論文集抄録
〈Vol.57 No.12(2021年12月)〉

タイトル一覧
[第26回ロボティクスシンポジア特集号]
[論 文]


[第26回ロボティクスシンポジア特集号]
[論  文]

■ 混合余事象分布に基づく未学習クラス推定確率ニューラルネット

横浜国立大学・小宮山  翼,北海道大学・迎田 隆幸,横浜国立大学・島 圭介

 教師データが存在するパターン識別問題では予め識別対象のクラス数やサンプルデータを与えることで識別器の学習を実現するが,学習時に想定しない異常なパターンが入力された場合には必ず誤識別が発生するという問題がある.本論文では想定外の異常値の分布を新たに提案する余事象分布により表現し,学習時に含まれない未学習クラスの分類が可能な確率ニューラルネットを提案する.提案法は混合正規分布と混合余事象分布を内包するニューラルネットであり,ネットワークの重み係数は誤差逆伝播法と勾配法の2種類の学習則から最適化される.また,提案法は多クラス識別と異常検知を単一の識別器によって実現し,正常なデータのみを学習に用いる半教師あり学習を扱うことができる.実験では人工データを用いた識別性能評価と筋電位信号を利用した前腕動作分類実験を実施し,提案法の有効性を検討した.結果から,提案法は学習データ数が少ない場合にも高い識別性能を発揮することが示され,両実験の識別率において比較手法との間に有意差が確認された.


 

■ドローンを用いたセンサ設置のための地表性状と見通しを考慮した設置位置選定

工学院大学・横山 龍一, 羽田 靖史, 東京大学・永谷 圭司

 本研究の目的は,火山調査ドローンが無人センサデバイスを設置する位置を選定する技術の開発である.火山噴火によって発生する土石流災害の被害を見積もるためには,火山灰の堆積状況や粒径を調べる必要があるが,噴火警戒レベルに応じて火口周辺に立入制限区域が設けられ,人による詳細な現地調査が実施できない.そこで我々の研究グループでは,ドローンやロボットを用いた無人調査を行うための技術開発を行ってきた.本研究では、ドローンから降ろして動作させる無人センサデバイスの設置位置について,まずドローンで現場の三次元計測を行い,その中から安定してデバイスを設置でき、かつセンサが正しく動作可能な地点を選定する技術(適地選定技術)を開発した.本稿では特に、降灰厚計測デバイスと定点観測デバイスを設置対象と定め,それぞれの設置を想定した際に用いる条件の設定と,以前の研究で考慮していなかったセンサデバイスから確認できる観測範囲の見通しを考慮した条件を追加し,より詳細な設置位置選定技術について検討を行った.


 

■ LightDCVO:下向き単眼カメラを用いた軽量ニューラルネットベースのビジュアルオドメトリ

パナソニック アドバンストテクノロジー・劉 陽,
野口 宏明, 陳 文博, 山本 和成, 高橋 三郎, 阿部 敏久

 柔軟な地面で走行やロボットが回転時に車輪オドメトリ精度が大幅に低下しやすい課題に対し,ビジュアルオドメトリは自律移動ロボットの走行軌跡を推定するための有望な代替手法とみなされている.しかし,これまで提案されてきた手法では、人混みや特徴点が少ない環境での推定精度が低下するという課題があった.本論文では,単眼カメラを用いたリアルタイムかつ高精度な走行軌跡を抽出するビジュアルオドメトリ手法を提案する.軽量なニューラルネットワークを用いて地面の特徴量を推定,マッチングすることで精度と計算速度を両立している.また,カメラ姿勢の誤差によるオドメトリ精度の低下を防ぐため,取り付けられた単眼カメラの姿勢を自動で推定し精度を向上している.


 

多視点映像生成による遠隔操作支援技術の開発と評価

工学院大学・北條 怜, 阪田 顕, 棟本 真弘,
羽田 靖史, 竹下 嘉人, 飛鳥馬 翼, 北原 成郎

 自然災害における復旧作業を行う際,二次被害を避けるため無人化施工が用いられている.無人化施工とは,危険区域内を無人にして無線通信ネットワークを用いて建設機械(以下建機)を目視外から遠隔操作する施工方法である.無人化施工では,建機に取り付けた車載カメラからの主観映像だけでなく,災害現場の周囲に配置した定点カメラや移動カメラ車からの複数の俯瞰視点映像を操作者に提供している.例として,福島第一原子力発電所の3号機原子炉建屋上部瓦礫撤去工事では10台の建機を52台のカメラ映像を用いて遠隔操作を行った.無人化施工では複数のカメラ映像を用いることによって,通信量が増加し,通信遅延による映像遅延が発生し作業効率を低下する問題がある.そこで本研究では,無人化施工における通信量を大幅に削減しつつ,従来と変わらない多視点の俯瞰視点映像を生成する技術開発を目的とする.本稿ではこれまで開発してきた多視点映像生成手法と,これに加え新たに開発した全体鳥瞰映像生成手法について述べ,これに必要な通信量の計測実験と,全体鳥瞰映像を加えた場合に与える有用性の調査実験の結果について述べる.


 

■ アクティブコルセットの可変締付力制御則の個人適合による腰部負担軽減効果の向上と腰部関節剛性への影響

 北海道大学・吉田 道拓, 田中 孝之,
苫小牧工業高等専門学校・土谷 圭央, 北海道大学・金子 勇斗

 本研究では,腰痛予防ツールのアクティブコルセットによる動的締付力制御の各個人への適合を目的とする.目的達成の方針として,まずは平均的な傾向に基づく制御則(標準締付力制御則)を開発し,これを変形することで各個人に適合した制御則(個人適合締付力制御則)を開発した.標準締付力制御則の開発のためには,12名の被検者を動員し,ヒアリング調査により腰部負担(椎間板圧迫力)の大きさに対して適正な締付力を調査し,その平均的な傾向を調べた.これにより,腰部負担の変化に対して線形的に締付力を変化させる制御則を開発した.その後,これらの被験者の身長,体重,年齢を入力として,各個人に適合して制御則変形するためのモデル式を開発した.開発された個人適合制御則による補助効果の性能評価のために,64名の被験者を対象として運動計測による補助効果の検証を行った.これにより,過半数の被験者において個人適合された制御則を用いることで標準的な制御則を用いた場合よりも腰部負担が軽減されることが確認された.また,関節剛性の評価により,運動の初期段階において腰椎関節の剛性を高めることで,より高い補助効果が得られることを確認した.


[論 文]

■ 相対的な目標位置を利用した距離に基づく移動ロボットのリーダ・フォロア型フォーメーション制御

明治大学・花房 直人, 市原 裕之

 距離に基づくフォーメーション制御においては,隣接するエージェントとの相対的な目標位置を利用するアプローチが知られている.相対的な目標位置は,望ましい距離と相対位置から構成する.本論文では,平面上の積分器によるマルチエージェントシステムに対して,相対的な目標位置を用いたリーダ・フォロア型の制御則を提案する.まず,相対的な目標位置とその変化率を用いた制御則を提案する.提案した制御則は外乱に対して敏感である.そこで,次に本論文では相対位置のみを用いた別の動的な制御則を提案する.これらの制御則は非ホロノミック制約を有する二輪移動ロボットに適用可能である.数値例によって提案するフォーメーション制御則の有効性を示す.


 

■ 社会シミュレーション技法を用いた老後世代のライフプランニング支援システム

慶應義塾大学・菊地 剛正, 高橋 大志

 老後世代のライフプランニングに関する施策シミュレーションでは,特定の属性やセグメントから生成した人物像に基づき,将来の資産枯渇可能性について分析が行われている.しかし,シミュレーション結果を分岐させる人物属性についての詳細把握や,取りうる施策の比較検討について,改善の余地がある.本研究では,上記手法に対し,社会シミュレーションのログの類型化手法を組み合わせたライフプランニング支援システムを提案する.本システムは,以下の手順を踏む:
I) 個票データの特徴分析により生成した人物像に基づいたシミュレーションを実施する,II)同一のデータに基づく網羅的なシミュレーションと得られたログの階層的分類により,生じうる結果の全体的なパターンを把握する,III)I)とII)の結果を比較対照し,取りうる施策を検討する.主な結果は以下の通り: (a)資産の枯渇・非枯渇を分ける人物属性の閾値を把握しうること,(b)人物像毎に取りうる施策を,数値的な目標とともに,網羅的・半自動的に明示しうること.本システムにより,ライフプランニングに直結するナレッジのフィードバックを得ることで,金融機関のきめ細かな助言・アドバイスが可能となり,産業応用上の有効性向上が期待される.