論文集抄録
〈Vol.57 No.11(2021年11月)〉

タイトル一覧

[論 文]

[技術・開発ノート]


[論  文]

■ 室内試験用自動運転システムの運転スタイル調整

堀場製作所・齋藤 崇志,古川 和樹,京都大学・杉江 俊治

 自動車の燃費・排出ガス試験においては,シャシダイナモメータを用いた室内走行試験が実施される.現在では,この試験において,人の運転者に代わって室内試験用の自動運転システムがしばしば代用される.近年,室内運転試験の実路走行の再現性を高めるために,運転者の運転スタイルをRoot Mean Square of Speed Error(RMSSE)およびInertia Working Ratio(IWR)によって定量的に表し,その値に制約条件が課されるようになった.自動車開発においては,この制約条件を満たす様々な運転スタイルに対する燃費・排出ガス性能のロバスト性の評価が今後必要になる.評価の効率化のためには,自動運転システムの運転スタイル(RMSSEおよびIWR)を所望の値に調整可能であることが望ましい.
 本稿では,室内試験用自動運転システムにおいて,ユーザーが所望するRMSSEおよびIWRを得られるように運転スタイルを調整する手法について提案する.提案法では,指定されたRMSSEおよびIWRに合わせてパラメータを自動調整する目標車速整形法を用いた.提案法の有効性について,シミュレーションおよび実車試験によって検証をおこなった.


 

■ 音/振動を対象としたシステム設計のための周波数領域における抽象化エネルギーモデリング手法

ISIDエンジニアリング・中村 幸宣,羽山 信宏,広島大学・山本 透

 製造業においては製品開発における手戻りを減らすために不断の努力を続けてきたが,最近では,より高い要求を満たすために製品が複雑化しているため,手戻りはむしろ増えている.騒音と振動(NV)は,手戻りの原因となる代表的な問題である.それは,NV現象がシステム内に広く分布する原因から発生するにもかかわらず,NVに対する効果的なシステム設計手法が存在しないためである. 本論文では,システム設計におけるNVの効果的な周波数領域モデリング手法を紹介する.また,自動車を例にとり,その特徴と有効性を示す.


 

■ 局所半凹制御リヤプノフ関数を用いた固定時間整定制御

東京理科大学・林 拓哉,中村 文一

 固定時間整定制御は任意の初期状態に対して決められた時間内に収束することを保証する制御法であるが,非線形システムの固定時間安定性を保証する原点近傍と無限遠点で同次性を持つ双極限同次制御リヤプノフ関数(CLF)の設計は難しい問題である.本論文では,局所半凹CLF(LS-CLF)を構成することにより,双極限同次CLF設計の難しさを緩和し,さらに,得られたLS-CLFを用いてカラテオドリ解の意味で閉ループシステムの固定時間安定性を保証する制御則設計法を提案する.最後に,提案法の有効性をコンピュータシミュレーションにより確認する.


 

■ 仮想分散オブザーバを用いた部分状態の分散推定

慶應義塾大学・滑川 諒,滑川 徹

 本稿では,従来の分散オブザーバの観測センサを仮想的に除外して構成されるオブザーバを仮想分散オブザーバとして提案し,その推定誤差ダイナミクスが漸近安定となるための十分条件を導出する.仮想分散オブザーバを用いることで,観測値攻撃などの悪質な攻撃者によるサイバー攻撃に対して頑強なオブザーバが設計可能となる.本提案オブザーバは,分散オブザーバと同時に並行して推定を行うことで,サイバー攻撃の検出器として用いることができる.また,各局所オブザーバの所望の部分状態空間における状態推定問題を定式化し,それを満足するオブザーバとして弱仮想分散オブザーバを導入することでオブザーバシステム全体の可検出性の条件を緩和する.さらに,シミュレーション検証では,弱仮想分散オブザーバを用いることで局所オブザーバが観測値攻撃を受けたときに分散攻撃検出が可能であることを示す.


[技術・開発ノート]

■ 単一モード光ファイバを空間結合するガルバノスキャナ式光軸補正装置のフィードバック制御とスキャニング動作

 福岡工業大学・吉田 耕一,佐賀大学・辻村 健

 コリメータを介して2つの光ファイバを空間結合させ光通信を行うFSO (Free Space Optics) システムは光ファイバ網の接続性を拡張する手段として有効であるが,設置環境中の振動外乱等に起因する光軸の誤差に対応するためには何らかの補正機構が必要となる.単一モード光ファイバ (SMF) の空間結合系において片側にアクティブな補正機構を集約し,もう片側をファイバとレンズのみのパッシブ系とする非対称型のFSOシステムが提案されている.このシステムでは2つのガルバノスキャナと2軸の圧電駆動ミラーにより4自由度の調整軸を実現しているが,後者は相対的に可動範囲が小さいため両者間の距離を一定程度確保する等の機構設計上の制約を生じることになる.本論文では4つのガルバノスキャナによって同様な調整機能を実現する光軸補正機構を導入し,ヤコビ行列に基づくフィードバック制御と初期状態におけるスキャニング動作実験について報告する.