論文集抄録
〈Vol.61  No.4(2025年4月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 制御バリア関数を用いた危険度の可視化

東京理科大学・岡部 太亮, 竹本 航亮, 中村 文一

事故や災害の防止は大きな社会的課題である.この課題に対して,情報工学ではリスクの可視化が研究されているが,交通事故のような動的システムに対する危険性については筆者らの知るかぎりおこなわれていない.
そこで本論文では,動的システムに対して直接印加されない仮想入力を使用した安全性指標を提案する.提案した安全性指標を用いてパーソナルモビリティに対する危険度の可視化システムの開発をおこない,正面衝突に対する危険度の可視化の有効性について検証する.


 

■ 周期的線形時変システムに対する周期時変状態フィードバック安定化制御器のLMIに基づく設計手法

名古屋大学・堺 光徳, 中部大学・浅井 徹, 東京農工大学・有泉 亮, 京都大学・東 俊一

   線形時変(Linear Time-Varying; LTV)システムが一様指数安定であるための必要十分条件は,微分リアプノフ不等式(Differential Lyapunov Inequalities; DLI)に基づいて与えられる.あるLTVシステムに対応するDLIに解がある場合,システムの一様指数安定性は保証されるが,DLIの解を見つけるための系統的な手法はほとんど報告されていない.
   著者らはあるクラスの周期的LTVシステムに対して線形行列不等式(Linear Matrix Inequality; LMI)で表わされるDLIの解が存在する十分条件を示し,系統的な DLI の解の探索手法を提案してきた.
   これにより周期的LTVシステムの安定性解析を一般に行うことができる.
本論文では著者らのDLIの解の探索手法を発展させることで,周期的LTVシステムを安定化させる周期時変状態フィードバック制御器を設計する手法を提案する.
   さらに,三角関数の加法定理の性質を利用した新たな未知数を LMI にを追加導入することにより,提案する安定性解析手法および制御器設計手法において保守性の緩和が可能であることを示す.加えて,数値例により提案手法の有効性を示す.


 

■ 高速ビジョンシステムを用いた3次元高速振動追跡による鮮明画像取得

パーソルクロステクノロジー/東京大学・米津 真之介, 東京大学・山川 雄司

本論文では,インライン精密外観検査の実現のために,高速ビジョンシステムを使用し,焦点方向の振動オブジェクトから鮮明画像を取得する高速オートフォーカス手法を提案する.
これらの手法は,カメラ単体で焦点距離を推定するシングルプロセス的手法及び,レーザー変位計を併用し焦点距離を返すマルチプロセス的手法で構成される.焦点方向の振動オブジェクトの高速オートフォーカス性能を振動試験機にて実力評価を実施した.また,振動は焦点方向のみではなく,一般的に3次元的に高速振動しているため,この3次元高速振動オブジェクトを追跡し,高速で鮮明画像を取得する手法を確立した.本研究で定義する理想的なオートフォーカス性能と比較して単振動では 110%,回転運動では 146%と高い結果が得られ,実用性の高いシステムであることを証明した.
法の有効性を示す.


 

■グラフラプラシアンで与えられる線形システムにおける初期状態とパラメータのsensitivity identifiabilityのネットワーク構造に基づく解析

名古屋大学・山川 雅文, 中部大学・浅井 徹, 東京農工大学・有泉 亮, 京都大学・東 俊 一

システムのパラメータ真値が未知な場合,その値を得るためにパラメータ推定が行われる.
パラメータ推定の実装方法の 1 つはパラメータ依存モデルと観測データで定義される評価関数の最小化である.そしてこの最小化には最適化手法が用いられる.このときニュートン法を最適化に用いれば,真値への 2 次収束が期待できる.しかし,真値が sensitivity unidentifiable(non-SI)という性質を持つとこの 2 次収束性が保証されなくなる.そのため真値が non-SI であることを事前検知することが重要となる.ここで対象のシステムがネットワーク構造を持つ場合を考えると,真値が non-SI となるようなネットワーク構造の条
件があれば,ネットワーク構造に関する事前情報を活用した non-SI の事前検知が期待できる.そこで本論文ではグラフラプラシアンで与えられるネットワーク構造を持つ線形システムを対象に,真値が non-SI であるためのネットワーク構造に基づく条件を得る問題を考える.そしてこの問題に基づいてグラフの対称性に基づくネットワーク構造の条件を与える.この条件を与える定理はグラフの接続行列の分解を用いることで証明される.