が確認された.


 

■ 海図生成技術SEAMLESSの提案と実証

ヤンマーホールディングス・嵩 裕一郎,光電製作所・林 大介,箭内 多聞,
ヤンマーホールディングス・若林 勲,横上 利之,杉浦 恒

 遠隔操船並びに自律型の船舶の運航について,国内外で関心が高まっており,産官学の各所でさまざまな研究開発や実証プロジェクトが実施されている.これまでの筆者らの研究において,小型無人航行船を活用した沖合での自動航行と,小型船舶の自動離着桟とでは,海図に対する要求が全く異なることが明らかとなり,本稿ではその解決を図る.沖合での自動航行の場合,その航行エリアは広大だが,周囲環境として障害物が疎な環境となる.そのため,航路計画において,疎な広域図を用いることとなり,高精度に航路追従することは要求されない.一方,自動離着桟の場合,港湾内などの比較的狭いエリアが対象である.港湾内は他船やブイなどで込みいっているため周囲環境として障害物が密な環境となる.そのため,航路計画において,密な狭域図を用いることとなり,高精度に航路追従することが要求される.今回,マルチモーダルなシステムを構築し,沖合での自動航行及び自動離着桟において必要な海図をそれぞれ生成し,生成した海図を継ぎ目なく連続的に合成する技術SEAMLESSを提案し,実際の水域における有用性の実証に取り組んだ.本手法においては,海図間の不連続性を回避しつつ,情報の疎密に対して海図の再編成を柔軟に行うことができる.


 

■受動的動歩行に内在する適応機能の実験検証と歩行動作の安定化の検討

大阪電気通信大学・入部 正継,廣氏 遼一,
大阪大学・浦 大介,大須賀 公一,岡山理科大学・衣笠 哲也

 脚歩行ロボットのハードウェア設計において,著者らは受動的動歩行に特有の性質の一つである適応機能を適用することを提案している.適応機能とは,受動的動歩行動作の途中で環境のパラメータや内界パラメータを連続的に少しずつ変化させた場合,その歩容を適応的に変化させることで歩行動作を継続しようとするふるまいが現れることを示す.これのふるまいは計算機での動力学シミュレーションでのみ確認されているが,実際の実験では未確認である.本論文では,受動的動歩行が可能な脚ロボットの実機を用いて検証実験を行い,適応機能の存在を示す適応的なふるまいが実機実験でも出現することを確認した.同様に,実験により適応機能を適切に使用することで受動的動歩行の歩行動作の安定化が可能なことを示すことに成功した.


 

■ CNNを用いた高速な超音波画像上の臓器検出手法の比較・検証

電気通信大学・五十嵐 立樹,冨田 恭平,西山 悠,小泉 憲裕

 われわれはさまざまな臓器に対して高出力集束超音波(HIFU)を用いた治療が適用できるように、呼吸や体動で動く病変を追跡しつつ治療が可能なロボットシステムを開発している.本システムは超音波画像を解析することで臓器の位置を捉え,臓器の動きをロボット制御で補正する.
近年,深層学習を用いた様々な物体検出手法が提案されているが,ロボットシステムを用いて特定の臓器を検出する手法としては十分な検討がなされていない.そのため,システムにこれらの手法が適用可能かどうか検討する必要がある.
本論文では,一般的に物体検出に用いられているFaster R-CNNと,Faster R-CNNの問題点を踏まえた提案手法であるRegression Network (RegNet)とSegmentation In Regression Network (SegInRegNet)の性能を,腎臓検出タスクにおいて比較検証した.そして,1) Faster R-CNNはロボットシステム上で動作する腎臓検出手法としては問題点があり,2)提案手法はFaster R-CNNよりも検出速度と精度の面で優れていることを示す.


 

■ モリアオガエルの吸盤付き手指を模倣したロボットハンドの開発と物体の把持実験

関西大学・青柳 誠司,王 鵬翔,シャープ・蒋 光瑞,
関西大学・森田 樹,高橋 智一,鈴木 昌人

 モリアオガエルの吸盤付き手指を模倣した4本指のロボットハンドを提案した.モリアオガエルを模倣した点は,4本指の構造,それらの内転 / 外転と屈曲 / 伸展の運動モード,各指先の吸着機能である.その上で,エンジニアリングでの実現容易性を考慮して,以下の工夫を行った.1)親指を中指の延長線上に配置して機構と制御を単純にする.2)1個のモータでワイヤを駆動して4本指の屈曲・伸展を同時に行う.示指と薬指の内転 / 外転は,1つのリニアアクチュエータとリンク機構により行う.すなわち2自由度でのハンドの動作を可能にし,制御の単純化,システムの低コスト化を実現している.3)対象物体との接触力を高めるために,4番目の受動関節と爪を指先に追加した.このロボットハンドが,物体形状が平面形状か3次元形状かに関係なく,一般的な物体を把持できる可能性が把持実験により示された.