論文集抄録
〈Vol.59 No.10(2023年10月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 可視領域の異方性を考慮した移動ロボット群の広域持続被覆制御

東京都立大学・菅原 颯,児島 晃

被覆制御は,ドローンや移動ロボットなど複数のエージェントにより環境情報を効率的に取得する方法として知られており,特にエージェントのセンサ範囲が限定的な場合には,エージェントを継続的に移動させ持続被覆制御を達成することが必要になる. 本論文では,二輪移動ロボット群による持続被覆制御問題に着目し,センサ範囲の異方性と対象環境の複雑性を考慮した制御手法を提案する.そして,制御バリア関数から移動ロボットの直進と回転をともなう制御入力の決定法を示し,またモンテカルロ木探索を用いたエリア移動計画から,複雑形状環境においても協調的なエリア探索を可能にするひとつの探索アルゴリズムを導く.最後に,シミュレーションと実験結果から提案法の長短を調べ,その特徴を明らかにする.


 

■ Just-In-Timeアプローチに基づくデータベース駆動型極値探索制御系の設計

広島大学・槇野 泰大,脇谷 伸,山本 透

制御システムの運用においては,生産される製品の品質,システムの運用効率,収益など様々な評価関数を最大化するように目標値を与えることが望ましい.しかし,最適な目標値は常に一定でなく,さまざまな環境要因の影響を受けて変動する.極値探索制御法は評価関数の数理モデルを用いずにオンラインで極値を探索することができる.そのため,評価関数に未知変数が含まれる場合でもその評価関数の極値をとる最適点を探索することができる.しかし,この方式は勾配法によって極値を探索するため,探索開始時の初期値によっては最適値に到達するまでに時間がかかる問題がある.本研究では,この問題を解決するためJust-In-Timeアプローチに基づくデータベース駆動型極値探索制御(DD-ES)を提案する.提案手法では極値探索制御によって獲得した最適点をデータベースに保存し,それらのデータを用いて探索開始時の初期値を極値付近に設定することで探索時間の短縮が可能となる.本手法の有効性を数値シミュレーションによって検証した.


 

形式概念分析と機械学習による交通事故予測手法の開発

富山県立大学・小谷 祥悟,中村 正樹,榊原 一紀,本吉 達郎,星川 圭介

2020年に発生した富山県の交通事故による死亡事故における高齢者の構成率は84.6%で全国一位である.また,2022年では交通事故全体の発生件数は減少する一方で,死亡事故の割合は増加傾向にある.少子高齢化にともなう将来の交通弱者の増加に備え,死亡事故やそれにつながる重傷事故の要因を分析し,将来の交通事故を防ぐ施策が喫緊課題である.本研究では,交通事故要因の分析およびそれに基づく交通事故予測を目的として,形式概念分析により過去に富山県で発生した交通事故を分析し,深層学習により過去の交通事故から将来の交通事故内容を予測する交通事故予測手法を開発する.
  深層学習などの機械学習では,学習モデル構築の際の特徴量の選択が重要となる.対象問題に適切な特徴量を選択あるいは追加する手法は特徴量エンジニアリングと呼ばれる.本研究の目的は,形式概念分析を用いた特徴量エンジニアリングにより,機械学習モデル構築に効果的な特徴量を抽出することである.また,深層学習で得られる機械学習モデルは説明可能性が低いという問題に対して,得られた機械学習モデルの予測傾向を形式概念分析により可視化する手法を提案する.