論文集抄録
〈Vol.56 No.5(2020年5月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論  文]

■ 微分フラットシステムに対する L2 規範に基づく安定化ゲイン設計法

東京理科大学・藤井 裕大,中村 文一,佐藤 康之

 本論文では,外乱を考慮した微分フラットシステムに対して,入力状態安定化ゲイン(ISSゲイン)の設計法を提案する.初めに,座標変換と入力変換によって微分フラットシステムと対応づけられた拡大線形システムに対して,静的で滑らかな制御リヤプノフ関数(CLF)を設計する.そして,状態フィードバックH無限大制御問題を解くことにより,事前に定めたL2規範を満たすようなCLFを設計する.さらに,得られたCLFに対して動的拡大法と最小射影法を適用することにより,入力状態安定制御リヤプノフ関数(ISS-CLF)を導出する.以上の手順で設計したISS-CLFと事前に定めたL2規範より,解析的なISSゲイン関数が得られる.最後に微分フラットシステムに対して外乱抑制制御則のL2規範に基づく性能限界を定める.提案法の有効性は,船舶の軌道追従制御問題を例にコンピュータシミュレーションで示す.


 

■ 目標応答追従のためのデータ駆動制御型参照信号整形

電気通信大学・桑原 圭佑,池崎 太一,定本 知徳,金子 修

  本論文では,線形システムに対して目標応答を達成するような参照信号を整形する手法を提案する.
  提案する手法では,データ駆動制御の考え方に基づいて参照信号を整形することから,制御対象のモデルを用いることなく目標応答追従性能の向上が可能である.
  また閉ループ系に実装されている制御器を変更しないことより,閉ループ特性の変更が望ましくない稼働中のシステムに対して有用である.
提案する手法の有効性をLego Mindstorm EV3を用いた実験により確認する.


 

■ 確定的H性能と確率的安定性を同時に保証するロバスト状態フィードバック制御器設計法

慶應義塾大学・丹羽 慶始,
宇宙航空研究開発機構・佐藤 昌之,慶應義塾大学・足立 修一

 本論文では,独立同分布に従って変動する確率的なパラメータを有する離散時間線形システムに対して,状態フィードバック制御器設計法を考える.
   もし,パラメータが正規分布に従う場合,そのパラメータ変動を有限の範囲で定めることができないため ,「従来の確定的な制御性能」を厳密に保証することはできない.
  そこで,確率的な意味での二次安定性と等価である「確率的安定性」を,従来の確定的 H 性能に組み込むことを提案する.
そして, extended LMI を用いて,確定的 H 性能と確率的安定性を同時に保証する状態フィードバック制御器の設計条件を導出する.
最後に,提案法の有用性を数値例を通して確認する.


 

■ 分散オブザーバに対する複合攻撃存在下での局所型攻撃検知アルゴリズム

慶應義塾大学・佐藤 正太郎,滑川 徹

  本論文では分散オブザーバシステムにおける状態推定と攻撃検知を行うアルゴリズムの提案とその条件の導出を行う.仮想状態という概念を用いて各局所オブザーバが分散的に攻撃検知を行うアルゴリズムを提案する.そして攻撃に関しても通常のセンサ攻撃である観測値攻撃に加えて,局所オブザーバ間の推定値通信に対する攻撃をオブザーバ通信攻撃と定義し,観測値攻撃とオブザーバ通信攻撃が同時に存在する複合攻撃を定義する.この複合攻撃存在下での状態推定および攻撃検知達成の条件を定理として示す.最後にシミュレーションによって本提案アルゴリズムの有効性を確認する.


 

■ モデル規範形適応制御に基づいた2入力冗長系に対する零空間補償制御

 兵庫県立大学・川口 夏樹,佐藤 孝雄,
荒木 望,浅見 敏彦,黒田 雅治

  本論文では,冗長な2入力を有する線形1次系を対象とした零空間補償制御を提案する.入力冗長系では一般に,状態を駆動する制御力の生成に寄与しない制御入力成分(零空間成分)が存在する.この零空間成分を含まない制御入力を用いることができれば,制御入力のノルムを最小化するという観点で効率のよい制御が可能となる.提案法では適応制御の手法を用いて,対象のパラメータが未知の場合でも制御力生成に寄与しない零空間成分を補償する制御系を設計する.また数値例によりその有効性を示す.


 

予見する風速を用いた浮体式洋上風車スケール模型のブレードピッチ角制御

大阪府立大学・津屋 朋花,原 尚之,小西 啓治

 近年,浮体式洋上風力発電は注目を集めている.浮体式洋上風力発電には,陸上よりも強く安定した風が得られる,水深が深い場所にも設置できる,風車の大型化が図れるという利点がある.一方で,風や波の影響で発電出力が変動する,浮体の動揺により風車の構成要素に負担がかかり,メンテナンスコストが高くなるなどの課題がある.定格風速以上の動作領域で,発電量を一定に保ち,浮体の動揺を抑制するためにブレードピッチ角制御が用いられる.また,風速の予見情報をブレードピッチ角制御に用いることで,制御性能が向上することが期待されている.本論文では,風速の予見情報を用いるブレードピッチ角制御器を,H∞予見制御法に基づいて設計する.風速の予見情報の不確かさを考慮した場合と不確かさを考慮しない場合の制御器を設計し,制御性能を調査する.また,適切な予見時間の選定について考察し,H∞/H2ノルムおよび浮体式風車の制御目的の観点から選定の指針を示す.


 

■ 可変ピッチプロペラクアッドチルトロータドローンの開発と推力応答評価

 北海道大学・小水内 俊介, 浦岡 雅史,近野 敦

 行制御について述べる.プロペラ単体の推力応答試験およびドローン全体の姿勢制御のステップ応答試験により,本機は固定ピッチプロペラ構成の場合より応答性が優れていることが示された.本機は,原型機で実証されたチルト機構の有効性と,本論文で検証された可変ピッチ機構による応答性を併せ持つ,これまでにないドローンである.


 

■ 2レベル最適化問題に対する能動学習統合型最適化手法

統計数理研究所・相吉 英太郎, 首都大学東京・田村 健一,安田 恵一郎

 下位の最適化問題が上位の最適化問題の入れ子になっていて,下位問題の最適解を考慮しながら上位の最適解を求めるいわゆる2レベル最適化問題の近似解法を提案する.一般的には上位変数に対する下位問題の最適応答解を写像としてあらかじめ用意しておく必要があるが,提案する解法は,上位変数の最適解近傍付近でより精緻な最適応答写像の近似モデルを,能動学習により構築しながら効率よく上位変数の最適解を探索する手法で、この近似モデルにはラジアル基底関数の線形畳込みモデルが用いられる.これによって近似誤差の一定の許容幅の範囲で2レベル最適化問題の解が得られることが保証され,簡単2レベル最適化問題の例題に対して提案手法の有効性を確認する.