論文集抄録
〈Vol.59 No.7(2023年7月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 深層展開を用いた静的出力フィードバック安定化におけるハイパーパラメータの考察

大阪大学・和田 弘匡,小蔵 正輝,国立情報学研究所・岸田 昌子,大阪大学・若宮 直紀

静的出力フィードバック安定化問題は単純な構造をもつ一方でNP困難な問題であることが知られている.この静的出力フィードバック安定化問題に対して本稿では深層展開を適用し,深層展開に基づく安定化アルゴリズムの性能が学習率などのハイパーパラメータに対してどのように変化するかを調べる.特に本稿ではオプティマイザ,学習率,損失関数,およびシステムの離散化周期を様々に変化させたときの安定化成功率や学習回数を数値実験により調べることを通じて,深層展開を用いた静的出力フィードバック安定化における適切なハイパーパラメータの決定方針を与える.


 

■ 変位計測用ピエゾ複合センサのベース板厚と形状変化によるセンサ出力の比較

秋田県立大学・下井 信浩,山口大学・中正 和久,秋田県立大学・Carlos CUADRA

大地震後に建設された多くの鉄骨構造物には溶接構造のフレーム溶接継手と溶接基礎が使用されています.また,耐震構造とされている多くの鋼構造物は隅肉溶接構造の溶接継手や溶接柱脚を用いて建設されています.しかし,これらの溶接継手は地震時にエネルギーを吸収する能力が低くなる可能性があります.そのため,インフラの維持管理を目的とした構造ヘルスモニタリングは新しい技術として広く期待されています.
  新しいセンサの実用化のためには,蓄積データと計測データから構造状態に関する情報を導き出す評価手法が強く求められます.そこで筆者らは,ピエゾ複合センサを用いたヘルスモニタリングによる構造物の健全性計測を提案します.本稿では,ロボットを用いてピエゾ複合センサの出力電圧を計測することにより,センサ基板の厚みや形状の変化によるセンサ特性を記録しました.構造FEM解析 も導入し,溶接構造部の変化に対するさまざまな環境要因によるメカニズムとその影響を評価しました.


 

利益関数の推定精度が高い統計モデルの構築

神戸大学/富士通・飯村 由信,神戸大学・若生 将史,
富士通・本間 克己,梅田 裕平,樋口 博之,久保田 和己

本稿では,共変量シフト適応を用いて,重要な共変量値において高い予測能力を持つ統計モデルを構築し,利益関数値を最大化する制御入力計画を求めることを目指す.
ここで重要度は与えられた利益関数により定まる.
上記の統計モデルに基づき,利益関数値を最大化する制御入力計画を求めるために,統計モデルと制御入力計画を交互に更新する反復法を提案する.
充放電計画問題を例に用いて,提案手法の有効性を確認する.


 

■ 生産ラインにおける異常検知・非定常サイクル同定のオンラインシステム

明治大学・石曽根 毅,中央大学・樋口 知之,明治大学・中村 和幸

工場の生産ラインでは,電力消費量の時系列変動から異常信号を自動的に同定することで,製品の欠陥率を抑え,生産性を向上させられる.
また,特徴的周期からの乖離は生産ラインの誤作動や異常に関連が強いため,電力消費量の個別周期推定がしばしば必要とされる.
本研究では,電力消費量データに代表される準周期時系列データに対するオンライン異常検知・個別周期推定システムを提案する.
提案システムは,畳み込み演算によって局所的なパターンを抽出し,注意機構に基づく類似度ベクトルから個別周期・異常度を算出する.
複数のシミュレーションデータセットに対する実験では,提案法は既存法より優れた検出性能を呈した.