論文集抄録
〈Vol.57 No.2(2021年2月)〉

タイトル一覧

[論 文]


[論  文]

■ シェアドスペースにおける周辺移動物の軌道予測に基づく自律走行パーソナルモビリティの運動制御

筑波大学・平澤 敦基,合原 一究,河辺  徹

 近年,徒歩や自動車に代わる新たな移動手段としてパーソナルモビリティ(PM: Personal Mobility)が注目されている.PMは小型で低速な電気自動車であることから歩行者との親和性が高く,シェアドスペースと呼ばれる歩車共存の道路空間における効果的な活用が期待できる.さらに,利便性の向上を目的として,PMを自律走行させるための研究も行われている.シェアドスペースにおいてPMを自律走行させるためには,歩行者や自動車などの様々な障害物を安全かつ乗り心地よく回避する運動制御法を構築する必要がある.そこで本論文では,これらの障害物を安全かつ乗り心地よく回避することが可能な,障害物の軌道予測に基づくPMの運動制御法を提案する.提案手法では,まず,障害物の未来の軌道を予測する.つぎに,この未来の軌道を,x軸,y軸,時間軸からなる三次元時空間上の斜角柱として表し,三次元時空間上でこれを避けるようにPMの操舵と速度を制御する.これにより,予測に基づいて障害物を安全に回避し,目標位置へ到達するための運動制御が実現できる.シェアドスペースでの様々な状況を想定したいくつかの数値シミュレーション結果より,提案手法の有効性が確認できた.


 

■ 分布系のカオス同期化を用いた秘匿通信システム

神戸大学・佐野 英樹,若生 将史,谷口 隆晴

 本稿では, 分布系のカオス同期化を用いた秘匿通信システムの設計問題を取り上げる. 特に, ファン・デル・ポール境界条件を有する波動方程式によって引き起こされるカオス的振動現象を用いる. 秘匿通信システムは一般に, 同期化部, 変調部, 復調部から構成されるが, 同期化部の構成に波動方程式のカオス的振動を取り入れる. その結果, 送信信号をスカラー値からベクトル値に拡張することが可能となり, 画像信号の暗号化・復号に適用しやすいシステムとなる. 同期化部の構成が容易なこと, および, 送信信号をベクトル値に拡張できることが本手法の特徴となっている.


 

■ 平均値置換寄与による異常原因因子の特定

村田製作所・平井 都志也,伊藤 仙和,京都大学・加納 学

 製造装置より取得できる装置信号に対して主成分分析(PCA)を適用し,重要な主成分で張られる部分空間でのマハラノビス距離(Mahalanobis Distance:MD)の二乗であるT^2統計量と,その主成分空間との距離の二乗であるQ統計量を用いて原因因子を特定する方法として,Alcala とQin はReconstruction-basedcontribution(RBC)を提案した.
RBCでは,T^2統計量,Q統計量といった指標を最小化するようにサンプルを各因子方向に平行移動させて,この変化量から寄与を算出し原因因子を特定する.しかし,RBCによっていつも寄与を正確に求められるわけではない.
 本報では各原因因子の寄与をより高い精度で把握するために,各原因因子を平均値に置き換え,置き換え前後の指標の変化量によって定義される平均値置換寄与(Meanvalue Replacement Contribution:MRC)を提案する.この手法は計算工数を抑えつつ,より精度の高い原因因子を特定する手法である.


 

■ 狭義上三角常微分方程式系と放物型偏微分方程式のカスケード系に対するフォワーディング設計

名古屋大学・椿野 大輔

 本論文では,放物型偏微分方程式でモデル化されるPDEサブシステムと上三角構造を持つ微分方程式系でモデル化されるODEサブシステムのカスケードシステムに対して,安定化問題を考察している.PDE サブシステムは独立しており,その状態の境界値と空間積分値がODE サブシステムを駆動する.制御入力は,PDEサブシステムには境界において必ず作用するが,同時にODEサブシステムに作用してもよい.そのようなシステムに対して,フォワーディング法のアイディアを用いた新たな制御則設計法を提案する.提案手法は,PDEサブシステムの制御則から始め,逐次的に拡大しながらカスケードシステム全体の制御則を設計してゆくものとなっている.通常のフォワーディング法であれば,部分的な閉ループ系の状態方程式の解を使用するが,本論文での対象の状態方程式は偏微分方程式であるため,解析的な解の導出は困難である.これを避けるため,未定関数と定数を含む変換を導入し,その未知の関数と定数を決定する問題に置き換えている.得られる制御則を施した閉ループ系の安定性を理論的に証明し,その有効性を数値シミュレーションによって確認している.


 

■ 状態推定性能を最適化したオブザーバベース Scaled H制御-飛行制御におけるオブザーバのバーチャルセンサとしての利用可能性-

 宇宙航空研究開発機構・佐藤 昌之

 本稿は状態推定性能を最適化したオブザーバベース scaled H∞制御器設計問題に取り組む.H∞制御の枠組みにおいて,オブザーバゲインと状態フィードバックゲインの同時設計は双線形行列不等式を用いて,同様に,H∞制御器と複数不確かさに対するスケーリング行列の同時設計も双線形行列不等式として定式化される.しかし,ある特殊な条件を一般化プラントが満たす場合,dilation とよばれる行列拡大操作の際に導入する行列に対するある構造制約を課すことを許容するならば,オブザーバおよび状態フィードバックゲインとスケーリング行列の同時設計が線形行列不等式によって表現されることが示されている.ただし,その方法においては,状態推定性能は陽に考慮されていなかった.この問題に対して,本稿では,従来法による制御性能最適化を行った後に,得られた制御性能を少しだけ緩和した条件下においてオブザーバの状態推定性能を最適化する二段階設計法を提案する.この方法により,制御器の状態量がプラントの状態量の推定値として機能することが期待され,これが成り立つことを,実験用航空機 MuPAL-α の横/方向運動に対する設計および hardware-in-the-loop simulation により検証した.


 

小型無人航空機のための周囲環境認識システムの開発

信州大学・坂田 雅志,千葉大学・鈴木  智,信州大学・河村 隆

 本研究グループでは,環境変化に応じてセンサ構成の組み換えが可能なナビゲーションシステム,外乱情報やナビゲーションデータから最適な制御パラメータを決定する適応制御システム,そしてシステム全体を監視し,周囲環境認識と各システムへの指令を行うスーパバイザから構成される,小型無人航空機のためのスーパバイザ型ナビゲーション・制御システムを提案している.本研究では,スーパバイザの機能の一つである周囲環境認識システムの開発を目的とする.
 本論文では特に,推論を行うために深層学習手法を採用し,小型無人航空機が飛行している周囲環境が屋外広大,屋外狭隘,屋内広大,
屋内狭隘のいずれに該当するかを LIDARとGNSSのデータを用いてリアルタイムに判断するシステムを構築する.また,推論に用いる各手法の推定精度を比較検証することで,小型無人航空機の周囲環境認識に適した手法を決定する.