論文集抄録
〈Vol.57 No.3(2021年3月)〉

タイトル一覧
[第7回制御部門マルチシンポジウム論文特集号]

[論 文]


[論  文]

■ 乗法的重み付きボロノイ分割を用いた異機種マルチエージェントによる領域分割および機種数選択指標の提案

横浜国立大学・市原 紀生,上野 誠也

 複数の無人機で構成される無人機群による災害現場等での活躍が期待される中,各々の機体性能が異なる異機種無人機群は同機種のものと比較してモデル化が複雑になる傾向がある.本論文では,速度性能の異なる異機種無人機群による特定領域の調査任務を例として,性能差による領域分割および任務達成時間と各々の機種数との関係性を示す指標について提案する.


 

■ 離散時間非負システムのlq/lp Hankelノルム解析

京都大学・志賀 亮介,加藤 光樹,九州大学・蛯原 義雄,京都大学・萩原 朋道

  連続時間システムの Lq/Lp Hankel ノルムの計算に関する研究が古くから進められている.一般の連続時間システムにおいては,p,q=1,2,∞ の組み合わせによってはLq/Lp Hankel ノルムの計算が困難になるが,近年,解析の対象を非負システムに限定することで,これらの困難を部分的に克服できることが示された.このように,連続時間システムの Hankel ノルムに関する研究は様々な形で進められているが,その一方で離散時間システムに関する研究は比較的少ない.そこで本稿では,離散時間システムのlq/lp Hankel ノルムの計算について検討を行う.はじめに,一般の離散時間システムのlq/lp Hankel ノルムの計算においては,やはり連続時間の場合と同様の困難が生じることを示す.
 次に,対象を非負システムに限定することで,lq/lp Hankelノルムを数値計算が容易に実行可能な閉形式で表現できることを示し,さらにそれらを求める問題が SDP や LP の形で特徴づけられることを示す.後者の結果を用いれば,ポリトープ型の不確かさを有する非負システムの lq/lp Hankel ノルムの上界値を凸最適化により容易に計算することが可能になる.


 

■ 非線形特性を有する油圧ショベルのデータベース駆動型掘削支援制御系の設計

広島大学・洪水 雅俊,山本 透,
コベルコ建機・小岩井 一茂,山下 耕治,山﨑 洋一郎

 近年,少子高齢化の進行に伴い,建設業界における労働力は低下している.そのような状況においても,作業現場の生産性を維持するには技量が乏しい作業者でも高い生産性を実現する必要がある.特に,油圧ショベルは現場の生産性に大きく寄与するため広く用いられるが,システム特性が非線形である油圧ショベルにおいて,生産性の高い作業を実現することは容易ではなく,優れた操作の習熟には時間を要する.そのため,非熟練なオペレータであっても効率的な作業を可能とする施策が必要である.
本論文では,非熟練なオペレータであっても効率的な掘削作業を可能とするアタッチメント合成重心速度に基づく掘削支援制御に対して,データベース駆動型制御を適用し,油圧ショベルの非線形性に対応した掘削制御系を提案する.掘削中に土砂から受ける負荷の変動に加え,掘削姿勢も変えることで油圧ショベルのシステム特性を変化させる.提案法の有効性を油圧ショベルに実装し,線形コントローラの結果との比較によって検証する.


 

実時間価格提示方策を利用した電力需要拠点の分散型運用とチャタリング現象に関する考察

富山大学・平田 研二,トーキン・前野 昇陽,電源開発・藤澤 雄大

 本稿では, 連続値出力 (消費), 離散値出力が可能な電力需要機器が混在する需要拠点を対象に, 需要供給バランスの達成を実現する分散型の運用方策を検討する. 検討する分散型の運用方策では, 各需要機器が自身の目標消費量を分散的に決定する. またこの分散意思決定による目標消費量を, 需要供給バランスを達成する最適解に一致させるため, 需要拠点管理者は, 仮想的な価格信号の更新, 提示を実行する. しかしながらこのとき, 離散値出力のみが可能な需要機器の存在により, 与えられた目標総需要量に対する追従が不可能であり,実需要量にチャタリング現象が発生する場合がある. 本稿では, はじめにチャタリング現象発生の条件を明らかにする. つぎに, 連続値出力機器の評価関数修正あるいは離散値出力機器の動作モード切り換えによる, 実装の簡易な 2つのチャタリング回避方策を提案する. 両方策とも簡易に実装できる反面, 必ずしも任意の目標総需要量に対してチャタリング現象の回避を可能とするわけではない. しかしながら両方策とも, 与えられた目標総需要量に対してチャタリング現象の回避が可能かどうかの判定は容易であり, 実用的な回避方策となっている.


 

■ 電動車いすのLPV-FIRモデリングとそのモデル予測制御への応用

 北九州市立大学・徳重 達樹,藤本 悠介,永原 正章

 本論文は電動車いすの前進運動に着目し,その挙動をデータからモデル化して得られたモデルをモデル予測制御に応用する.特に,モデル構造として線形パラメータ変動有限インパルス応答(Linear Parameter Varying Finite Impulse Response, LPV-FIR)モデルを用いる.このモデル構造は一定の非線形性を再現できる程度には柔軟であり,それでいて入力に関して線形なモデルであるためモデル予測制御への応用が容易である.一方,LPV-FIRモデルはパラメータ数が膨大になり,過適合を起こしやすい.そこで本論文では,ベイズ推定を用いることにより過適合を回避する.得られたモデルを利用したモデル予測制御では,滑らかに加減速するような目標軌道への追従を目指す.実験の結果,モデル予測制御により滑らかな加減速が達成され,構築したモデルが有用であることが確認された.


 

■ 生物模倣の分散制御則と実機検証

豊田中央研究所・丹羽 貴寛,天野 也寸志,神保 智彦

 本論文では,制御状態に応じて自律的に操作量を停止することができる,マルチエージェントシステムの分散制御を提案する.具体的には,4脚動物の反射的な歩容動作を摸倣して,各エージェントの分散制御器を非線形振動子で構築する.各エージェントの操作量はON/OFF の2値で,振動子の状態に依存して切り替わる.さらに,分散制御器は,他のエージェントの情報を利用せず,ブロードキャストされる制御誤差を利用する.3モーターシステムの速度制御実験により提案制御則の有効性を検証する.


 

■ メカニズムデザインに基づくワンウェイ方式カーシェアリングのインセンティブ設計

慶應義塾大学・佐々木 駿,滑川 徹

 本論文ではワンウェイ方式カーシェアリングを対象とした制御アルゴリズムを提案する.ワンウェイ方式カーシェアリングは,ユーザーの交通需要によって出発地と目的地になりやすい駐車場に偏りが生じ,稼働率を上げるための車両の再配置コストがかかることが問題になっている.そこで,本論文ではユーザーに料金割引の形でインセンティブを与え,駐車場と出発時刻変更の提案を行うことで,駐車場にある車両台数の偏りを防ぐ.はじめに離散事象システムに基づいたワンウェイ方式カーシェアリングモデルについて説明する.次に各ユーザーに提案する駐車場と出発時刻を決定するための最適化問題を提案し,メカニズムデザインに基づいて耐戦略性と個人合理性を満たすインセンティブ設計を行う.最後にシミュレーションで提案手法によって,より多くの顧客にサービスを提供できていることを確認する.


 

■ プレフィルタを用いたVirtual Internal Model Tuningによる制御性能の向上

電気通信大学・池崎 太一,金子 修

 本論文では,著者らが提案したデータ駆動型制御器調整法の一手法であるVirtual Internal Model Tuning (VIMT)についてプレフィルタを用いた制御性能の向上を考える.ここでは調整後の制御器の性能について,実装されている制御器と与えられた仕様を完全に満たす制御器の間の関係に着目し,獲得される制御器の持つ目標応答追従性能をプレフィルタによって向上させる手法を与える.最後に数値例を用いてプレフィルタを用いることの有効性を示す.


 

■ 事前予約システムによる再マッチングを用いた最適駐車場割当決定

慶應義塾大学・中里 拓哉,滑川 徹

 本稿では,マッチング理論に基づく最適な駐車場割当を決定する新しいスマートパーキングシステムを提案する.このスマートパーキングシステムでは,駐車場を探索するドライバーと駐車場管理者の双方の要望を考慮した,効率的な駐車場割当を決定する.また,現時点で空き駐車スペースがないなどの理由により,駐車場の割当ができない可能性も発生することがある.そこで,本稿では事前予約システムという,現時刻で駐車場が割当できないドライバーに対して,各駐車場の空車スペースができるまでの待ち時間を考慮して,最適な駐車場の再割当を決定するシステムも提案する.また,事前予約システムのドライバーに対して, 個人合理性を満たすようにする.そして,事前予約システムでの再マッチングを含む最適な駐車場割当を,マッチング理論に基づいて決定する.最後に,数値シミュレーションによって,提案手法の有効性を示す.


 

■ モンテカルロ経済モデル予測制御による1ロータ宇宙機の太陽光発電量最大化

筑波大学・竹崎 大輔,伊達 央

 この研究では,宇宙機に搭載されているリアクションホイールが3基中2基が故障した場合を想定し,残された1基のリアクションホイールで姿勢制御を行う方法を検討した.リアクションホイール1基で出来ることは限られているため,モンテカルロ経済モデル予測制御を用いて太陽光発電量を最大化するための姿勢制御方法を提案し,シミュレーションにより有効性を検証した.提案手法が様々な初期条件で有効かどうかを検証するために広範なシミュレーションを実施し,ほとんどの場合,発電量が増加することを確認した.提案した制御手法がどのように動作したかのいくつかの例を示して考察する.