論文集抄録
〈Vol.58 No.2(2022年2月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論  文]

■ 機械学習アプローチから探す群れ行動の発現機序-捕食者からの逃避戦略の学習に基づく自発的な群れ行動の獲得-

大阪大学・末岡 裕一郎,石谷 槙彦,
沖本 将崇,杉本 靖博,大須賀 公一

 生き物はなぜ群れるのか.本論文では,この問いについて機械学習の観点から考える.群れを形成する種は,蟻や蜂,魚や鳥,人までスケールやサイズも異なるが,その群れ行動にこれまでも多くの研究者が魅了されてきた.群れ行動への基本的な研究アプローチは,生物を観察し,注目している現象を「モデル(微分方程式)」で捉え,その妥当性を検証していくものである.すなわち,「現象から特定の数理モデルを推定し,その妥当性を検証する」というトップダウン式のアプローチと捉えることができる.このようなトップダウン式のアプローチに対し,本論文では「なぜ群れるのか」という群れ行動の発現機序を探すボトムアップアプローチを考える.具体的には,できるだけ単純に設計したエージェントが生き延びることを目的とした場合に,群れ行動を発現するのか,発現するならばそれはどのような群れ行動なのかを調べる.本論文の成果は,人工物側から群れ行動の発現機序にアプローチした特解(一研究)となり,本論文のような成果の積み重ねによって,群れ行動の発現機序の理解へとつながることが期待される.


 

■ 安定マッチングに基づく貨客混載車両のキャリア間提携経路最適化

慶應義塾大学・山本 英里,滑川 徹

 本稿では,輸送における総経路コストの削減を目的として,貨物輸送を対象とする配送計画問題に対し,マッチング理論に基づくライドシェアリングを取り入れることによる貨客混載車両の経路最適化アルゴリズムを提案する.まず,貨物輸送に特化した配送経路問題を考えるが,本稿ではこれを,複数のキャリア間で配送業務を分担することによる輸送経路コストの最小化を目的とした,2つの代替的な混合整数線形計画問題として定式化する.そして,各利用客の迂回距離を考慮した,安定マッチングに基づくライドシェアリングの同乗者決定アルゴリズムを示し,貨物輸送経路を基準とした旅客の移動経路探索問題について述べ,貨客を混載した車両の最適経路を決定する一連のアルゴリズムを提案する.最後に,数値シミュレーションによって提案手法の有効性を示す.


 

■ 待ち時間を考慮した訪問者視点でのテーマパーク順路最適化

岐阜大学・児玉 文督,森田 亮介,伊藤 聡

 本論文では,複数の地点を巡回するとき,待ち時間が時間経過とともに変化する場合の順路最適化問題を解くためのアルゴリズムを提案する.この問題は,混雑したテーマパークにおいて,ゲストが短時間でアトラクションを巡ろうとするような場合に代表され,その評価関数は移動時間,サービス時間.待ち時間の3種類の時間で定義される.提案法は「挿入操作PSO戦略」に基づいたものであるが,時間変化する待ち時間を陽に考慮するために,相対的な巡回順序に加え,新たに絶対的な順序を考慮する仕組みを取り入れた.テーマパークの実データを用いた数値実験を行ない,提案法の有効性を検証する.


 

周波数領域における拘束条件下での入力行列内のパラメータ推定

 宇宙航空研究開発機構・佐藤昌之,九州工業大学・瀬部 昇

 本稿では,入力行列のみに求めるべきパラメータが存在するグレーボックスモデリングにおけるパラメータ推定問題に対して,特定周波数帯域における事前に与えられた周波数特性を考慮した推定法として,一般化KYP 補題により特定周波数帯域での周波数特性を捉え,データフィッティング指標を重み付き2ノルムにより評価する方法を提案する.また,提案方法の有効性を JAXAの実験用航空機MuPAL-αの横/方向運動モデルにおけるフライトデータを用いて示す.


 

■ 幾何学演算子を用いた四元数ニューラルネットのための入力逆推定法

拓殖大学・王 超,小川 毅彦

 本論文では,学習済みの四元数ニューラルネットを用いた,出力からの入力の逆推定法を提案する.幾何学演算子に基づくニューロンをもつ層状の四元数ニューラルネットで学習を行い,学習済みのニューラルネットを用いて与えられた出力に対応する入力を推定する.この方法によって,四元数に拡張された逆問題を解くことができる.提案法の動作をビット演算問題と3次元のアフィン変換問題によって示す.また,従来法として実数型ニューラルネットおよび幾何学演算を用いない四元数ニューラルネットとの比較を行い,その有効性を確認する.


 

■ データ駆動予測を用いた一回の実験によるIterative Feedback Tuning

電気通信大学・池崎 太一, 金子 修

 Iterative Feedback Tuning (IFT) は,所望の応答に追従させるようにパラメータを実験データを直接用いて調整する手法である. しかし,データ駆動制御器調整法の中で最も素直な方法である反面,パラメータの更新には多くの繰り返し実験が必要であることが大きな課題である.本研究では,IFTに基づいた繰り返し実験の不要な新しい制御器パラメータ調整法を提案する.本提案法はデータ駆動予測を用いることによりIFTの評価規範を変えずに実験の回数を1回にまで削減することに成功している.最後に,実機実験により提案法の有用性を示す.